小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

2021-01-01から1年間の記事一覧

2058 岸田氏は普通の人か 小学生が見た自民党総裁選

「Aは影が薄い、Bは普通、Cは影が濃い」。自民党総裁選をテレビで一緒に見ていた小学5年生の家族が、こんな感想を漏らした。影が薄いは、存在感がないという意味だ。最近の子どもは社会の動きをよく見ている。私はこの指摘に舌を巻きながら、同じ思いに…

2057 白鵬引退・一時代の終焉 「負けずに老いる角力かな」

大相撲の横綱白鵬が引退することになった。横綱在位14年84場所、優勝回数45回という大記録を破る力士が今後出てくるとは思えないから、白鵬は歴史に残る大横綱であることは言うまでもない。一方で、晩年の激しい取り口や休場の多さ、その言動に批判が…

2056 郷愁誘う紫色の通草(あけび) 里山を駆け回った遠い日

秋の味覚はいろいろある。第一に挙げるとすれば新米か。これ以外にも枚挙に尽きない。「シイタケ、マイタケ、栗、アケビ、ユズ」。埼玉秩父産の5つの旬の食べ物が知人から届いた。写真で見ても、色が鮮やかで食欲がそそられる。食欲が増す季節になりつつあ…

2055 相次ぐマスク着用めぐるトラブル 文明人の勇気とは

マスクをめぐるトラブルが内外で相次いでいる。中でもドイツの殺人事件は、多岐にわたるコロナ禍の負の歴史でも特殊な位置を占めるだろう。いつの時代でも、決まり事を守ることができない人はいる。極論すれば、国が決めたことを絶対に守らせようとするのは…

2054 ここが私の故郷…… 山はなくとも

石川啄木(1886~1912)ほど、故郷を思いながら人生を送った人物は少ないのではないか。それは啄木の第一歌集『一握の砂』(いちあくのすな)を読むと、実感する。この歌集には「ふるさと」という言葉を使った歌が多いのだ。その一つに「ふるさとの…

2053 散歩道に秋の香り「木犀の匂の中ですれ違ふ」

金木星の花が咲き出した。小さな橙色の花はあまり見えない。しかし、あの独特の香りで季節の花の開花を知った。備忘録によると今から6年前の2015年は9月23日に「金木犀開花。例年よりかなり早い」とあるから、今年は夏から秋への移ろいというバトン…

2052 ノンちゃんの記 甘えん坊のhanaの妹もあの星に

わが家で昼の間預かっていた雌のミニチュアダックスフンド「ノンちゃん・のんの」ことノアが息を引き取ったのは、6月15日でした。15年の生涯でした。それから2カ月後の8月22日にノンちゃんの遺骨を、金木犀の根元に近い庭の一隅に埋葬しました。ここ…

2051 コロナ禍の床屋談義 ワクチン接種をめぐって

新型コロナ感染症のワクチン接種が毎日ニュースになっている。東京・渋谷のワクチン接種会場に多くの若者が並ぶ光景が先日まで続いた。コロナ禍はどこでも話題の中心になっている。たまたま行った理髪店でもそうだった。待合室で私が順番を待っていると、髪…

2050 シメールを背負った国会議員たち 短命・菅首相退任劇の中で

菅首相が3日、自民党臨時役員会で自民党総裁選に立候補しないことを表明した。今月末の党総裁任期満了に伴い首相を退任することなるわけで、わずか1年余の短命首相といえる。このニュースを見ながら、孔子と弟子たちの問答をまとめた『論語』の「政治」に…

2049 想像する『今しかない』のカルテット 息の合った冊子編集という演奏

コロナ禍が続く日々、人と会うことはあまりない。以前から心温まる冊子を編集している友人とも会うことを避けている。その冊子を作っているのは友人を含めた4人だ。まさに担当を分担した四重奏・カルテットのようだ。最近、その人たちの短いプロフィールを…

2048 栄光と転落のパラ・五輪選手 獄中の義足のランナー

東京パラリンピックが続いている。義足のランナーとして、パラリンピックだけでなくロンドン五輪にも出場した南アフリカの陸上選手、オスカー・ピストリウスは今どうしているのか、気になった。体の障害を乗り越え、世界的な選手になった彼はただものではな…

2047 それぞれの大義の中で アフガンの歴史の潮流は

アフガニスタン(以下、アフガン)はイスラム武装組織、タリバンの首都カブール制圧で大混乱に陥っている。連日の新聞、テレビ報道を見ながらどうしてこうなってしまったのかと、考え込む人は少なくないはずだ。ベンジャミン・フランクリンの「世の中に善い…

2046 われ先に国外退避の大使館員 昭和の悪夢アフガンでも

米軍の撤退期限が今月末に迫ったアフガニスタンの首都カブールの国際空港付近で自爆テロがあり、70人以上が犠牲になった。現地には日本人やアフガン大使館の現地スタッフ、派遣された自衛隊員が残っている。この事件によって、自衛隊機による退避は予断を…

2045「三つのベースに人満ちて……」 野球の華に挑み続ける大谷

「本塁打(ホームラン)は、野球の華」というそうだ。9回裏、相手チームに3点の差で負けていても、走者満塁で次の打者がホームランを打てば、劇的な逆転勝ちとなる。一発逆転で負けから勝ちにひっくり返すのだから、本塁打は大きな魅力がある。それをメジャ…

2044 孫文と株成金の娘のこと 不思議な人とのつながり

これはコロナ禍以前に、箱根まで行った際に書いた短いエッセーだ。数年前のことだ。そんな日を振り返り読み返している。この世の人のつながりは、やはり不思議なものがある。私と加藤文子さんもそうだった。詳しい経緯は書かないが、加藤さんは私にとって忘…

2043 今年も二重の虹 想像の旅でイグアス伝説味わう

コロナ感染が爆発状態で増え続けています。こうした現実から逃れることはできませんので、鬱陶しい思いで毎日を送っているのは私だけではないでしょう。早朝の散歩は、少しだけそんな気分を晴らしてくれます。しかも、今朝は北西の空に二重の虹が上がってい…

2042 五輪選手のメダルでの貢献 スポーツと現代社会

東京五輪の陸上・女子やり投げで銀メダルを獲得したポーランドのマリア・アンドレイチェク選手が、重病の男の子の手術費用にと、メダルをオークションに出品した話題を外電で知った。メダルは1900万円で落札され、さらに多くの寄付が集まっているという…

2041 2000キロの白骨街道逃避行 丸山豊『月白の道』

不明して、最近まで私は丸山豊(1915~1989)という人を知らなかった。医師・詩人で、戦争散文集という副題が付いた『月白(つきしろ)の道』(中公文庫)の作者である。これまで大岡昇平の『レイテ戦記』や江崎誠致の『ルソンの谷間』、伊藤桂一『…

2040「賢さ」とは 感染爆発列島に思う

いわゆる「記紀」といわれる古事記(712年に編纂された天皇家の神話)と日本書紀(720年に完成した日本の正史)には、第10代崇神(すじん)天皇の時代に大きな疫病(現代の感染症か)が流行したことが書かれている。日本書紀によれば、当時の人口の…

2039 未来へのことば「焼き場に立つ少年」のこと

一枚の写真が目に焼き付いている。広島に続いて原爆が投下された長崎で米国人カメラマンが撮影した「焼き場に立つ少年」と題した写真だ。カトリックのローマ法王庁が「核なき世界」を訴えるフランシスコ法王の指示で、教会関係者に対しこの写真入りカードの…

2038  ヒグラシ鳴く五輪最終日 子規の病床テレビ観戦を想像

夕方、調整池の周囲をめぐる遊歩道を散歩していたら「カナカナカナ……」とヒグラシが鳴いているのが聞こえた。何となく物寂しさを覚える哀調ある鳴き声だ。子どものころは、このセミが鳴くと夏休みが終わりに近かった。8月20日過ぎには2学期が始まったか…

2037 8月6日の風景 「戦争の記憶は抜歯のきかぬ虫歯」

午前8時15分。南側の窓を開け、1分間の黙祷をする。温度計は29度(湿度76%)まで上がっている。76年前のこの時間、広島に原爆が投下された。人類に向けられた初めての大量破壊兵器は、おびただしい生命を一瞬にして奪った。テレビではNHK地上…

2036 真夏の怪談!9億円資産を寄付という誘い

Facebookに登録しているのですが、最近は時々しか利用していません。たまたま先日開けてみましたら、友だちリクエストが来ていました。その人の友だちには私の先輩の名前がありました。相手は日本人の高齢の女性で、穏やかそうな顔の写真が載っていました。…

2035 伝わらない首相のメッセージ コロナついに1万人超

五輪の最中、日本の新型コロナ感染者が29日、1日で1万人を超えた。感染爆発状態だ。これを抑えるにはどうすべきなのか。そのメッセージが伝わらない。政府は何をやっているのだろう。菅首相の虚ろな目を見ていると、国民の不安は増すのではないだろうか…

2034「you might or more head」 これ、どんな意味?

今年の「大暑」は先週木曜日(22日)でした。一年で一番暑い日々が続いています。この猛暑の中で東京五輪の屋外競技をやっている選手たちは、本当に気の毒です。私は、このところ散歩は涼しい早朝だけにしているのですが、今朝散歩コースから見た風景は透…

2033 ドラマチックな五輪の人間劇 負の側面目立つ東京大会

市川崑の監督による記録映画『東京オリンピック』が完成したのは、五輪開催から4カ月経た1965年2月末だった。しかし、オリンピック担当大臣だった河野一郎や文部大臣、愛知揆一らの「記録性を無視したひどい映画」(河野)、「この映画を記録映画とし…

2032 闇深き国際事件に挑む 春名幹男『ロッキード疑獄  角栄ヲ葬リ巨悪ヲ逃ス』

私にとって、ロッキード事件は記者活動の第二の原点だった。記者としてのスタートは東北・秋田であり、その後仙台を経て社会部に異動した。間もなくこの事件がアメリから波及し、末端のいわゆるサツ回り記者として、かかわることになった。春名幹男著『ロッ…

2031 幻滅の大相撲 品性なき横綱とふがいなき力士たち

大相撲名古屋場所は、6場所連続して休場し進退をかけた場所といわれた横綱白鵬が15戦全勝で45回目の優勝を飾り、復活を果たした。この場所をテレビ観戦していた私は、現在の角界に幻滅を感じてしまった。同じ思いを抱く人は少なくないはずだ。その理由…

2030 濃霧の中に浮かぶ白虹 人々励ます自然の演出

私の散歩コース、調整池を回る遊歩道は、濃霧に包まれていた。今朝6時前。途中で引き返す人もいる。この道はよく知っているから、霧の中、歩を進めると南西の方角の空に、曲線の模様が浮かんできた。灰色の模様は次第にアーチ状になっていく。虹だった。こ…

2029『星の王子さま』作者の鮮烈な生き方 佐藤賢一『最終飛行』

アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ(1900~1944)といえば『星の王子さま』の作者として知られるから、多くの人は童話作家だと思うかもしれない。もちろんこの童話はサン=テグジュペリの代表作といえるだろうが、それだけでなく『夜間飛行』や…