小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

2052 ノンちゃんの記 甘えん坊のhanaの妹もあの星に

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 わが家で昼の間預かっていた雌のミニチュアダックスフンド「ノンちゃん・のんの」ことノアが息を引き取ったのは、6月15日でした。15年の生涯でした。それから2カ月後の8月22日にノンちゃんの遺骨を、金木犀の根元に近い庭の一隅に埋葬しました。ここはノンちゃんが姉のようになじんでいたhana(ゴールデンレトリーバー11歳)の遺骨を埋葬した場所でもあります。今頃は2匹の犬は夜空に輝く「シリウス」で、仲良く遊んでいるに違いないと思っているのです。

 ノンちゃんは娘一家が飼っていた犬です。一家は娘の夫Y君の仕事の関係で千葉の船橋から沖縄の那覇首里城に近く、周辺がノンちゃんの散歩コースでした)、さらに最近は千葉市の我が家の近くに住んでいます。事情があって昼の間はわが家で過ごし、夕方になると家族のもとへ帰っていくという生活を続けていました。以前からわが家に遊びに来ていましたから、私たちにも慣れていて、わが家に泊まることも平気でした。弱虫で、Y君一家と私たち家族以外は人も犬もだめな甘えん坊犬でした。

 かつては散歩に行くと、私たちを引っ張るように走り回るほど元気な犬でしたが、今年になって急に衰えが目立つようになりました。4月以降、それが顕著になったのです。散歩も嫌がりエサも進んで食べようとせず、近所の動物病院で栄養剤の点滴をしてもらうようになりました。なかなか体力は戻らず、しかも食欲もないため次第にやせていきました。エサを食べないのは顎が痛んだせいだと、5月には動物病院で手術を受けたのですが、老犬にとって手術は厳しかったのでしょうか。この後さらに衰弱してしていきました。結果的に腎臓の病気と分かったのですが、これが命取りになってしまったのです。

 6月に入ると、わが家の居間で吐く回数も増え、散歩に連れ出してもほとんど歩こうとしなくなりました。元気なころは3・2キロほどあった体重も1・5キロまで減ってしまったのです。当時の私の日記には、コロナ禍の状況とともにノンちゃんの様子が記されています。(以下はノンちゃんに絞った日記の一部です)

 11日 点滴を受けて帰ってきたノンちゃんの意識がもうろうとし、衰弱が激しい。ショックを受ける。

 12日 心配したY君一家がノンちゃんとわが家に泊まる。

 13日 医師からはいつ何があってもおかしくないと宣告される。Y君一家と私たちはみんなでノンちゃんを犬用のカートに乗せて近所を回る。(これが最後に外出だった)

 14日 ノンちゃんはほとんど寝たまま。呼吸も弱くなっている。エサは受け付けないから体は衰弱する一方だ。

 15日 午後、2時52分、ノンちゃんが旅立った。数日前から意識がなく、寝たきり状態だった。午後から時々けいれんがあり、2時半過ぎからそれがひどくなった。出勤したY君を除く5人が交代でノンちゃんの体を触り続けた。ノンちゃんはこれまでの苦しみがうそのように、穏やかな顔に戻っていた。Y君は会社を早引きして3時半に戻ってきた。火葬は明日午後2時から。わが家とは10年以上の付き合いで、Y君一家が沖縄から戻ってから2年弱、昼間はわが家で過ごし、夕方に帰る日々を送ったからかけがいのない家族の一員だった。

 ノンちゃんは火葬され、この後自宅(Y君の家)で約2カ月過ごしました。それまでの猛暑が嘘のように涼しくなった8月22日、ノンちゃんの遺骨を私たちは2013年に旅立ったhanaが眠るわが家に庭の一隅に埋葬しました。遺骨を包んだ晒(さらし)には、それぞれがノンちゃんへの別れの言葉を書きました。私は「毎朝、窓際で私が迎えに行くのを待っていたね。楽しい日々だった。シリウスでhanaと私たちを見守ってください」と記しました。生前のノンちゃんとhanaは仲良しで、一緒に写った写真は大きな姉と小さな妹のように見えるのです。小学校5年生で、自称「るー」という孫娘は、hanaとノンちゃんを自分の姉のようにして育ちました。今でも2匹は「るーちゃん」のそばにいるのかもしれません。

 私はこのブログでhanaと暮らした日々を振り返り、「hana物語」と題したシリーズを書いています。hanaの旅立ちを書いたブログには様々な反響がありました。友人からは「地球から見える最も光っている一等星シリウス。冬に見える『おおいぬ座』群のリーダー役です。オリオンの近くにあるので簡単に見つけることができます。hanaちゃんはここに帰ったのでしょう」というメッセージも届きました。そうです。ノンちゃんもhanaの後を追って、あの星へといったに違いないと思うのです。

 シリウスは地球から8・7光年(1光年は9兆4600億キロ)離れているおおいぬ座の恒星(太陽のように、自分で光を出す星)です。あと数カ月すると、シリウスを肉眼で見ることができる季節になります。そして、このごろの朝の散歩では、ノンちゃんとhanaの姿を思い出しながらシリウスに何と声を掛けようかと考えつつ、時々立ち止まってしまうのです。そんな私を空から見ている2匹は「立ち止まらず、ちゃんと胸を張っ歩きなさい」と言っているのかもしれません。

 以下の写真は在りし日のノンちゃんとhana

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      (早くこないかなあと、窓際で私の迎えを待つ。毎朝の光景)

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            (hanaの誕生日のお祝いをご相伴)

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                (おすまし顔のhana)

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                    (小さな庭で収穫されたジャガイモとともに)

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           (カートに乗って最後の散歩)

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            (ノンちゃんへの別れの言葉)

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                              (hanaとノンちゃんが眠る庭の一隅)