小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

2019-06-01から1ヶ月間の記事一覧

1791 続スティグマ助長の責任は 熊本地裁のハンセン病家族集団訴訟

熊本地裁は28日、ハンセン病元患者の家族の集団訴訟で、国に責任があるという判決を言い渡した。当然のことである。国の誤った隔離政策で差別を受け、家族の離散などを強いられたとしてハンセン病の元患者の家族561人が国を相手に損害賠償と謝罪を求め…

1790 マロニエ広場にて 一枚の絵にゴッホを想う

近所にマロニエ(セイヨウトチノキ)に囲まれた広場がある。その数は約30本。広場の中心には円型の花壇があり、毎朝花壇を囲むように多くの人が集まってラジオ体操をやっている。私もその1人である。既にマロニエの花は終わり、緑の葉が私たちを包み込ん…

1789 雨の日に聴く音楽 アジサイ寺を訪ねる

きょうは朝から雨が降っていて湿度は高い。ただ、午後になっても気温は約21度と肌寒いくらいだ。それにしても梅雨空はうっとうしい。CDでショパンの「雨だれ」(前奏曲15番 変ニ長調)をかけてみたら、気分がさらに重苦しくなった。仕方なく別のCDをか…

1788 屈原と気骨の言論人 ある上海旅行記から

「私はどうしても屈原(くつげん)でなければならぬ。日本の屈原かもしれない」という言葉を残したのは、明治から昭和にかけての言論人、菊竹淳(すなお、筆名・六皷=ろっこ・1880~1937)である。屈原は、このほど上海周辺を旅した知人の旅行記に…

1787 愉快な戦争はほかにないと子規 激しい日本語の野球用語

「実際の戦争は危険多くして損失夥し ベース、ボール程愉快にてみちたる戦争は他になかるべし」。正岡子規は元気だった学生時代のころ野球に熱中し、随筆「筆まかせ」に、こんなふうに記した。子規が愉快な戦争と書いた野球だが、日本語の野球用語には解説者…

1786 雨の季節に咲く蛍袋 路傍の花を見つめて

散歩道で高齢の女性2人が話している。 「あら、ホタルブクロがそこに咲いているわよ」 「そうね。懐かしいわ。私の子どものころ、この花を『あめっぷりばな』、って言ってたのよ」 「そうなの。面白い名前ね。私の学校帰りの道の両脇にもあって、これが咲く…

1785 都市の風景の変化を描く 街を歩く詩人

「記者は足で稼ぐ」あるいは「足で書け」といわれます。現場に行き、当事者に話を聞き、自分の目で見たことを記事にするという、報道機関の基本です。高橋郁男さんが詩誌「コールサック」に『風信』という小詩集を連載していることは、以前このブログでも紹…

1784 いつくしみある地の夏 里山の風景を見る

室生犀星の詩集『抒情小曲集』のなかの「小景異情」の「ふるさとは遠きにありて思ふもの そして悲しくうたふもの」(その2より)はよく知られている。同じ詩集の「合掌」にも実は心に染みるものがある。福島の里山を訪ねて、その思いを深くした。 みやこに…

1783 岡倉天心が愛した五浦 六角堂を訪ねる

「人は己を美しくして初めて、美に近づく権利が生まれる」 日本近代美術の先駆者、岡倉天心(本名、覚三、1863~1913)が、『茶の本』(岩波文庫)の中で、芸術表現について明かした一節の中にこんな言葉がある。天心は晩年、太平洋を臨む福島県境の…