小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

2016-03-01から1ヶ月間の記事一覧

1463 旅で感じるもの ミャンマーはアジアの楽園になれるのか

放浪の旅に明け暮れた自由律の俳人、種田山頭火は、「道は前にある、まっすぐに行かう(行こう)」が信念だった。そして、「句を磨くことは人を磨くことであり、人のかがやきは句のかがやきとなる。人を離れて道はなく、道を離れて人はない」(『山頭火句集…

1462 白鵬のアイデンティティーは 大阪のファンのブーイングに思う

「アイデンティティー」と言う言葉が一般的に使われている。日本語でいえば、やや難しいが、共同体への帰属意識ということだろう。大相撲春場所で優勝し、インタビューで涙を見せた白鵬の姿を見てこの言葉を思い浮かべた。優勝を決める日馬富士との対戦で、…

1461 ウクライナ危機の本質とは 『プーチンとG8の終焉』

ロシアによるクリミアの併合、混迷するウクライナ危機はかつての米ソ冷戦時代の再来かといわれた。クリミア併合をきっかけに欧米を中心とする国々がロシアに経済制裁を加え、これまでのG8という枠組みからロシアを除外する動きが続いた。こうした国際社会…

1460 なぜ日本は原発大国になったのか 『原子力政策研究会100時間の極秘音源』

『原子力政策研究会100時間の極秘音源―メルトダウンへの道―』(新潮文庫)という題名からは、やや難解な原子力に関する本であることを想像させる。 だが、そうではない。戦後の原子力開発=原発の導入、原発をめぐる安全神話の醸成という問題の真相に迫った、…

1459「ラオスにいったい何が」 特別な光と風を感じる人々

村上春樹の「大いなるメコン川の畔で」(文藝春秋社刊『ラオスにいったい何があるというんですか』所蔵)というエッセーは、ラオスの世界遺産の街、ルアンプラバンの旅の記録である。 この街へ入るときに通過したベトナム・ハノイでベトナム人に「どうしてま…

1458 俳句は謎めいた水晶球・おかしみの文芸 ある句会にて

「俳句は硬直した読みしかできない標語ではなく、謎めいた水晶球のごときもの、すなわち詩でなければならない」。作家で俳人の倉坂鬼一郎は『元気が出る俳句』(幻冬舎新書)の中で、理想の俳句についてこんなふうに書いている。 正岡子規を愛する人たちが集…

1457 「或る晴れた日に」「でもぼくらは永久にもどれない」

何気なく本棚から『立原道造詩集』(ハルキ文庫)を取り出し、パラパラと頁をめくっていると、「或る晴れた日に」という詩があった。外は雨がぱらついている。寒い冬に逆戻りしたような天気だ。きょうは3月11日。5年前の大災害を思い出しながら、詩を読…

1457 「或る晴れた日に」「でもぼくらは永久にもどれない」

何気なく本棚から『立原道造詩集』(ハルキ文庫)を取り出し、パラパラと頁をめくっていると、「或る晴れた日に」という詩があった。外は雨がぱらついている。寒い冬に逆戻りしたような天気だ。 きょうは3月11日。5年前の大災害を思い出しながら、詩を読…

1456 カラヴァッジョの心の闇 逃亡犯の絵画芸術

殺人犯として追われるほど破天荒な生活をする一方、バロック絵画の創始者として名を残したのは、イタリアのミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ(1571-1610)である。国立西洋美術館で開催中の「カラヴァッジョ展」(カラヴァッジョ作品…

1456 カラヴァッジョの心の闇 逃亡犯の絵画芸術

殺人犯として追われるほど破天荒な生活をする一方、バロック絵画の創始者として名を残したのは、イタリアのミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ(1571-1610)である。国立西洋美術館で開催中の「カラヴァッジョ展」(カラヴァッジョ作品…

1455 「ミモザの日」支える300人の公国 グリーグの贈る言葉

春を告げる花といわれるミモザの花が満開だ。きょう3月8日は「国際女性デー」である。イタリアでは「女性の日」あるいは「ミモザの日」と呼ばれている。男性から女性にミモザを贈る行事があり、この日ローマの街は黄色い花であふれるという。 この花を生産…

1455 「ミモザの日」支える300人の公国 グリーグの贈る言葉

春を告げる花といわれるミモザの花が満開だ。きょう3月8日は「国際女性デー」である。イタリアでは「女性の日」あるいは「ミモザの日」と呼ばれている。男性から女性にミモザを贈る行事があり、この日ローマの街は黄色い花であふれるという。 この花を生産…

1454 大震災・原発事故を生き抜く 悪漢から逃れる薄幸の少女「バラカ」

桐野夏生の新刊『バラカ』(集英社)に描かれる日本は、悪い奴が跋扈している。大震災の前と後の日本社会。日本にきていた日系ブラジル人同士の両親から生まれ、「バラカ」と名付けられた女の子の数奇な運命を軸に物語は進行していく。そこに描かれる、悪い…

1454 大震災・原発事故を生き抜く 悪漢から逃れる薄幸の少女「バラカ」

桐野夏生の新刊『バラカ』(集英社)に描かれる日本は、悪い奴が跋扈している。大震災の前と後の日本社会。日本にきていた日系ブラジル人同士の両親から生まれ、「バラカ」と名付けられた女の子の数奇な運命を軸に物語は進行していく。そこに描かれる、悪い…

1453 3・11から5年 モーツァルトのレクイエム「涙の日」

「罪ある人 裁きを受けるために 塵より蘇える日 それは涙の日」 『レクイエム』(死者のためのミサ曲)の第7曲「ラクリモサ」の第8小節でモーツァルトの筆は途絶えた。それから間もない1791年12月5日未明、かつて神童といわれた音楽家は35歳とい…

1453 3・11から5年 モーツァルトのレクイエム「涙の日」

「罪ある人 裁きを受けるために 塵より蘇える日 それは涙の日」 『レクイエム』(死者のためのミサ曲)の第7曲「ラクリモサ」の第8小節でモーツァルトの筆は途絶えた。それから間もない1791年12月5日未明、かつて神童といわれた音楽家は35歳とい…

1452 3月2日とは 忘れてはならない中国残留孤児問題

1981年3月2日、中国残留日本人孤児の訪日肉親捜しがスタートした。日中の国交回復から9年、経済大国を歩む日本と文化大革命の後遺症に苦しむ中国の実情は、やってきた日本人孤児の人民服姿にも反映されていた。 あれから35年が過ぎている。その中国…

1452 3月2日とは 忘れてはならない中国残留孤児問題

1981年3月2日、中国残留日本人孤児の訪日肉親捜しがスタートした。日中の国交回復から9年、経済大国を歩む日本と文化大革命の後遺症に苦しむ中国の実情は、やってきた日本人孤児の人民服姿にも反映されていた。 あれから35年が過ぎている。 その中国…

1451 「理想の音を求めて」 ピアノ調律師を描いた2冊の本

ピアノの調律師を描いた2冊の本を読んだ。熊谷達也『調律師』(文春文庫)と宮下奈都『羊と鋼の森』(文藝春秋)である。わが家にもほとんど使われなくなったピアノがあり、調律もだいぶやっていない。以前は身近な存在だった調律師もかなり遠い存在になっ…

1451 「理想の音を求めて」 ピアノ調律師を描いた『羊と鋼の森』『調律師』

ピアノの調律師を描いた2冊の本を読んだ。宮下奈都『羊と鋼の森』(文藝春秋)と熊谷達也『調律師』(文春文庫)である。調律に魅せられた山育ちの青年(宮下著)と妻を交通事故で失った元ピアニストの調律師(熊谷著)が、それぞれの理想の音を求める物語…