小径を行く 

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。(筆者=石井克則・遊歩)

2009-01-01から1年間の記事一覧

570 ポプラのように 09年旅の終わりに

先日、「傘の自由化は可能か」という、大崎善生の一風変わったエッセー集を読みながら、九州の西端、枕崎から鹿児島中央まで約2時間45分、JR指宿枕崎線のロ-カル列車の旅をした。 大崎は日本将棋連盟発行の将棋雑誌の編集者を経て作家になった。 札幌…

569 さらば日曜菜園 瞑想と魂の休養と

車で5分ほどの所に、不動産屋が営む貸し農園がある。この1区画を借りて、家族とともに野菜を育てて10年以上が過ぎた。つい先日、不動産屋からはがきで「3月をもって貸し農園は終了する」という通告が届いた。 周辺は宅地化が進んでおり、いつかはこうな…

568 冬の花・浅田真央と水仙よ

全日本フィギュアの女子で浅田真央が優勝し、バンクーバー冬季五輪代表に選ばれた。不調を克服した浅田は、五輪でも活躍するに違いない。浅田には華がある。まさしく氷上に咲く冬の花である。 冬の花といえば、水仙だ。水仙は咲く姿に気品があり、浅田の滑り…

567 「光」と「地」と 桜島の雪の季節に

ことしの世相を表す漢字は「新」が選ばれた。閉塞感の強い時代に、新しいものを求める多くの人たちの思いが凝縮された漢字なのだろうか。(写真をクリックして拡大すると、桜島の冠雪が見えます) ことしを振り返って、個人的にはどのような漢字が当てはまる…

566 イチロー敬遠の裏で 野球WBC韓国の心

ことし3月、第2回のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)で、日本は韓国を破り、優勝した。第1回に続く連覇だった。その裏に、韓国側の国民を挙げた日本、特にイチローへの敵対意識があった。その意識が勝敗に大きな影響を与えたことを22日夜…

565 寒い冬の朝 散歩の友よ

早朝6時過ぎ、まだ暗い中、家を出る。西高東低の冬型の天気らしく風が冷たく、寒さが身にしみる。一緒の犬はねぼけまなこからようやく覚めたらしく、しきりに道端に残された他の犬たちのにおいをかいでいる。ほぼ毎日繰り返す朝の散歩である。寒さでけさは鼻…

564 「風の道」の噴水ものがたり 生まれ変わって美しい花壇に

散歩コースに私が「風の道」と名付けた遊歩道がある。かなり長い遊歩道の一部にマロニエの木が植えられ、その近くには噴水広場がある。秋になると、マロニエの実と葉が風に吹かれて遊歩道に落ちてくる。その光景が気に入っている噴水広場に、最近うれしい変…

563 虚業に流れた5億円 五輪招致映像の不可思議

広告は虚業といわれる。その典型が2016年夏季五輪に 立候補した東京の映像制作費用だ。わずか10分間の映像に要した費用が何と5億円というのである。それを制作したのが日本を代表する広告代理店だという。 なぜ、そんなことになるのか。からくりは分…

562 現代日本人論 ザビエル時代との変化

フランシスコ・ザビエルが日本にやってきたのは1549年のことだ。ポルトガル人のアルバレスという船長の「日本記」という文章によって、ザビエルは日本に興味を持ったようだと、司馬遼太郎が「街道を行く・南蛮のみちⅠ」の中で書いている。 当時の日本人の性…

561 オバマの揺れる気持ち ノーベル賞受賞演説を読む

オバマ米国大統領がノーベル平和賞を受賞した。ことし1月20日に就任したばかりで、世界の平和に大きな貢献をしたとは思えない。チェコのプラハで演説した「核なき世界」を目指すという理想に対する「投資と期待」が背景にあったのだろう。(9月10日の…

560 みんなで渡れば怖くない 日本人の集団行動

「赤信号、みんなで渡れば怖くない」という言葉がある。映画監督の北野武が若い時代に漫才をやっていた当時のネタの一つだそうだ。ブラックユーモアとして、流行語にもなった。日本人の集団行動を皮肉った標語でもある。 知り合いの南米出身の日系2世と話を…

559 2009年の軌跡 北から南への旅の日々

いつの間にか12月も中旬に入る。もう一年を回顧する季節なのだ。くたびれた手帳を開き、鉛筆で書いたスケジュールを読み返す。ことしはどこへ行ったのだろうか。2009年の軌跡をたどってみる。 1月 宮崎 ホームホスピスの実態を見る。人間は孤独ではな…

558 石川遼の未来 なぜゴルフをやるのか

石川遼が18歳という史上一番の若さで男子ゴルフの賞金王になり、最優秀選手賞も獲得した。ことしの賞金総額は何と1億8万円という、同世代の若者だけでなく、多くの大人がため息をつくような夢の金額だ。これだけの若さで、多くの先輩がなし得なかったこ…

557 ポルトガル再び 栄光と没落の西の国

リタイア後は西端の国・ポルトガルで暮らしたいという希望を持った知人がいる。その夢をまだ果たしていないが、彼によれば「かつて地球の裏側まで船を操った冒険者たちが、いまはその残照を浴びて黙々と座っている街(国)…」だというのである。 9月に旅し…

556 最近の新幹線事情 旅の恥は

JR東海の東海道新幹線に乗った。東京から静岡までの比較的短い距離だ。しかし、往復とも傍若無人の女性客と出会ってしまい、集中して本も読めず、つかの間の居眠りもできなかった。 日本人のマナーはここまでひどくなったのか。9月に観光で訪れたスペイン…

555 ああ「火車」状態 どうする鳩山さん

父親の借金から、不幸を背負った女性が他人になりすまそうとする悲劇を描いた宮部みゆきの「火車」を再読した。この作品を読んで、日本自体が「火車」状態にあることを思い知らされた。 最近の新聞やテレビの報道によると、本年度2009年度の一般会計の税…

554 89歳とひ孫の感動の物語 You Tubeの「まりもマジック」

インターネットの変化を一番感じるのが動画だろう。電話回線、ADSL、そして現在の光ファイバーへとその接続手段が変わる度に速度が増して、現在ではテレビも視聴することができる。こんな時代を背景に動画サイト「You Tube」が急速に普及し、知人の動画…

553 詩人が考える言葉とは 詩集「薇」から

「薇」(び)という漢字は、植物のゼンマイのことであり、「薔薇」(バラ)の「薇」にも使われる。その「薇」の冠をつけた「詩誌」が詩人の飯島正治さんから届いた。8人の詩人の詩と小文を掲載した38頁の創刊号だ。私は詩のことはよく分からない。しかし…

552 サッカー審判はつらい 門外漢のつぶやき

1年後に控えたサッカーW南アフリカ大会の欧州プレーオフ、フランス対アイルラン戦の結末が面白くない。 延長前半フランスのキャプテン、ティエリ・アンリがゴール前でハンドの反則をしながら出したボールをチームのウイリアム・ギャラスがヘディングシュー…

551 まとめて読書 秋の夜長に

季節は秋から初冬へと移行している。昔から「秋の夜長は読書」といわれる。しかし、この言葉は生きているのだろうか。せわしい現代日本人からは、そうした習慣は次第に失われていっているのかもしれない。いい本に巡りあうことができれば、その習慣は復活す…

550 浅田真央の試練 挫折を乗り越えて

夜空を見上げると、10月末の夜のように月と木星の饗宴がまばゆい。あの時は半月の下に木星が輝いていた。それがいまは全く逆転し、木星が上で月が斜め下になっている。自然の摂理を感じながら、ある少女のことを考えた。フィギュアスケート界の天才、浅田…

549 いまどき「つかみガネ」なんて 官房機密費問題

最近は腹をたてないように注意をしている。健康に悪いからだ。でも、つい「機密費」のニュースを見て、腹を立ててしまった。 日本政府には「つかみ金」という慣習がいまもあることを、多くの国民が知った。麻生政権末期に2億5千万円もの官房機密費の駆け込…

548 介助犬の受難 JRの無知に思う

公共交通機関の代表ともいえるJRは、国鉄時代から徹底した合理化が進み、ラッシュ時でもホームには駅員の姿はほとんど見かけない。 自殺多発時代、ホームから電車に飛び込む人が後を絶たない。その結果、JRのダイヤはよく乱れる。JR(東日本)鎌取駅(…

547 フィクションとノンフィクションの境目は 沈まぬ太陽

フィクションとノンフィクションには、創作と事実という境界がある。しかし日航ジャンボ機が群馬県・御巣鷹山に墜落し、乗員乗客520人が亡くなった事故をモデルにした映画「沈まぬ太陽」は、フィクションとうたいながらもノンフィクションに近い。日航の…

546 人間の尊厳を思う 映画「さまよう刃」

広島県北広島町の山中で遺体が見つかった島根県立大1年、平岡都さんの事件は悲惨だ。首が切り落とされ、体も多くの傷があったという。遺族にとっては耐え難い事件である。映画「さまよう刃」を見て、犯罪被害者の苦しみ、悲しみを思った。 昨年9月のブログ…

545 夕焼け空 茜雲に思う

昼ごろまで降っていた雨が午後には上がり、犬の散歩をする時間帯には虹が出た。少しすると、西の空は見事な夕焼けになった。昨日までの寒さはうそのようだ。携帯電話のカメラを使って、何枚か撮影したのが添付している写真だ。茜色に染まった夕空を見上げな…

544 知床旅情とともに 森繁久弥さんの死

(北海道美瑛にて) 札幌で生活をしたことがある。最初が1990年代に入って間もないころの1年半で、次が10年後の2000年代初めの2年間だ。合わせても3年半という短い期間だが「第二の故郷」と自称するほど北海道が好きになった。 にほんブログ村

543 逃亡の果てに 情報化社会の市橋容疑者逮捕

3日のブログ「現代を象徴する事件と警察力」の中で、「千葉県警は、2007年3月の英会話学校講師の英国人女性殺害事件(容疑者の指名手配は死体遺棄容疑)でも、写真まで公開したのにいまだに容疑者を逮捕していない」と書いた。翌4日の新聞朝刊(朝日…

542 濃霧の朝に

陸上で100メートル未満、海上で500メートル未満しか視程がないことを「濃霧」というのだそうだ。その濃霧がけさの散歩道を覆っていた。 このところの冷え込みで調整池端の雑木林は急に色づき始め、秋の気配が濃厚になってきた。庭にあるゆずの実が黄色…

541 理解困難な小説 高村薫「太陽を曳く馬」

難解で手に負えないと思った。 高村薫の「太陽を曳く馬」は、読んでいて疲れてしまう作品だ。この作品の内容を理解して読了することは至難ではないか。高村薫という作家の名前に引き寄せられて、読み始めたものの、読後感は「徒労」であり「理解不能」だった…