小径を行く 

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。(筆者=石井克則・遊歩)

2011-01-01から1年間の記事一覧

914 たまには後ろ向きで歩いてみよう  暮れなずむ遊歩道で

昨日の夕方、いつもの調整池の周囲の遊歩道を飼い犬のhanaとともに歩いていると、上空が急に黒い雲に覆われ、雨のしずくが少しずつ落ちてきた。大したことはないと歩き続けると、西の空に1回だけ稲妻が走って、ゴロゴロという雷鳴がした。雷が大嫌いなhana…

913 2011年の旅模様 「辛苦了」の1年

東日本大震災という歴史的災害に見舞われた2011年も残すところ1週間になった。人それぞれこの年について思いはあるだろう。私は実に20回の旅をし、その半分近くが被災地訪問だった。漢字一文字で表現すれば、私にとっての2011年は「辛」という字…

912 太陽の戯れに出会った友人 元荒川の幻日現象

「幻日」(げんじつ)という現象があることは知っていた。しかし、それを自分の目で見たことはない。埼玉に住む友人がこの現象を見て、カメラに収めた。友人自身も興奮したという幻日。東日本大震災という歴史的大災害とともに、2011年の象徴的出来事と…

911 命はいつか尽きるのだが… 高田の一本松・わが家の五葉松に思う

先日、岩手県陸前高田市の高田松原の「奇跡の一本松」が海水などの浸食で根が損傷してしまったため、保存を断念するというニュースが流れた。東日本大震災の復興のシンボルといわれただけに残念でならない。 動植物を問わず命はいずれ尽きるものだから、仕方…

910 映画「RAILWAYS」の世界 立山連峰に守られた富山の街

富山を何度か訪れたことがある。県庁所在地の富山市は、立山連峰に見守られているような印象が強い。剱岳、大日岳など連峰を形成する山々は美しく、富山の人々を包み込んでいる。厳しい冬があっても富山は住みやすいといわれる。だが、そこに住む人々はどん…

909 大震災で示された子どもたちの潜在力 負のイメージ払拭を

現代の子どもたちは無気力で、夢がない…。こんな見方が根強い。最近、福岡のNPOが発行した「ふくおか子ども白書」を見た。その中のアンケート(1600人の小中高生が対象)は、そんなイメージを裏付ける結果だった。 「疲れやすい」「学校に行き気がしない…

908 2011年の暮れに思う 震災の「東日本よ」

今年も1年を回顧する時期になった。3月11日の東日本大震災を置いて、語るべき言葉はない。以下は「東日本よ」をキーワードに書いた震災被災地・被災者への私の思いである。

907 東日本大震災と文学・詩 比喩が成り立たない

「震災以後、なかなか詩が書けない」と、新聞記者で詩人の秋山公哉さんが詩誌「薇」5号で書いている。「薇」は昨年亡くなった飯島正治さんが主宰していた同人誌で、飯島さん亡き後も発行されている。今回は、東日本大震災に触れた秋山さんらの詩も載ってい…

906 朝の散歩の風景 風評被害を助長した行政の怠慢

毎朝、犬の散歩をするのが日課になっている。震災後、変わった服装の人を見かけるようになった。年格好は64、5歳の男性が白い上下のトレーニングウエア(長袖、長ズボン)に白い靴、白い登山帽、サングラス、白いマスク姿で散歩をしているのだ。

905 西向く侍とは 凛とした2人のボランティア女性

ことしも「 西向く侍(にしむくさむらい)」の月がきょうで終わり、明日から師走になる。2、4、6、9、11月は、ひと月の日数が31日以外の月のことである。この5つの月(小の月)を、このように言うのだと小学校で教えられた。 「さむらい」は「士」…

904 被災地の新聞の一番長い日 河北新報記者が見た悪夢の光景

若い時代に仙台で勤務したことがある。その前には秋田にいた。生まれが福島であり、東北は文字通り私の故郷なのである。だから、東日本大震災で東北各地が痛めつけられ、原発事故で多くの福島の人たちがいまも避難生活を強いられていることが無念でならない…

903 人間関係の輪を広げ、最悪の事態を想定 海外暮らしの秘訣とは

タイのチェンマイでロングステイしている知人から「チェンマイ・フーケオ通り」というタイトルのエッセー集が送られてきた。「知人が住んでいるファイケオ通りからとった「風景夫」というペンネームでチェンマイのタウン紙『ちゃーお』にロングステイ初心者…

902 日本人の名誉を守った会津 梅原猛著『日本の深層』

哲学者の梅原猛は仙台で生まれ、愛知県の知多半島で育ち、長じて京都で生活している。哲学者であると同時に日本ペンクラブの会長(13代)も務めた文人でもある。『日本の深層』(集英社文庫)は、そんな梅原の両面を見ることができる作品だ。 にほんブログ…

901 パソコン不調の原因 電子機器の微妙さ

2カ月前ごろから、パソコンの調子が悪くなった。電源を入れた後、フリーズし、さらに電源が落ちてしまう。だましだまししながら、何とか使っていたが、数日前についに電源を入れてもディスプレーは真っ黒なままの状態になった。 購入してまだ2年のOSがウ…

900 多くの秋を見る 奥会津の旅

宮城、福島を旅した。同じ震災でも津波の被害が大きかった宮城、事故を起こして収束の見通しが立たない原発を抱えた福島。それぞれに被災の状況、気候、風土は違っても、苦難の環境の中で人々は懸命に生きている。 哲学者の梅原猛は「日本の深層」という本の…

899 野球に夢を見ることができるのか 映画「マネーボール」

プロ野球・巨人の球団人事をめぐって、清武英利球団代表兼GMと読売新聞グループ本社会長・主筆・渡辺恒雄氏の確執が話題になっている。人気球団の内紛だけに、注目が集まったのだろう。 そんな騒ぎのときに、大リーグ・オークランド・アスレチックスの実在…

898 チェンマイのロイカトン祭続き 幻想の世界

チェンマイに住む知人の写真の続きです。 (市内のビン川を流れるロイカトン) 初めてチェンマイを訪れたのは、2005年の1月のことだった。あれから6年になるが、街や人々に抱いた好印象は忘れられない。この街で暮らす知人は、もともとは別の都市で住…

897 チェンマイのロイカトン祭1 灯篭に願い込め

11月の満月のお祭タイのロイカトンが12日から14日まで3日間にわたって開かれた。チェンマイに住む知人からその写真が送られてきたので2回にわたって紹介する。 (コムロイ=ろうそくの炎で上空に打ち上げる紙風船) (コムロイ) (祭りの最後を飾るパレー…

896 生死分けたドラマを訪ねて 「震災日誌in仙台」

仙台在住のジャーナリスト、松舘忠樹さんが書き続けていた東日本大震災の記録が「震災日誌in仙台」(仙台市/笹氣出版)という本になって出版された。半年に及ぶ、取材の記録である。この記録については、概要を10月30日に紹介した。 ⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄…

895 ことしも咲いた皇帝ダリア 青空に映える11月の花

昨年、ホームセンターで買った2本の皇帝ダリアを庭に植えた。秋になって花が咲き、霜が降りたあと、茎を10センチほど残して切り落とした。切った茎は30センチ程度に切りそろえ、地中に埋めた。今年春、2本の株から新しい芽が出て昨年よりも成長、茎の…

894 幸せとは ノルウェー・福井・ブータンの共通項は

ことしほど、人間の幸せとは何だろうと考えさせられたことはない。東日本大震災によって、多くの死者・行方不明者を出し、さらに東電福島原発の事故でいまも福島県の人々の多くが未来を信じることができない避難生活を余儀なくされている。 そんな中で2つの…

893 「涙を喪失した少年」よ 一度だけ見た母の号泣

他の人のブログを見ていると、その人の個性がよく出ていて面白いものが少なくない。「文は人なり」といい、ブログの文章からも筆者の人間性、品格が伝わってくるのだ。友人のブログ「冬尋坊日記」の11月6日分「涙を喪失した少年」を読んで、考えることが…

892 心に沁みる「IF WE HOLD ON TOGETHER 」 人生あきらめないで

(オレンジのユリ。夏に撮影)アメリカの黒人女性歌手、ダイアナ・ロスのCDを何気なくかけ、何気なく聴いた。全部で13曲が入っているCDの12曲目に一番好きな歌があった。「IF WE HOLD ON TOGETHER 」(ウィル・ジェンキンス作詞、ジェームズ・ホーナ…

891 海外暮らしという人生の選択 チェンマイからの便り

かつて、同じ会社で勤務していた知人から突然メールをもらった。会社を辞めたあと、音信が途絶えていたが、このメールで奥さんと一緒にタイのチェンマイで7年前から暮らしていることが分かった。私は2005年1月、家族と一緒にこの街に行ったことがある…

890 プロ野球と民放  BSでしか見られないファイナル・ステージ

民放のTBSグループが、所有していたプロ野球球団、横浜ベイスターズを「モバゲータウン」というインターネット上のゲームサイトを運営するディー・エヌ・エーに譲渡することが決まったというニュースを見た。 同じ夜、プロ野球のセ・パ両リーグともファイ…

889 故郷はおまえの心の中にある ヘッセ「庭仕事の愉しみ」

果樹には、実がつく年とつかない年がある。我が家の一番大きな果樹であるユズは、外れの年のようで、例年なら取りきれないほどなるのに今年はたった2個しか見当たらない。 それでいて同じ柑橘系のミカンは枝が曲がるほど鈴なりになっているし、甘ガキもあた…

888 バンコク水害の深刻度  簡単ではない自然との共生

いま、街が洪水に浸かってしまったタイのバンコクに1度だけだが行ったことがある。家族の1人に猛烈なタイファンがいるので、そんなにいいところなのかと思いながら同行したのだった。(焼畑農業の現地) 数日間の滞在で、バンコクとチェンマイ周辺、映画の「…

887 いまも忘れないぬくもり  温風ストーブで思う子どものころ

温風ストーブ(ファンヒーター)で、笑えない失敗をした。急に寒くなり、仕舞い込んでいた灯油の温風ストーブを出した。 給油タンクに灯油を入れ、電気のスイッチを入れた。しかし、ストーブは点火せず「給油してください」という表示が出る。 何度繰り返し…

886 被災地の人々に希望の灯を  震災を書き続けるジャーナリスト

仙台に住む友人で、元NHK社会部記者の松舘忠樹さんは、アマチュアオーケストラのコンサート・マスターを務めながら、定年後の生活を楽しんでいた。そんな松舘さんの生活はことし3月11日の東日本大震災で大きく変わる。現役記者時代、災害報道を担当した…

885 非常時こそバイクで現場に あるテレビコメンテーターと東日本大震災

東日本大震災は戦争を知らない団塊世代の私にとって、初めて列島規模で体験した『非常時』だった」―。東京MXテレビでニュース番組のコメンテーターをしている友人の角田光男さんが「テレビつれづれ帖」(株式会社フロンティア出版)という本を出版した。 …