小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

日常

2107 人は何で生きるか 天才少女の挫折とトルストイ

ロシアの文豪、レフ・トルストイの短編『人は何で生きるか』(中村白葉訳・新潮社『世界名作選』は、民話を通じて、人の生き方を描いたものだ。ドーピング疑惑の中で出場し、暫定4位に終わった女子フィギュアのロシア、カミラ・ワリエワ(15)の騒ぎを見…

2103 2月生まれの感覚 寒い朝でも……

このごろは、夜明け前の東の空を見上げるのが楽しみだ。明けの明星(金星)が輝いているからだ。「いつせいに春の星座となりにけり」(黒田杏子)という句がある。今日は立春。この日が来ると、黒田の句のように昨日までは冬の星座だったものが、今日からは…

2100 朝もやが描き出したモノトーンの世界 自然の変化と付き合う

「夜霧」や「朝靄」は、情緒的な響きがあるが、日常の会話で「霧」と「靄」(もや)を使い分ける人はほとんどいないだろう。物の本を調べると、気象用語でははっきり区分けする基準があるのだという。この基準に当てはめると、今朝、わが家の周辺で発生した…

2097 「マイクロムーン」を見る 地球から最も遠い満月の朝

(小学校の赤と緑のシンボルタワーの間に浮かぶ満月) 今朝の夜明け前、太平洋側の各地で西の空に輝く満月を見た人は多いのではないでしょうか。橙色の小ぶりな月。それはことし一番小さい満月で、「マイクロムーン」と呼ぶそうです。初めて聞く言葉です。控…

2096 朝焼け広がる厳寒の空 阪神淡路大震災から27年

今朝は朝焼けが見えた。「日の出の頃、東の空が薄紅色や燃えるような色に染まることがある。これは大気の状態によって太陽光が散乱する現象であって夏にのみ起こるわけではないが、特に夏の朝焼けは荘厳であり、夏の季語とされる。天気の下り坂の前兆といわ…

2093 経験を軽く見た行動が背景に? 第6波に入ったコロナ禍

(近所の公園の池で見かけた白鳥) コロナ禍が第6波に突入してしまったことは間違いない。年末、次第に増え始めた感染者は新年を迎えて激増の一途をたどり、8、9両日とも新規感染者は8千人を超えた。前の週と比較して倍どころか10倍という数字を聞くと…

2092 4年ぶりの天からの便り 通学路に広がる樹氷

雪国に住む人たちにとって雪は珍しくないし、降り方によっては災害を引き起こす厄介な存在だ。かつて札幌での生活を体験し、雪は鬱陶しいと思うことが多かった。だが、雪がほとんど降らない地域に住んでいると、雪国の生活が懐かしくなったりする。昨日、南…

2091 繰り返す負の歴史 復興ジャンボ当選というネット詐欺  

家族の携帯に心当たりがない相手からおかしなメールが届いた。買ったことがない『コロナ復興ジャンボ』という宝くじの3等に当選したというのだ。当選金額は何と3億5000万円と巨額である。どう見てもいたずらか、詐欺に違いない。指定されたアドレスを…

2080 秋から冬への風景 点描・美しい自然の移ろい

(千葉県鴨川市の四方木不動の滝・雄滝) 今年も残すところ、36日になった。カレンダーを見たら2021年という西暦のみのものがほとんどで、西暦とともに「令和3年」と併記されたのは1つだけだった。現行のグレゴリオ暦になって148年(日本では18…

2078 アナログレコードを聴く 新鮮に響くハイドン・セット

名前も知らないし、どんな人かも知らない。ただブログを読んでいると、女性と思われる。拙ブログにコメントをいただいたこの人のブログを読んでいたら、「アナログのポータブルも悪くない」と題して、ポータブルのレコードプレーヤーを購入してレコードを聴…

2075 フェルメール現象再び? 知られざるレッサー・ユリィ

(ユリィ「夜のポツダム広場」) 久しぶりに美術館に行き、1枚の絵の前で釘付けになった。「夜のポツダム広場」。描いたのはドイツのレッサー・ユリィ(1861~1931)。私の知らない画家だった。絵の下半分は雨に濡れた路面が建物の照明に照らされて…

2073 ビーナスベルトに酔う 自然のアートに包まれて

毎朝、6時前に散歩に出ます。いつも最初に歩くのは調整池を回る遊歩道ですが、今朝歩いていて西の空を見上げますと、下の方が藍色でその上の部分がピンクに染まっていました。なかなか幻想的0で美しい空の色でした。日の出前のことです。これはビーナスベル…

2070 ある晩秋の風景 日だまりを求めて

さうか これが秋なのか だれもゐない寺の庭に 銀杏の葉は散ってゐる (草野天平「秋」・定本草野天平全詩集より。天平は詩人草野心平の弟) 晩秋。銀杏の葉も黄色く色づき、散り始めている。私のふるさとの浄土真宗の寺にも銀杏の木があった。秋になると、黄…

2069 ありふれた日常の中で ランドセルの少年と履き慣れた靴

庭の外に遊歩道があって、1キロに及ぶけやき並木が続いている。春から冬までの季節、けやきは様々な表情を見せてくれる。葉を落とした冬の姿も風情がある。秋たけなわ。例年なら美しい紅葉となるのだが、この秋は様子がややおかしい。葉が色づく前に散り始め…

2065 1人泡盛を飲む夜  蘇った銘酒物語

「酒 傾ければ 愁い来らず」。中国、唐時代の詩人・李白の「月下独酌」の中の一句だ。人は、この世の憂いを忘れるために酒を飲む。コロナ禍が続き友人たちと酒を飲みかわす機会はほとんどなくなった。秋の夜長、私はひとり沖縄の酒・泡盛を飲む。火事で焼失…

2060 小さな秋を見つけた 2度咲きの金木犀と「はえぬき」の新米

「秋たけなわ」というには少し早いようですが、秋本番はそこまで来ています。秋の訪れを知らせてくれる樹木として金木犀があります。あの独特の香りに接すると、私は秋を感じます。今年、庭の金木犀が咲いたのは9月10日でした。大体1週間で花は終わります…

2056 郷愁誘う紫色の通草(あけび) 里山を駆け回った遠い日

秋の味覚はいろいろある。第一に挙げるとすれば新米か。これ以外にも枚挙に尽きない。「シイタケ、マイタケ、栗、アケビ、ユズ」。埼玉秩父産の5つの旬の食べ物が知人から届いた。写真で見ても、色が鮮やかで食欲がそそられる。食欲が増す季節になりつつあ…

2054 ここが私の故郷…… 山はなくとも

石川啄木(1886~1912)ほど、故郷を思いながら人生を送った人物は少ないのではないか。それは啄木の第一歌集『一握の砂』(いちあくのすな)を読むと、実感する。この歌集には「ふるさと」という言葉を使った歌が多いのだ。その一つに「ふるさとの…

2052 ノンちゃんの記 甘えん坊のhanaの妹もあの星に

わが家で昼の間預かっていた雌のミニチュアダックスフンド「ノンちゃん・のんの」ことノアが息を引き取ったのは、6月15日でした。15年の生涯でした。それから2カ月後の8月22日にノンちゃんの遺骨を、金木犀の根元に近い庭の一隅に埋葬しました。ここ…

2043 今年も二重の虹 想像の旅でイグアス伝説味わう

コロナ感染が爆発状態で増え続けています。こうした現実から逃れることはできませんので、鬱陶しい思いで毎日を送っているのは私だけではないでしょう。早朝の散歩は、少しだけそんな気分を晴らしてくれます。しかも、今朝は北西の空に二重の虹が上がってい…

2038  ヒグラシ鳴く五輪最終日 子規の病床テレビ観戦を想像

夕方、調整池の周囲をめぐる遊歩道を散歩していたら「カナカナカナ……」とヒグラシが鳴いているのが聞こえた。何となく物寂しさを覚える哀調ある鳴き声だ。子どものころは、このセミが鳴くと夏休みが終わりに近かった。8月20日過ぎには2学期が始まったか…

2036 真夏の怪談!9億円資産を寄付という誘い

Facebookに登録しているのですが、最近は時々しか利用していません。たまたま先日開けてみましたら、友だちリクエストが来ていました。その人の友だちには私の先輩の名前がありました。相手は日本人の高齢の女性で、穏やかそうな顔の写真が載っていました。…

2034「you might or more head」 これ、どんな意味?

今年の「大暑」は先週木曜日(22日)でした。一年で一番暑い日々が続いています。この猛暑の中で東京五輪の屋外競技をやっている選手たちは、本当に気の毒です。私は、このところ散歩は涼しい早朝だけにしているのですが、今朝散歩コースから見た風景は透…

2030 濃霧の中に浮かぶ白虹 人々励ます自然の演出

私の散歩コース、調整池を回る遊歩道は、濃霧に包まれていた。今朝6時前。途中で引き返す人もいる。この道はよく知っているから、霧の中、歩を進めると南西の方角の空に、曲線の模様が浮かんできた。灰色の模様は次第にアーチ状になっていく。虹だった。こ…

2026 山百合の香が漂う道 マスク外して一人歩き

山の百合山の子山の香とおもふ 飯田龍太 近所まで出かけた帰りに、人気のない道を歩いていると、山百合の香りが漂ってきた。マスクを外して、その懐かしく甘い香りを深く吸い込んだ。コロナ禍の中で一人歩きのぜいたくな気分を味わった。誰かがいたらマスク…

2023 季節の色を描く 緑の『調整池』風景

四季折々、季節にはさまざまな色がある。どんな色が好きかは、人によって異なる。とはいえ、緑が嫌いな人は少ないのではないか。梅雨が続いている中で、緑がひときわ美しく感じるこのごろだ。ラジオ体操仲間のNさんは、私の散歩コースである『調整池』をテー…

2022 学校へ行く道 黄金色に輝く麦秋の風景

一人の少女が泣きながら登校している。 背負っているランドセル。 黄色い交通安全のカバーが付いているから、小学校1年生だ。 なぜ、泣いているのだろう。 小学校の方から歩いてきた、赤ちゃんを抱いた若い女性が聞いている。「どうしたの。困ったことがある…

2020 ヒヨドリ親子の“食事”光景 厳粛な生への営み 

鵯(ヒヨドリ)の大きな口に鳴きにけり 星野立子 俳句では秋の季語である鵯(ヒヨドリ)。夏の庭でも時折見かける。そのくちばしは大きくて目に付く。それを象徴する場面を見た。親鳥が雛に赤い実を食べさせているところだった。慌ててカメラを取り出し、写…

2019 ブログ移行の試み 2カ月半続いた試行錯誤 

2006年9月から続けていた拙ブログ『小径を行く』を3月限りでストップ、タイトルを『新・小径を行く』に改め再スタートした。サービスサイトをビッグローブ(KDDI系列)運営の「ウェブリブログ」から、はてな社運営の「はてなブログ」に変更したことが…

2017 優しい眼差しで紡ぐ言葉 詩人たちとコロナ禍

現代に生きる私たちにとって逃げることができない重い存在は、コロナ禍といっていい。この1年半、この話題が果てしなく続く日常だ。それは詩人にとっても無縁ではなく、最近、手元に届いた詩誌や小詩集にもコロナ禍が描かれている。この厄介な感染症が収束…