小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

2051 コロナ禍の床屋談義 ワクチン接種をめぐって

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 新型コロナ感染症のワクチン接種が毎日ニュースになっている。東京・渋谷のワクチン接種会場に多くの若者が並ぶ光景が先日まで続いた。コロナ禍はどこでも話題の中心になっている。たまたま行った理髪店でもそうだった。待合室で私が順番を待っていると、髪の毛を刈ってもらっている先客が理容師に「ワクチン接種は終わりましたか」と聞いている。それから話は意外な展開になった。理容師のマスク越しの、しかも声をひそめた話は聞き取りにくいのだが、以下のような内容だった。

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 客 私はコロナワクチンの接種は済みましたが、皆さん(この店には複数の理容師がいる)はどうですか。

 理容師(以下、理で表記) 接種券は届きましたが、副反応が心配で迷っているんですよ。最近は副反応のニュースが多いですね。

 客 では、打ちたくない……。

 理 はい。そうですね。実は友人からコロナに効く薬があると聞きまして。私もいろいろ調べ、その薬を手に入れました。

 客 何という薬ですか。

 理 イベルメクチン、というのですよ。聞いたことがありませんか。

 客 ああ、どこかで聞いたけど、詳しくは知らないなあ。

 理 ノーベル医学・生理学賞をもらった大村智さん(北里大学特別栄誉教授)の研究で開発された薬ですよ。寄生虫などによる風土病の予防や治療に使われているそうです。その薬がコロナの軽症段階では効くという話が報道されているんです。インドや中南米で実際に使われているそうです。

 客 では、日本では認可されているんですか。

 理 たしか北里大学臨床試験が進められている段階と聞いていますが……。海外でも有効性を疑問視する声もあるようです。WHO(世界保健機関)もコロナ患者への使用を推奨していないようですね。まあ、このようにいろんな意見があるそうです。それは分かっているのですが、コロナに感染した私の友人が海外から並行輸入したこの薬を飲んだら、一発でよくなったんですよ。それで私もこの友人を通じて、購入できました。今はなかなか手に入らないそうですよ。

 客 じゃあ、ワクチンはやらない?

 理 今のところ、やらないという方向ですね。やはり副反応が怖いですよ。国はワクチン接種をしなさいと言いながら、副反応のことはあまり知らせないのはおかしいですよ。

 客 昨年、大阪府の知事がコロナ予防にうがい薬が効果あると発表したことがありましたね。その後はどうなったのでしょうね。前の安倍首相がインフルエンザ用のアビガンが特効薬として期待できると大々的に記者会見で話したことがありましたね。でも、まだ製造承認がされたとは聞きません。イベルメクチンの治験はどうなるのかなあ……。

 理 いい結果が出るといいんですが。ワクチンのことはどうするか、もう少し様子をみますよ。

 客 そうですね。でも毎日多くのお客さんと接するので、神経を使いますね。

 理 ありがとうございます。この店の感染対策は完全だと思うのですが、それでも気をつけますよ。

 こんなやり取りをしているうちに、客の頭はきれいになった。次は顔そりか、まだ時間がかかりそうだと思いながら続きを聞こうとしたが、話はいつの間にか終わっていた。

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 コロナワクチンをめぐっては、接種が強制ではないため接種をしない人たちが一定数いる。理由はさまざまだが、副反応を恐れる人が少なくないようだ。実際、私も2回目の接種をした翌日、38・1度の熱が出て、倦怠感が2日ほど続いた。個人差があり、何の症状もない人もいる反面、2回目の接種後に亡くなった人もいる。この理容師のように、ワクチンよりも特効薬を求めたい気持ちも理解できるのだ。ワクチン開発では遅れている日本。世界の人々を救う治療・特効薬開発を望むのは無理なことなのだろうか。

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 写真 ハナニラの白い花が咲いた