小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

2097 「マイクロムーン」を見る 地球から最も遠い満月の朝

    f:id:hanakokisya0701:20220118142813j:plain

     (小学校の赤と緑のシンボルタワーの間に浮かぶ満月)

 今朝の夜明け前、太平洋側の各地で西の空に輝く満月を見た人は多いのではないでしょうか。橙色の小ぶりな月。それはことし一番小さい満月で、「マイクロムーン」と呼ぶそうです。初めて聞く言葉です。控えめな印象がありますね。とはいえ、この月は朝早く出勤する人や散歩をする人を慰めたのではないでしょうか。

 国立天文台によりますと、ことし地球から最も近い満月(スーパームーン)は7月14日で、今回の満月は地球から最も遠い位置のため7月14日に比べると、「視直径」(天体の大きさを表す場合、実際の大きさより角度を用いて見かけの大きさを表すことがあり、見かけの直径を視直径と呼ぶ)が約11パーセント小さくなるそうです。私が見た満月は朝7時前でしたが、実際に地球から最も遠い満月になったのは今朝の8時48分だったそうです。

スーパームーン」は新聞やテレビのニュースにもなり、たまに耳にすることがありますが、「マイクロムーン」という言葉を私はこれまで知りませんでした。今朝も風があって寒い朝でした。それでも眩い月の光に向かって歩いていますと、丸い円に吸い込まれそうになる感覚があり、体が軽くなり、寒さも忘れることができました。

 ベートーヴェンは、1801年に作曲したピアノソナタ第14番を『幻想曲風ソナタ』と名付けました。しかし現在では『月光ソナタ』という通称でよく知られています。これはドイツの音楽評論家、詩人ルートヴィヒ・レルシュタープ(1799~1860)の言葉が由来といわれています。

 レルシュタープはこの曲の第1楽章を聴いて、「ルツェルン湖(スイス中央に位置し、スイス4番目に大きい湖。周辺にはスイス建国にまつわるウイリアム・テルの伝説がある)の月光の波に揺らぐ小舟のようだ」と話したというのです。レルシュタープは音楽評論の分野で大きな影響力を持っていたため、この後、この曲が『月光ソナタ』と呼ばれるようになり、現在もそのまま使われているというのです。

「湖の月光に揺らぐ小舟」という表現で、ある風景を思い出しました。ノルウェーでソグネ・フィヨルドに次いで2番目に大きいハダンゲル・フィヨルド(ホルダラン県)を訪れた際に見た小舟が波に揺らいでいた光景(下の写真)です。朝霧のフィヨルドに浮かぶ小舟は、妖精の乗り物のように見えました。この写真を見ながら『月光ソナタ』を聴きますと、レルシュタープの感性が私にも伝わってくるような気がするのです。

    f:id:hanakokisya0701:20220118142846j:plain

    f:id:hanakokisya0701:20220118142915j:plain

    f:id:hanakokisya0701:20220118143014j:plain