小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

2019-01-01から1年間の記事一覧

1847 来年こそは平和であってほしい「生き方修業」を続ける仲代達矢さん

(来年以降も芝居を通して人々に伝え続けて行きたいことは何でしょうか、という問いに対し)「1つに絞ると、戦争と平和です」。NHKラジオの歳末番組で、87歳で現役を続ける俳優の仲代達矢さんがこんなことを話すのを、散歩をしながら聞いた。凍てつく寒さ…

1846「第九」を聴きながら 横響と友人にブラボー!

友人が所属する横浜交響楽団の定期演奏会を聴いた。《横響定期第九70回記念・横響と第九を歌う会50周年記念》と題した演奏会は、飛永悠佑輝さんが指揮し、ワーグナーの楽劇『ニュルンベルクのマイスタージンガー』第一幕への前奏曲に続いて、ベートーヴ…

1845 情報漏洩の当事者は同じ鈴木姓 特権利用の呪うべき行為

総務省の鈴木茂樹事務次官が、かんぽ生命保険問題を巡る行政処分の検討状況を日本郵政の鈴木康雄上級副社長に漏洩したことが発覚、懲戒処分(停職3カ月)を受け辞職した。本来なら懲戒免職に当たり、役所の感覚の鈍さを露呈した処分といえる。偶然だが、こ…

1844 ブッダ80年の生涯を調べ尽くす 電子書籍『蘊蓄 お釈迦さま』を読む

「般若心経の最後にある『ぎゃあてい、ぎゃあてい、はらぎゃあてい……』(日本では「ぎゃてい、ぎゃてい、はらぎゃてい」が一般的だが、このような読み方もあるという)は、どういう意味ですか」この素朴な疑問に対し、僧侶は「分からん」と言って答えてくれ…

1843 姑息な政府答弁書 反社会勢力の定義困難とは……

「姑息」(こそく)という言葉がある。辞書には「(『姑』はほんのちょっとの間、『息』はやむ、やすむの意から)一時のまにあわせに物事を行うさま。その場しのぎ」(旺文社・国語辞典)とある。これに加え、「俗に卑怯なさま」(広辞苑)、「近年『その場…

1842 地球は悲劇と不幸を満載した星 権力悪と戦った長沼節夫さん逝く

私は30歳のころ、東京の新宿署を拠点に警察を担当する「4方面クラブ」に所属していた。いわゆるサツ回り記者である。地方の支社支局を経ているとはいえ、駆け出し記者だった。ほかの社も、私と同様に地方を経験して社会部に配置された記者が多かった。そ…

1841最長寿蝙蝠(バット)消える 喫煙習慣の終りの始まり

「ゴールデンバット」と聞いて、たばこの銘柄と分かる人はかなり減っているのではないだろうか。1906(明治39)年から続いた日本一長寿の銘柄だが、ことし限りで姿を消すことになった。若いころの一時期、私もたばこを吸ったことがある。しかし、長い…

1840 続「語るに落ちる」人権意識欠如 「桜を見る会」名簿廃棄の首相答弁

昨年6月、このブログで「語るに落ちる」という言葉(ことわざ)を使い、政治家の言動について書いたことがある。残念ながら、その後もこのことわざ通りの動きが政治の世界では続いている。連日、ニュースで取り上げられている「首相と桜を見る会」に関する…

1839 冬の朝のアーチ状芸術 虹の彼方に何が……

今朝は天気雨が降った。そのあと調整池の上には見事なアーチ状の虹が出た。虹は、雨上がりの時などに太陽と反対方向に現れる色のついた光の輪であり、太陽の光が雨滴の中で屈折して反射して発生するものだ。虹については世界で様々な言い伝えがあり、虹を指…

1838 事実の記録に徹する 日航ジャンボ機事故を追跡取材した記者

世の中で起きている様々な事象は「事実」と「真実」がある。手元の広辞苑には「事実」は「実際に起こった事柄」とあり、「真実」は「表現されたものの内容にうそ偽りがないこと。また、本当のこと。偽りのないものと認識された事柄。特に、物事の奥深くにひ…

1837 ゴッホは何を見て、何を描きたかったのか 映画『永遠の門』を見る

絵画の世界でレオナルド・ダ・ヴィンチ、ピカソと並びだれでもが知っているのが「炎の人」といわれるフィンセント・ファン・ゴッホだろう。では、ゴッホはどんなふうに描こうとする風景を見ていたのだろう。それを映画化したのが『永遠の門 ゴッホの見た未来…

1836 北海道に魅せられた画家 後藤純男展にて

「美瑛の町役場の屋上から、私は秋晴れの東南の空に十勝連峰を眺めた。主峰十勝岳を中央にして、その右にホロカメットク山、三峰山、富良野岳、その左に美瑛岳、美瑛富士、オプタクシケ山。眺め飽きることがなかった」。深田久弥は名著『日本百名山』の中で…

1835 季節外れマロニエの緑葉 人生至宝の植物に異変

ラジオ体操をやっている広場に約20本のマロニエ(セイヨウトチノキ)がある。ほとんどの木が葉を落としつつあるのに、なぜか1本だけ青々と葉が茂っている。桜の花が季節外れに咲いたなどという話は聞いたり、実際に見たりすることがあるが、季節外れにマ…

1834 それぞれに思い描く心の風景 シルクロードと月の沙漠

歌詞がロマンチックな「月の沙漠」は、昭和、平成を経て令和になった現代まで長く歌い継がれている童謡である。この秋、中国・シルクロードを旅した知人が、月の沙漠を連想する場所に立ち、旅行記の中で書いている。日本には千葉県のリゾート地、御宿町の御…

1833 東京は優しくない街 弱者の扱いで分かる文化レベル

大阪に住む友人が東京で電車を利用した体験を、自身のフェースブックに記している。来年、東京でオリンピックとパラリンピックが開催される。マラソン、競歩が札幌で実施されることに決まったことで大騒ぎしているが、東京の障害者対策が遅れていることを友…

1832 季節は秋から冬へ ラガーの勝ち歌みじかけれ

散歩コースの遊歩道から調整池を見ていると、このところ毎日のように霧が出ていて、美しい風景を演出している。今朝も昨日に続き霧が出ていた。茜色に染まった雲と紅葉が始まった森、赤いとんがり屋根の小学校、その下に薄く広がる白い波のような霧が見事な…

1831 日本メディアとイングランドチームに喝 ラグビーW杯余聞

日本開催で盛り上がったラグビーのワールドカップ(W杯)。2日に横浜国際総合競技場で行われた決勝で南アフリカがイングランドを32-12で下し、3大会ぶり3度目の優勝を飾った。その表彰式でイングランドチームが取った行動に批判が集まっている。海…

1830 思い出の首里城への坂道 沖縄のシンボルの焼失に衝撃

那覇市の首里城が火災になり、中心的存在の正殿、南殿、北殿など計7棟(4800平米)が焼失した。「首里の城は私たちの心の支え」と沖縄の人々が語るほど、この城は沖縄の象徴でもある。私は昨年末から今年の正月を首里で過ごし、毎日、城の周辺を散歩し…

1829 本を繰り返し読むこと ヘッセ『郷愁』とともに

高橋健二訳・ヘルマン・ヘッセの『郷愁』(新潮文庫)は、まさしく名著である。アルプスの高山に囲まれ、美しい湖水風景が広がるスイス山間部の小さな村に生まれ、成長するペーター・カーメンチントという主人公の自己形成史ともいえる、透明感にあふれる作…

1828 ただ過ぎに過ぐるもの 優勢なセイタカアワダチソウ

散歩コースの遊歩道から調整池を見ると、池の周辺の野原は黄色い花で埋め尽くされている。言わずと知れた外来植物のセイタカアワダチソウである。例年、この花とススキは生存競争を繰り返しているのだが、今年は外来植物の方が圧倒的に優勢だ。この道を歩き…

1827 郷愁と失意と 秋の名曲『旅愁』を聴きながら

東日本に上陸し大きな被害を出した台風15号と19号。新聞、テレビの報道を見ていると、復旧は容易ではないことが分かる。原発事故の福島が今回の災害でも一番被害が大きかったことに心が痛むのだ。私は台風の夜、アメリカの曲に犬童球渓(1879~19…

1826 ラグビーは小説 サッカーはノンフィクションという比喩

「たとえていうなら、小説はラグビーで、ノンフィクションはサッカーということになろうか」新聞記者出身の故ノンフィクション作家、本田靖晴は『複眼で見よ』(河出文庫)というジャーナリズム・メディア論をテーマにした本の中で、小説とノンフィクション…

1825 あの川もこの川も氾濫 想像力欠如の楽観主義

千曲川や多摩川、阿武隈川、那珂川という著名な川から、耳慣れない川まで数えることができないほどの河川が氾濫した。台風19号による未曽有の大雨は関東甲信越、東北を中心に甚大な被害を及ぼした。被害の全容はまだ分からない。浸水被害を伝えるテレビの…

1824 国籍と政治性排除のはずが ノーベル賞お祝い報道に?

今年のノーベル化学賞に、スマートフォンや電気自動車に使われるリチウムイオン電池を開発した吉野彰さん(71)ら3人に贈られることが決まった。何よりのことである。吉野さんの受賞で日本のノーベル賞受賞は27人目になるという。しかし、アレフレッド…

1823 生後半年で死んだ妹のこと 知人の続・疎開体験記

ことし7月、知人の疎開体験記をこのブログに掲載した。知人にとって、自分史の一部である。今回、知人の許しを得て疎開後に起きた妹の死の記録を掲載する。(登場人物は一部仮名にしております) 仏教用語で「会者定離」(えしゃじょうり)という言葉がある…

1822 400勝達成の裏で 金田に贈る川上の言葉

プロ野球で大選手(大打者)にして大監督といえば、川上哲治と野村克也の2人だろう。6日に86歳で亡くなった金田正一は、前人未到といわれる400勝を達成し日本では最高の投手といえる。ロッテを率い日本一も経験したが、監督の力量としては川上と野村…

1821 多くは虚言なりか 闇深き原発マネーの還流

吉田兼好の『徒然草』第73段に「世に語り伝ふること、まことにあいなきにや、多くはみな虚言(そらごと)なり」という言葉ある。国文学者の武田友宏は角川ソフィヤ文庫の『徒然草』で、この段を「『うそ』の分析」と題し解説を加えている。関西電力高浜原…

1820 繰り返すドーハの悲劇 過酷!深夜の世界陸上

「ドーハの悲劇」は、1993年10月28日、中東カタールの首都ドーハで開催されたサッカーW杯アジア地区最終予選最終節の試合で、イラク代表と戦っていた日本代表がロスタイムに同点ゴールを入れられ、W杯初出場を逃したことを指す言葉である。現在、同…

1819 おいおい! 関西電力よ  理不尽・不正義まかり通る時代

「おいおい、どうなっているの?」と言いたいほどの、驚いたニュース。関西電力会長、社長ら20人に原発立地の福井県高浜町の元助役から3億2000万円分の金品が渡されていた。逆の場合ならありそうなことだが、こうした資金還流もあるのだからびっくり…

1818 地球温暖化に背を向ける大人への警鐘 グレタさんの訴え

16歳の少女の訴えを全世界の大人はどう受け止めたのだろうか。23日にニューヨークの国連本部で開かれた気候行動サミット。一番注目を集めたのは16歳の少女、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさんの大人への怒りを込めたスピーチだった。地…