小径を行く 

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。(筆者=石井克則・遊歩)

2009-04-01から1ヶ月間の記事一覧

438 豚インフルエンザの発生 やまない戦争への警告

カミュの「ペスト」は、ペストが大流行したアルジェリアのオランという都市を舞台に、さまざまな階層、職業の人たちが協力しながら、恐ろしい伝染病に立ち向かう物語だ。人類が経験してきた災厄との闘いをモデルにした、これまで読んだ文学作品の中でも極め…

437 グラン・トリノ 人生最終章の選択

クリント・イーストウッドは1930年5月30日生まれなので、現在78歳。あと1ヵ月で79歳になる。最近のインタビューで、俳優としてはこれが最後の作品で今後は監督業に専念することを示唆したイーストウッドの渋い演技が脳裏に焼きつく映画だった。 …

436 ストレス時代 最近のニュースに思う

最近の新聞やテレビのニュースを見ていて感じるのは「ストレス社会」ということだ。病んだ社会というのだろうか。 自殺者が11年連続して3万人を超え、プロ野球・広島カープのボール犬は11歳なのに老衰で死亡し、SMAPの草彅剛は酔っ払ったあげくに裸…

435 ライラックの咲くころ リラ冷えの季節に

近所の庭や遊歩道のわきのライラックが咲き始めた。フランス語ではリラともいうが、渡辺淳一に「リラ冷えの街」という札幌を舞台にした作品がある。 札幌でライラックが咲くのは、6月初めごろだ。季節は初夏なのに、朝夕は冷え込む日があり、渡辺はこの季節…

434 スーザン・ボイルさんの歌声 事実は小説より奇なり

いま、イギリスだけでなく、全世界を驚かせているのがスーザン・ボイルさん(47)という女性のユーチューブ映像だろう。わずか7分余りの映像から、映画を見ているような不思議な感動を受けるのだ。「人は見かけによらない」というが、それを立証したのが…

433 天才イチローは桜草 できることとできないこと

大リーグに渡ったイチローが日本と大リーグを合わせて3086本の安打を打ち、張本の日本記録を破った。強打の張本と巧打のイチローの違いはあっても、2人に共通するのは、並外れた才能(人は天才という)と、向上心(努力)の強さだろう。 イチローは嫌い…

432 地に堕ちた雑誌ジャーナリズム ああ、週刊新潮よ

時効になった朝日新聞阪神支局襲撃事件(1987年5月)について、真犯人と称する男の告白手記を連載した週刊新潮の報道は完全な虚報だった。これを説明した4月23日号の編集長の報告はお粗末で、雑誌ジャーナリズムの終焉を思わせた。これを読んで「あ…

431 人間の宝物は言葉 奥田英朗の書きたいこと

ふと手に取った文庫本でも心にしみることがある。それが奥田英朗の「空中ブランコ」だった。変わった精神科医と5人の患者の診療を超えたペーソスとユーモアのある交流につい引き込まれていく。 5話目の「女流作家」の最後に「人間の宝物は言葉だ」という文…

430 『我、拗ね者として生涯を閉ず』 本田靖春の頑固人生

拗ね者と聞いて連想するのは、社会の暗部にたむろするやくざのような存在か。かつては新聞記者も無頼派を気取り、斜に構えて世の中を見る輩が多かったという。「孤高の精神」「無冠の帝王」「一匹狼」などの表現は、そうした時代の新聞記者の代名詞でもあっ…

429 桜の木の下の読書 春爛漫の一日

4月に入って好天が続いている。桜の花が長持ちして得をしたような思いをした人が多いのではないか。我が家の庭も春の花盛りだ。チューリップ、パンジー、水仙、石楠花、カイドウにカメラを向けた。にほんブログ村

428 「一歩進んでも形は変えない」 中国の俳優たちの思い

現代中国には、日本の歌舞伎と似ている京劇があり、新劇のことを話劇というそうだ。 その代表格の2人が来日し、8日夕東京で「演劇に生きて」という日中文化交流協会の催しに出席した。京劇は尚長栄さん(69)、和劇は濮存昕さん(55)だ。 2人のあいさつ…

427 人間の原罪を問う舞台 劇団四季の「ひかりごけ」

劇団四季の「ひかりごけ」の舞台を見た。日下武史らの4人芝居だ。初めから終わりまで暗い内容で、重い気持ちのまま舞台の4人に見入った。 武田泰淳のベストセラー小説を基にした、極限状況下「人の肉を食べてまで生きるべきか」を問うた芝居であり、幕間に…

426 森田知事の誕生 都会と田舎が同居の千葉県

所用があり千葉県庁前を歩いていたら、テレビカメラや報道陣が集まっていた。いわずと知れた、新しい知事、森田健作氏の初登庁風景を取材しようとする一団だ。タレント知事は宮崎、大阪に次いで3人目だ。彼は、都会と田舎が同居する千葉の舵をうまく取るこ…

425 桜の花の季節に 宴の陰で

いま、日本列島は桜前線が北上中だ。なぜかこの季節になると、心が浮き立つ。それは日本人に共通する特有の感情だ。この土日、近所の桜の名所を歩いた。多くの人たちが花を楽しみ、宴をやっている。そうした平和な光景の陰でテレビは北朝鮮のロケット問題で…

424 経済報道についての一考察 企業の内部留保33兆円

雇用の大幅削減を一斉に大手企業が進めている。旧聞になるが、これに絡んで日本を代表する大手企業16社の内部留保が過去最高の33兆円に達したという記事が昨年末出たことを記憶している。この記事をめぐって、賛否両論が相次いだことを記事を配信した共…

423 日本を去る子どもたち ある日系留学生の報告

昨年2月、岐阜県美濃加茂市を初めて訪問した。ドイツのライン川に似ているため「日本ライン」と呼ばれる木曽川が流れる自然豊かな街だ。ここは隣接する可児市とともに南米・ブラジル人が多く、美濃加茂市は人口の約1割が外国人だ。ソニーなど大手家電メー…