小径を行く 

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。(筆者=石井克則・遊歩)

災害

2845 暑さを忘れるぞっとする話 人間の心根は優しい

暑さを忘れるには、ぞっとする怪談や不可思議な話を聞くこともいいかもしれない。投書欄で、そんな話を特集した新聞もあるほどだから、このところ日本の夏の暑さは尋常ではない。東日本大震災後、被災地では幽霊現象が相次ぎ、大学のゼミの研究材料になった…

2768 タイサンボクは鎮魂と希望の木 名作『じろはったん』では「葉の舟」

4、5月は「花の季節」といっていいだろう。草も樹木も次々に花を付ける。今は街路樹のユリノキが満開だ。そして間もなくタイサンボク(泰山木)の白いやや大きな花を見ることができるだろう。山本健吉編『句歌歳時記 夏』(新潮社)を開いたら、タイサンボ…

2625 遭難免れた青函連絡船 悲劇の洞爺丸事故から70年

国内最大の海難事故といわれる「国鉄青函連絡船洞爺丸事故」から26日で70年の歳月が流れた。台風15号の嵐の中を函館港から出航した洞爺丸(4337トン)をはじめ、合わせて5隻が遭難、洞爺丸の乗客乗員1155人を含む1430人が犠牲になった。…

2289「祈りのコンサート」が最終回 被災者を癒す音楽家たち

(満開の木瓜の花) 私は社会部の駆け出し記者時代、新宿警察署を拠点とする「4方面クラブ」に所属していました。その当時、8社の記者がいましたが、その一人に音楽をこよなく愛する記者がいました。自身もヴァイオリンをやり、定年後、かつて私も住んだこ…

2288 涙を喪失した少年今も 3.11以後の世界でも

(開花した美しい陽光桜) 自然界のスケールに比べれば人間ははかなく、小さな存在だ。その一人である私は12年前の3.11という大災害に、うろたえたことを忘れることができない。今日も近くの森からウグイスの鳴き声が聞こえ、街路樹のハクモクレンの花が咲…

2275『現代を歩く』(26)みんなでやろう「おらほのラジオ体操」

毎朝の散歩コースに当たる公園の一角でラジオ体操をやっているグループがある。夏は40人近く、真冬でも15人前後が集まっている。私もその一人だ。1928年からスタートしたラジオ体操は国民的体操といっていい。このラジオ体操が東日本大震災の被災地…

2274 トルコの人たちへの励まし 挫けないでと「ホジャ」

大地震のあったトルコ南部とシリア北部の地図を見ている。がれきと化した街、真冬の厳寒の中で立ち尽くす人たちの姿。大地震の死者はこれまでに2万3000人を超えている。地球は不幸を満載した星だと思わざるを得ない。地図の後、1冊の本を取り出した。…

2265ウクライナ襲うロシアという「巨大津波」ブログへの便りから

このブログは2006年9月にスタートした。今年9月で17年、今回で2265回になる。この間、様々な反応や反響があった。その中で2011年の東日本大震災の後に届いた手紙は、胸に迫る内容だった。あの大震災から間もなく12年。福島の原発事故の後…

2099 強敵と戦う武器は 小学生にも大きな影響のオミクロン株

(満開になった遊歩道の紅梅) 「疾病というものは侮り難い強敵なのだ。恐るべき武器をもっているのだ。われわれがどれほど強固な武装をしたところで、なかなか歯がたつものではない。われわれがどれほど防衛の態勢を整えたところで、その攻撃にかかっては耐…

2097 「マイクロムーン」を見る 地球から最も遠い満月の朝

(小学校の赤と緑のシンボルタワーの間に浮かぶ満月) 今朝の夜明け前、太平洋側の各地で西の空に輝く満月を見た人は多いのではないでしょうか。橙色の小ぶりな月。それはことし一番小さい満月で、「マイクロムーン」と呼ぶそうです。初めて聞く言葉です。控…

2096 朝焼け広がる厳寒の空 阪神淡路大震災から27年

今朝は朝焼けが見えた。「日の出の頃、東の空が薄紅色や燃えるような色に染まることがある。これは大気の状態によって太陽光が散乱する現象であって夏にのみ起こるわけではないが、特に夏の朝焼けは荘厳であり、夏の季語とされる。天気の下り坂の前兆といわ…

2034「you might or more head」 これ、どんな意味?

今年の「大暑」は先週木曜日(22日)でした。一年で一番暑い日々が続いています。この猛暑の中で東京五輪の屋外競技をやっている選手たちは、本当に気の毒です。私は、このところ散歩は涼しい早朝だけにしているのですが、今朝散歩コースから見た風景は透…

1997 新しい夜明けを待つ心 コロナ禍の現代に考える

10年ひと昔という。しかし、世の中の動きが早い現代から見ると、10年前はひと昔どころか、もっと遠い日のことのように思えてならない。こんなことを書くと、2011年3月11日の被災地の皆さん、特に東電福島第一原発事故で故郷を離れざるを得なかっ…

1987 被災地で感じる胸の痛み(再々掲)

東日本大震災から10年になった。政府主催の「十周年追悼式」が11日、国立劇場(東京都千代田区)で開かれた。菅内閣は「復興の総仕上げの年」と称して、追悼式を今回で打ち切る方針だという。本当に総仕上げといえるほど復興は進んでいるといえるのだろう…

1931今年も咲いたアメリカデイゴ 台風禍からの復活

自然界の復元力、なんていうとやや大げさかもしれない。 近所の遊歩道脇に植えてあったアメリカデイゴ(和名・海紅豆=カイコウズ)が昨年9月の台風15号で倒され、市から依頼された業者によって根元からきれいに切り取られた。毎年初夏から晩夏まで花を咲…

1899 あの閃光が忘れえようか  広島を覆う暗雲

あの閃光が忘れえようか瞬時に街頭の三万は消え圧しつぶされた暗闇の底で五万の悲鳴は絶え 峠三吉の「八月六日」という詩は、こんな書き出しで、以下原爆投下後の広島の惨状を綴っています。あと1カ月余で、広島に原爆が投下されて75年になります。その広…

1825 あの川もこの川も氾濫 想像力欠如の楽観主義

千曲川や多摩川、阿武隈川、那珂川という著名な川から、耳慣れない川まで数えることができないほどの河川が氾濫した。台風19号による未曽有の大雨は関東甲信越、東北を中心に甚大な被害を及ぼした。被害の全容はまだ分からない。浸水被害を伝えるテレビの…

1816 正義の実践とは 東電旧幹部の無罪判決に思う

机の後ろの本棚に『ことばの贈物』(岩波文庫)という薄い本がある。新聞記事やテレビのニュースを見ながら、時々この本を取り出して頁をめくる。そのニュースに当てはまる言葉ないかどうかを考えるからだ。福島第一原発事故をめぐる東電旧経営陣3人に無罪…

1815 米大統領とオオカミ少年 ハリケーン進路騒動

古代ギリシア(紀元前6世紀ごろ)の寓話作家イソップ(アイソーポス)の『イソップ寓話集』は、様々な事象を寓話(教訓や風刺を含めたたとえ話)にしたものだ。その中にある「オオカミ少年」(あるいは「嘘をつく子ども」)の話は、よく知られている。朝刊…

1813 天災と人災「小径を行く」14年目に

台風15号によって私の住む千葉県は甚大な被害を受けた。中でも大規模停電は、昨年北海道地震で起きた「ブラックアウト」の再現かと思わせた。東京電力によると、全面復旧にはまだかなりの時間を要するという。これほど深刻な災害が起きているのに、なぜか…

1812 炎暑地獄の9月 台風去って難が来る

9日未明に千葉市に上陸した台風15号は、最大瞬間風速57・5メートルを記録し、同じ千葉市に住む私は眠れぬ夜を明かした。台風のすごさはテレビの映像で知ってはいたが、それを目のあたりにした。あちこちで街路樹が倒れ、屋根のテレビのアンテナが横倒…

1795 前倒し夏休みなのに 梅雨寒続く7月

梅雨寒や背中合わせの駅の椅子 村上喜代子 梅雨寒の気候が続いている。昨年の今頃は猛暑になっていたが、今夏は天候不順で肌寒い日がなかなか終わらない。私の住む千葉市の市立小中校(165校)は、例年より1週間繰り上げて夏休みになる。3連休だから、…

1761 浜辺の風景が変わっても 3・11から8年

あの日から8年が過ぎた。3・11東日本大震災である。8年前の記憶は人それぞれにしても、現代に生きる日本人にとって忘れがたい大災害だった。大災害に襲われた福島、宮城、岩手の3県だけでなく茨城、千葉の沿岸部の被災地で「これまでの経験から、避難しなく…

1758 ほろ苦い青春の一コマ 肘折こけしで蘇る

先日、友人たちとの会合で懐かしい地名を聞いた。「肘折」(ひじおり)という知る人ぞ知る地域だ。山形県最上郡大蔵村にあり、温泉とこけしで知られている。日本でも有数の豪雪地帯で多いときは4メートルを超すというが、今日現在の積雪量は約2・3メート…

1713 寛容よりも道義 異論のススメへの異論

朝日新聞に佐伯啓思という京大名誉教授が「異論のススメ」という評論を載せている。2017年11月、朝日の当時の木村伊量社長が東電福島第一原発事故をめぐる「吉田調書」の記事や慰安婦報道の取り消しなど、一連の事態の責任を取って辞任した後に「あの…

1703 北海道大地震の体験 知人のブログから

北海道に住む知人夫妻が、ブログに北海道胆振東部地震の体験記を書いている。自然災害が多発する日本列島に住む私たちに貴重な情報だ。以下に核心部分を紹介する。 オール電化生活の高齢者住宅に住む私達は、卓上コンロのガスボンベを求めて近隣のスーパーへ…

1702 繰り返す自然災害 想定外からブラックアウトへ

「予(われ)、ものの心を知れりしより、四十(よそじ)あまりの春秋(しゅんじう・しゅんしう)をおくれる間に、世の不思議を見ること、ややたびたびなりぬ(「私は物事の分別がつくようになったころから、40余年の歳月を送ってきた。その間に常識ではあ…

1690 台風一過の午後のひととき プレーヤーに入れたCDはあの曲

台風一過、暑さが戻ってきた。こんな時にはCDを聴いて少しでも暑さを忘れたいと思う。プレーヤーに入れたのは、チャイコフスキーの「弦楽セレナード」(ネヴィル・マリナー指揮、アカデミー室内管弦楽団)だった。実は昨日、友人が演奏者として参加したコン…

1681「悪い年回り」にこそ 西日本豪雨災害に思う

物理学者で随筆家の寺田寅彦が「天災と国防」というエッセーを発表したのは1934(昭和9)年11月のことだった。この中で寅彦は「ことしになってからいろいろの天変地異が踝(くびす)を次いでわが国土を襲い、そうしておびただしい人命と財産を奪った…

1678 絶望的状況の中でも タイの少年たちへ

タイ北部チェンライ郊外のタムルアンという洞窟でサッカーチームの少年12人とコーチ1人の計13人が不明になって2日で9日となる。昼夜を徹しても救助活動が続いているが、大量にたまった濁水で作業は難航しているという。このニュースを見て、2010…