小径を行く 

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。(筆者=石井克則・遊歩)

2012-04-01から1ヶ月間の記事一覧

962 新緑の季節の木との対話 悲しみ、生きることに耐えられないときは…

新緑の季節になった。あすから5月。街路樹のけやきの葉の柔らかい緑が散歩をする人たちを優しく包み込んでいる。4月の終わりに、木の話を書いてみる。ドイツ生まれでスイスの作家・詩人のヘルマン・ヘッは「庭仕事の愉しみ」という本の中で、以下のような…

961 社会現象を投影した2本の映画 「ハーメルン」と「わが母の記」

連休に入って2本の映画を見た。双方とも内容は社会派に属し、ともに映像が美しい心に残る作品だった。BSフジで放映された「ハーメルン」(プレカット=縮小版)と話題の「わが母の記」である。 前者は福島県奥会津の廃校を舞台に人口の一極集中化現象が進…

960 悪い奴ほどよく眠る 衰退する日本政治

資金管理団体の土地取引をめぐって、政治資金規正法違反で強制起訴されていた小沢一郎・元民主党代表の判決は、大方の予想通り無罪という結果になった。裁判の過程をみていると強制起訴の根拠である検察の捜査資料の信用性が崩され、国民感情は別にしてこ無…

959 偉大な米大統領・急死の真相 歴史の襞に埋もれた事実を掘り起こした記者魂

米国大統領として4選を果たしたのは32代のフランクリン・ルーズベルト(1882~1945。本書はローズベルトと表記)のみで、彼はいまも偉大な大統領として、米国の歴史に名を残している。ルーズベルトが静養先の山荘で脳出血のため急死したのは、第…

958 植物を潤す穀雨 無残に折られたチューリップ

知人から「きょうは穀雨ですね」というメールが届いた。広辞苑によれば24節気の1つで「春雨が降って百穀を潤す意」とある。新聞のコラムを読んでいたら、何紙かが穀雨に触れていた。 例年に比べ冬の寒さが長引き、春は足踏み状態が続いた。桜の開花も1週…

957 労苦の鉄道の旅 下川裕治・ユーラシア横断2万キロ

沢木耕太郎は「旅する力」という本の中で、「旅には適齢期がある。旅をすることは何かを得ると同時に何かを失うことだが、齢を取ってからの旅は、大事なものを失わないかわりに決定的なものを得ることもないように思える」と書いている。 ⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄…

956 大人も惹きつけられる児童書 沢木耕太郎の「月の少年」

まさか、沢木耕太郎が児童書を書くとは思わなかった。青年時代に香港からからロンドンまでを、バスだけを使って旅をした体験記『深夜特急』(新潮社)でノンフィクション作家としての地位を確立した沢木がこうしたジャンルに挑戦したことが面白いと思ったの…

955 すがすがしい小説「舟を編む」 言葉を楽しむ三浦しをん

朝、散歩をしていて池の周囲にある小さな雑木林の木々が緑の葉を出し始めていることに気がついた。柔らかい朝の陽光が緑の葉を包み込んでいるようだ。本屋大賞に選ばれた三浦しをんの「舟を編む」(光文社)は、朝の風が木々の葉ををかすかに揺らすような、…

954 水のぶっかけ合戦だ! タイ・ソンクラーンのお祭り

タイのソンクラーン(旧正月、4月13―15日)の儀式である水掛け祭りが始まったと、チェンマイに住む知人からメールが届いた。写真を見ると、知人がこの期間は外に出たくないと思うのも理解できる。 タイを紹介するHPの中には「狂気の水掛け祭り」と紹…

953 絵のモデルになりました hanaの4月のつぶやき 9歳のゴールデンレトリーバーです

「一芸に秀でる者は多芸に通ずということわざがある。ある分野を極めた人は他の分野でも優れた才能を発揮することができるという意味だよ」。 旅行先から、大きな荷物を持って帰ってきたお父さんが、その荷物をほどきながら、こんなことを言っていました。ひ…

952 障害者支援を貫いたある人生 末期がんと闘ったYさん

知人の女性がこの2月、がんで亡くなった。末期のがんに侵され入退院を繰り返しながら、仕事に最後まで情熱を注いだ人生だった。2月初めに入院し、ついに仕事に復帰することはできなかった。 彼女が末期のがんに侵されているとは知らなかったから、他の人も…

951 桜の木の下に立ちて 花を楽しむ季節に・・・

「原爆の灰を思い出すから桜の花は嫌いである」という文章を書いたのは評論家の多田道太郎だった。しかし、その後、多田は奈良・吉野山の桜を見て、心に染みたと語ったそうだ。同じフランス文学者で多田の後輩の杉本秀太郎が「花ごよみ」にこう書いている。 …

950 五輪代表になる厳しさ 参加することに意義があるのか

ロンドン五輪代表を決める水泳の全日本選手権が開かれている。スポーツジムで20年近くのんびりとマイペースで泳いでいる私から見ると、別の世界の人間が水をかき分けている。それにしても、五輪は狭き門だと思う。

949 原爆投下とトルーマン『黙殺』との関係を考察した本

米国の第32代大統領、ルーズベルト(本書はローズベルトと表記)は1945年4月12日脳卒中のため急死した。そのあとを引き継いだのは、副大統領のトルーマンだった。太平洋戦争で、日本の敗色が濃厚になっていた時期だった。米国史上4選の大統領はル…

948 北京の旅(4)完 どこまで続くオリンピック効果

日本に観光に来た中国人が「日本では軽自動車ばかりが目につく。わが国では軽に乗っている人なんていない」という感想を漏らしたそうだ。日本をGDP(国内総生産)で追い越し、米国に次いで世界2位になったことの自信がこんな言葉になって出たのかもしれ…

947 表皮をそがれた柿、切り倒された桃の木 原発事故で果樹の名産地が危機

原発事故で福島県の田村市や川内村の一部に設定された警戒区域が解除になり、一部の住民が一時帰宅したというニュースが流れた。しかし、住民が元通りの生活に戻ることができるという保証は全くない。この地区よりも北部の伊達市はホットスポットといわれる…

946 北京の旅(3)厭わない深夜労働、サイドビジネス

中国は、いまも共産党による「一党独裁体制」が続いている。天安門にはその象徴として毛沢東の巨大な写真が飾られている。文化大革命によって国内を10年間にわたって混乱させた毛だが、共産党の独裁体制が続く限り、毛は特別な存在として扱われるのだろう…

945 北京の旅(2) 50万人が集う天安門広場

かつて民主化を求めて多くの学生や市民が集まり、人民解放軍によって武力弾圧された天安門広場は約40ヘクタールと広大で、全体に白い花崗岩が敷き詰められている。10月1日の国慶節には50万人の人たちが集まるが、花崗岩はちょうど1枚で1人が立つこ…