小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

季節

2107 人は何で生きるか 天才少女の挫折とトルストイ

ロシアの文豪、レフ・トルストイの短編『人は何で生きるか』(中村白葉訳・新潮社『世界名作選』は、民話を通じて、人の生き方を描いたものだ。ドーピング疑惑の中で出場し、暫定4位に終わった女子フィギュアのロシア、カミラ・ワリエワ(15)の騒ぎを見…

2103 2月生まれの感覚 寒い朝でも……

このごろは、夜明け前の東の空を見上げるのが楽しみだ。明けの明星(金星)が輝いているからだ。「いつせいに春の星座となりにけり」(黒田杏子)という句がある。今日は立春。この日が来ると、黒田の句のように昨日までは冬の星座だったものが、今日からは…

2092 4年ぶりの天からの便り 通学路に広がる樹氷

雪国に住む人たちにとって雪は珍しくないし、降り方によっては災害を引き起こす厄介な存在だ。かつて札幌での生活を体験し、雪は鬱陶しいと思うことが多かった。だが、雪がほとんど降らない地域に住んでいると、雪国の生活が懐かしくなったりする。昨日、南…

2083 人間を笑う年の暮 世界に広がる犯罪地図

12月もきょうで10日。残すところことしも21日になった。年の暮である。昨年から続くコロナ禍。南アフリカで見つかった新変異株オミクロンが世界的に拡大し、世界中で新規の感染者が増え続けている。一方の日本。第5波が落ち着き、いまのところ感染者…

2081 寒気の中でも凛として咲く 香り優しき水仙の花

(庭先に咲いた水仙) 庭先のスイセンの花が咲き始めた。この花は「水仙」(このブログでは一部を除き、以降「水仙」)と漢字で書きます)と書いたのを音読したものだそうだ。昔は「雪中花」(せっちゅうか)と呼んだこともあったという。文字通り雪の中でも…

2080 秋から冬への風景 点描・美しい自然の移ろい

(千葉県鴨川市の四方木不動の滝・雄滝) 今年も残すところ、36日になった。カレンダーを見たら2021年という西暦のみのものがほとんどで、西暦とともに「令和3年」と併記されたのは1つだけだった。現行のグレゴリオ暦になって148年(日本では18…

2073 ビーナスベルトに酔う 自然のアートに包まれて

毎朝、6時前に散歩に出ます。いつも最初に歩くのは調整池を回る遊歩道ですが、今朝歩いていて西の空を見上げますと、下の方が藍色でその上の部分がピンクに染まっていました。なかなか幻想的0で美しい空の色でした。日の出前のことです。これはビーナスベル…

2072 シリウスとの対話 かけがえのない犬たちへ

「○○よく頑張ったね。いい子だね」。夕方、散歩をしていたら、小型犬を連れた若い女性とすれ違った。しばらくして、こんな声が聞こえた。だいぶ遠くなってからあの犬がしきりに吠えている。私とすれ違った犬は人が近づくとほえてしまうのだ、でもそれを我慢…

2071 秋から冬への移行 時雨の季節感

ものの本(ある事柄に関することやその方面のことについて書かれた本)によりますと、「時雨」の季節は、『万葉集』(7世紀後半から8世紀後半にかけて編纂された、現存するわが国最古の歌集)のころは秋と捉えられていたそうです。その後、都が奈良から京…

2070 ある晩秋の風景 日だまりを求めて

さうか これが秋なのか だれもゐない寺の庭に 銀杏の葉は散ってゐる (草野天平「秋」・定本草野天平全詩集より。天平は詩人草野心平の弟) 晩秋。銀杏の葉も黄色く色づき、散り始めている。私のふるさとの浄土真宗の寺にも銀杏の木があった。秋になると、黄…

2069 ありふれた日常の中で ランドセルの少年と履き慣れた靴

庭の外に遊歩道があって、1キロに及ぶけやき並木が続いている。春から冬までの季節、けやきは様々な表情を見せてくれる。葉を落とした冬の姿も風情がある。秋たけなわ。例年なら美しい紅葉となるのだが、この秋は様子がややおかしい。葉が色づく前に散り始め…

2065 1人泡盛を飲む夜  蘇った銘酒物語

「酒 傾ければ 愁い来らず」。中国、唐時代の詩人・李白の「月下独酌」の中の一句だ。人は、この世の憂いを忘れるために酒を飲む。コロナ禍が続き友人たちと酒を飲みかわす機会はほとんどなくなった。秋の夜長、私はひとり沖縄の酒・泡盛を飲む。火事で焼失…

2060 小さな秋を見つけた 2度咲きの金木犀と「はえぬき」の新米

「秋たけなわ」というには少し早いようですが、秋本番はそこまで来ています。秋の訪れを知らせてくれる樹木として金木犀があります。あの独特の香りに接すると、私は秋を感じます。今年、庭の金木犀が咲いたのは9月10日でした。大体1週間で花は終わります…

2059 いい匂いの山の朝風 晩秋の月山風景

詩人で彫刻家の高村光太郎は、戦後、岩手で山小屋生活をした際「日本はすつかり変わりました。あなたの身ぶるひする程いやがつてゐた あの傍若無人のがさつな階級が とにかく存在しないことになりました。(以下略)」(詩集『典型』の「炉辺 報告智恵子に」…

2056 郷愁誘う紫色の通草(あけび) 里山を駆け回った遠い日

秋の味覚はいろいろある。第一に挙げるとすれば新米か。これ以外にも枚挙に尽きない。「シイタケ、マイタケ、栗、アケビ、ユズ」。埼玉秩父産の5つの旬の食べ物が知人から届いた。写真で見ても、色が鮮やかで食欲がそそられる。食欲が増す季節になりつつあ…

2055 相次ぐマスク着用めぐるトラブル 文明人の勇気とは

マスクをめぐるトラブルが内外で相次いでいる。中でもドイツの殺人事件は、多岐にわたるコロナ禍の負の歴史でも特殊な位置を占めるだろう。いつの時代でも、決まり事を守ることができない人はいる。極論すれば、国が決めたことを絶対に守らせようとするのは…

2053 散歩道に秋の香り「木犀の匂の中ですれ違ふ」

金木星の花が咲き出した。小さな橙色の花はあまり見えない。しかし、あの独特の香りで季節の花の開花を知った。備忘録によると今から6年前の2015年は9月23日に「金木犀開花。例年よりかなり早い」とあるから、今年は夏から秋への移ろいというバトン…

2043 今年も二重の虹 想像の旅でイグアス伝説味わう

コロナ感染が爆発状態で増え続けています。こうした現実から逃れることはできませんので、鬱陶しい思いで毎日を送っているのは私だけではないでしょう。早朝の散歩は、少しだけそんな気分を晴らしてくれます。しかも、今朝は北西の空に二重の虹が上がってい…

2038  ヒグラシ鳴く五輪最終日 子規の病床テレビ観戦を想像

夕方、調整池の周囲をめぐる遊歩道を散歩していたら「カナカナカナ……」とヒグラシが鳴いているのが聞こえた。何となく物寂しさを覚える哀調ある鳴き声だ。子どものころは、このセミが鳴くと夏休みが終わりに近かった。8月20日過ぎには2学期が始まったか…

2034「you might or more head」 これ、どんな意味?

今年の「大暑」は先週木曜日(22日)でした。一年で一番暑い日々が続いています。この猛暑の中で東京五輪の屋外競技をやっている選手たちは、本当に気の毒です。私は、このところ散歩は涼しい早朝だけにしているのですが、今朝散歩コースから見た風景は透…

2026 山百合の香が漂う道 マスク外して一人歩き

山の百合山の子山の香とおもふ 飯田龍太 近所まで出かけた帰りに、人気のない道を歩いていると、山百合の香りが漂ってきた。マスクを外して、その懐かしく甘い香りを深く吸い込んだ。コロナ禍の中で一人歩きのぜいたくな気分を味わった。誰かがいたらマスク…

2023 季節の色を描く 緑の『調整池』風景

四季折々、季節にはさまざまな色がある。どんな色が好きかは、人によって異なる。とはいえ、緑が嫌いな人は少ないのではないか。梅雨が続いている中で、緑がひときわ美しく感じるこのごろだ。ラジオ体操仲間のNさんは、私の散歩コースである『調整池』をテー…

2020 ヒヨドリ親子の“食事”光景 厳粛な生への営み 

鵯(ヒヨドリ)の大きな口に鳴きにけり 星野立子 俳句では秋の季語である鵯(ヒヨドリ)。夏の庭でも時折見かける。そのくちばしは大きくて目に付く。それを象徴する場面を見た。親鳥が雛に赤い実を食べさせているところだった。慌ててカメラを取り出し、写…

1996 月山で「幸」探し 残雪の絶景の中で

山形の友人が2年ぶりに月山を縦走した、と知らせてきた。残雪が美しい月山の数々の写真を見て、私はカール・プッセ(1872~1918)の「山のあなた」という詩を思い浮かべた。昨年から続くコロナ禍によって社会全体が打ち沈み、爽快感を味わうことが…

1992 心和む風景 畑おじいさんからのあいさつ

散歩をしていたら、写真のような掲示をしている家があった。このブログで以前、玄関脇に1坪ほどの田んぼを作り、稲を育てている家があることを書いたことがある。(下段の関連ブログ参照)この掲示は、この家の主が書いたようで、最後には「畑のおじいさん」…

1990 雲海のような絶景 朝霧の散歩道

今朝の散歩途中、「雲海」のような現象が目の前に広がっていた。正しくは雲海ではない。散歩コースの調整池から発した霧が周辺を覆い、高原に見られる雲海と似た風景を演出したのだ。コロナ禍で気持ちが沈む私たちに自然が贈ってくれた美しい風景は、気温の…

1989 1本の花の物語 幻の「海棠の歌」

庭に1本だけある海棠の花が満開になった。昨年よりかなり早い。歳時記の本の説明には「4~5月に薄紅色の花をつけた花柄が長くうつむきかげんになるのをしばしば美女にたとえる」(角川学芸出版『俳句歳時記』)とあり、庭の一角が華やかに見える。題名や…

1988 春を待つ思いは世界共通 浮かれることはできない日々

3月も中旬になった。私が住んでいる千葉市周辺ではミモザや水仙、レンギョウといった黄色い花だけでなく、早咲きの八重桜(陽光桜)も咲き出した。ソメイヨシノの開花はまだだが、数日中には開花の発表があるかもしれないほど暖かな日和が続いている。だが…

1963 空飛ぶ宝石との出会い 戻ってきたカワセミ

新型コロナ感染症の第3波によって、首都圏で2回目の緊急事態宣言が出されることになった。コロナ禍によって、昨年から続いている閉塞感は強まるばかりだ。そんな時はぶらぶらと散歩をする。近くの遊歩道を歩いていたら、道のわきを流れる小川の岩の上に青…

1949 時無草~行く秋に

「時無草」(ときなしぐさ)という名前の草はない。詩人の室生犀星と友人の萩原朔太郎は、詩の中にこの言葉を使っている。季節外れに芽吹いた草のことを犀星がイメージして詩にしたといわれ、朔太郎も使った、造語といえる。つい先日、散歩の途中、枯れた雑…