小径を行く 

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。(筆者=石井克則・遊歩)

季節

2868 虹への祈りの季節 人生の哀歓描く未明の童話

西の空に立った9月の二重の虹 今日9月7日は旧暦二十四節気の「白露」に当たる。大気が冷えてきて露が白く見えるという意味で、夏から秋へと季節が移る頃のことを指す。とはいえ昨今は夏が長く、秋の到来はいつになるのかと、ため息が出る。そんな朝、ラジ…

2865 葛の花が咲く9月 想像する涼風吹く山道

路傍の葛の花 秋田にて 私が毎日散歩をしている調整池周辺には、さまざまな植物が生育している。中でも一番旺盛な繁殖力を示しているのは、葛とセイタカアワダチソウの2つといっていいだろう。他の植物を押しのけるように増え続ける姿に好感を持つ人はあま…

2863 「オミナエシの歌」 晩夏絶唱

8月も今日を含めて残り2日。季節の上では初秋であり、秋の七草に親しむ時期だ。「ハギ・キキョウ・クズ・フジバカマ・オミナエシ・オバナ(ススキ)・ナデシコ」のことだが、このうちフジバカマは私の家の周辺でほとんど見かけない。オミナエシ(女郎花)も…

2862  山頭火の「孤寒」と「業」 放浪の俳人の生き方

近所で見つけたオミナエシ(女郎花)の群生 疲れた時や気持ちが落ち込んだ時、私は1冊の本を取り出す。放浪の自由律句の俳人、種田山頭火(1882—1940)の「山頭火句集」(ちくま文庫)だ。この本の頁をパラパラとめくり、そこにある句や随筆に目を向ける。…

2861 ラスト掲載の季語は「吾亦紅」 待ち遠しい秋の到来

オミナエシ(女郎花)の中にひっそりと咲く吾亦紅 俳句歳時記(角川学芸出版)の季語索引の最後に掲載されているのが「吾亦紅」(われもこう)だ。秋の季語で、山野で見ることができるバラ科の多年草のことだ。「高原の風に吹かれているさまなどは少し淋しげ…

2856 黙って見る夕陽 夏の平凡な一日

「夕陽を眺めるのに不要なものは一つだけ、むだなことばだ」~ 長田弘の「夕陽を見にゆく」(詩集『人生の特別な一瞬』晶文社)という詩の中に、こんな一節がある。夕陽を見るのに言葉は要らない、ただ黙っているだけでいいというのだ。たしかにそうだ。昨日…

2855 マロニエの下の子どもたち 処暑前の朝に

マロニエが朝日に輝いている 毎日「暑い、暑い」と言いながら、生活している。暦の上ではとうに「立秋」は過ぎ、23日が「処暑」なのだ。暑さが少しやわらぎ、朝の風や夜の虫の声に、秋の気配が漂うころ、といわれている。猛暑に耐えながら、近づく秋の足音…

2852 猛暑に耐える2つの花 強い生命力詠う句

満開のサルスベリの花 私の住む地域で樹木に咲いている花といえば、サルスベリとキョウチクトウだ。2つの花はこの猛暑に耐えて、咲き続けている。私たち人間はこの暑さに負けてしまう。ところが、自然界は違う。それが2つの花であり、その生命力の強さを詠…

2851 「アンの青春」とあの歌 夕暮れに思う詩(うた)

夕暮れの時、あなたは何を思いますか今日一日に出会った人のこと、言葉もなく別れた人のことそれとも昼においしいものを食べたこと虚しいことより楽しいことが多かったでしょうか

2839 近づいているのか「秋隣」 広島・長崎にも露草が

ひっそりと咲くツユクサ 昔から「二八(にっぱち)」という言葉がある。2月と8月は商売の売り上げが落ちる月ということが語源だそうだ。2月は年末年始の反動で需要が落ち込み、8月は暑さとお盆休みで物が売れない、ということだ。かつてこの二八現象は、…

2832 消えた?夏の風物詩 風鈴よどこに

葉がバナナに似ているプルメリアの花 風鈴の音を点ぜし軒端かな 高浜虚子 軒先から風鈴の音が聞こえる、そんな風情を感じることが最近はあまりない。猛暑が続き、風も弱く、私の部屋はエアコンのために閉め切っており、折角の風鈴も用がない。江戸時代風鈴売…

2829 猛暑が普通の夏になるのか 涼しい顔をしてみたい

涼し気な一輪の朝顔 猛暑が続く。涼を求め、冷たいものを口にする日々。できれば「涼しい顔」で人と接したい。だが、そうは行かず、汗を流して暑苦しい顔で「今日も暑いですね」とあいさつしてしまう。ほとんどの人が私と同様に、暑さに耐えているのだろう。…

2824 猛暑の中の涼風が 日暮れに聞くヒグラシの歌

ヒグラシが鳴いている調整池の森 夕方、近所の調整池を回る道を散歩していますと、近くの森から「カナカナカナ」というヒグラシの鳴き声が聞こえてきました。その声は、私の耳には哀調を帯びているように入って来たのです。同じセミでもクマゼミのけたたまし…

2821 猛暑の中の子規の会 凝縮した言葉を探る格闘

梅雨明けの空はどこまでも青い 気象庁は今日18日、「関東甲信と北陸、東北南部が梅雨明けしたとみられる」と発表した。ここ数日、ぐずついた天気が続いたとはいえ、暑い日が多く、気分はとうに梅雨明けだった。明日は土用の丑の日。偶然、参加した会合でう…

2813 花と香りに力をもらおう 7月のユリの詩(うた)

(ヤブカンゾウの中に一輪のヤマユリ) 自然公園の水辺朱色の花のヤブカンゾウの群生その中に一輪の白い花ヤマユリが咲いていただれかが植えたのか近くの斜面にはこのユリが生えている

2806 明日は「半夏生」の日 育たない自然公園のヤマユリ

棒状の穂が半夏生の花 6月も今日で終わり。明日7月1日は七十二候の「半夏生」(はんげしょう)の日だ。歳時記によると、この日はサトイモ科の「半夏」(はんげ=カラスビシャクの漢名)が生え始めるころで、昔は田植えを終えた農家が休みを取る日だったそ…

2805 もうクマゼミの季節 騒音でも元気の源に

朝、散歩していたら、クマゼミの鳴き声が聞こえてきた。まだ6月なのに、気が早いセミだ。とはいえ、既に沖縄、九州から近畿地方まで梅雨が明け、関東地方もエアコンのお世話になる日が続いているのだから、クマゼミが鳴くのも仕方がないことかもしれない。…

2794 平和を願い眠る木 ネムノキの詩(うた)

ネムノキは不思議な木です気温の微妙な変化を感じる植物なのでしょうか2度咲きは珍しくありません去年は何と3度咲きを見ました

2786 蘇る青春時代の別れ 『白い花の咲く頃』を「読む」

白い花のアジサイ 昔、何気なく聴き、あるいは口ずさんだ歌にはいい歌詞のものが少なくない。例えば、『日本の歌300』(講談社+α文庫)を開いてみると、『白い花の咲く頃』(作詞:寺尾智沙、作曲:田村しげる、唄:岡本敦郎)という歌があった。その歌…

2754 「特許許可局」の季節 初夏を告げるホトトギス

朝、散歩をしていると、「チョットコイ、チョットコイ」と鳥の鳴き声がする。4月はウグイスとともに、この鳴き声がよく聞こえた。コジュケイという野鳥だ。今日から5月。今度は「トッキョキョカキョク」という鳴き声の野鳥の出番になってくる。ホトトギス…

2672 追憶の冬の朝 最初の記憶は何歳?

昨日(15日)は満月で、今日の早朝、西の空には大きな月(残月)が輝いていました。寒さが増した最近、早朝の散歩はやめているのですが、今朝だけは特別に月を見ようと近所の調整池まで歩きました。そこには写真のような、美しい風景が広がっていたのです…

2670 月は見ている 「金」にまみれた下界照らす

「そうです、いままでこの月の体験しなかったことがあるでしょうか!」。アンデルセンの『絵のない絵本』(矢崎源九郎約・新潮文庫)は、月が絵描き相手に話をするという形で、33の短い物語が展開されている。その中の「第8話」に冒頭の一節が含まれてい…

2668 黄金時間を送る12月 散歩して落ち着こう

「12月は人生の黄金時間」(『瑞穂の国うた』新潮文庫)と書いたのは、詩人の大岡信だ。今月は1年の締めくくりの月だから、私のように「毎日が日曜日」の生活を送っている者でも、世間の動きを見ていると何かと気忙しい思いになってしまう。そんな時には…

2652 秋色に輝くけやき 冬構えの詩(うた)

2階の部屋の窓の外 けやきの街路樹が見える四季折々の「色」に変化する大きな木々暦の上では初冬 現実の自然は晩秋 けやきの葉が黄や赤に色づき 陽光に輝き出した朝その下を小学生たちが 三々五々歩いている ⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄⬄ 春 芽吹きの時夏 すっか…

2647 控え目な秋色の風景 「あちらは何をする人ぞ」

「喨々(りょうりょう)」という言葉がある。最近ほとんど見かけないが、高村光太郎の『道程』の「秋の祈」という詩の中に、この言葉が使われている。「 音が明るく澄んで鳴り響くさま」を言い、光太郎は秋という季節にふさわしい言葉として採用したのだろう…

2636 もう一度行きたい場所は 北と南の美しき廃校

~更け行く秋の夜 旅の空の~ラジオから流れるメロディーを聴きながら、この歌の歌詞を自然に口ずさんでいる。アメリカの作曲家オードウェイの原曲(家と母を夢みて)に犬童球渓が作詞した名曲(『旅愁』)だ。少子高齢化現象が進み、日本各地で住む人がなく…

2629 小さい秋を見つけた キンモクセイと名も知らぬ花

(ススキに混じって群生するオトコエシ) (山形から届いた新米・つや姫の稲束) 朝起きて、新聞を取りに行くと、キンモクセイの香りが漂っている。そうか、今年も秋がやって来たと思う。昨日は9月の暑さが戻ったような一日だったが、小さな秋は少しずつ近…

2619 秋思には早いが…… 「雲・葛・ロダン・観世音」の朝

こう暑いと、爽やかさを求めたくなる。9月15日だ。当然、秋を連想する。朝の散歩で空を見上げると、巻積雲(いわし雲)が広がっている。ラジオ体操仲間に葛の花が咲いたことを教えられ、見事というべき秋の七草の一つを見ることができた。秋は読書の季節…

2615 詩人たちの「朝の歌」  白露過ぎても暑い日々に

朝が嫌いな人はいるだろうか。若い人は、なかなか目が覚めず、冬は寒い中を起きるのは辛い。とはいえ、新しい朝を迎える気持ちは、清々しい。だから、詩人も朝をテーマに詩を書いている。二十四節気の「白露」は昨7日だった。草や木に白い露がつくようにな…

2608 「二百十日」と台風10号 漱石・賢治・壷井栄も注目の雑節

今年の「二百十日」は、8月31日、土曜日だ。立春から210日目が暦の中の「雑節」(末尾に注)である二百十日で、台風が来襲する厄日といわれる。折から、奄美地方に接近している台風10号が日本列島を縦断する恐れがあるという予報が出ている。最近は…