小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

2042 五輪選手のメダルでの貢献 スポーツと現代社会

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  東京五輪の陸上・女子やり投げで銀メダルを獲得したポーランドのマリア・アンドレイチェク選手が、重病の男の子の手術費用にと、メダルをオークションに出品した話題を外電で知った。メダルは1900万円で落札され、さらに多くの寄付が集まっているという。日本では河村たかし名古屋市長が表敬訪問した女子ソフトボール選手の金メダルをかじって大きな騒ぎになったが、同じ五輪のメダル、2つのニュースを見る限り金より銀の方が重いと私は思う。

 外電やテレビ報道をまとめると、アンドレイチェク選手の銀メダルのオークション出品は次のような経緯だ。

  同選手は、日本から帰国後、銀でダルをオークションに出品した。重度の心臓病を持つ生後8カ月の男の子の手術費用を得るためだ。男の子は総肺静脈還流異常症(TAPVC)を患っていて米国で手術する必要があり、支援団体を通じてこのことを知った同選手は、メダルで費用の一部を提供しようと考えた。オークションに出品されたメダルは約1900万円で落札され、チャリティーサイトでの寄付分と合わせて手術費用4200万円の9割ほどが集まっている。

  メダルを落札したのは、ポーランドのコンビニ大手「ジャプニカ社」で、同選手の行為に共鳴した同社は、メダルを同選手に返却した。同選手は2018年に骨肉腫を発症、闘病生活を送った。それを乗り越えて銀メダルを獲得した。今回の慈善活動について「メダルの本当の価値は私の心の中にある。メダルは単なる物体だが、それが誰かの大きな助けになる。クローゼットで埃をかぶっている代わりに誰かの命を救うことができるのです」と、話している。

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 今回の五輪・パラリンピックのメダル(約5千個)のすべての素材(金32キロ、銀3500キロ、銅2200キロ)は、回収した携帯電話や小型家電から確保したもので、大会組織委が不要になった物の提供を呼びかけ、自治体などを通じて回収したのだ。河村市長が噛んだメダルは新しい物に交換されるそうだが、私はアンドレイチェク選手にもう一つ金メダルをあげたいくらいだ。これを美談というのは簡単だ。だが、それを超えたヒューマニズムを私は感じるのだ。今回の東京五輪はマイナスイメージが多いが、この話題はプラスイメージだ。

 メダルの譲渡をめぐっては、東京五輪陸上女子のベラルーシ代表クリスツィナ・ツィマノウスカヤ選手も2019年の欧州陸上競技大会で獲得した銀メダルをオークションに出品したというニュースがあった。同選手は、このブログでも書いた通り東京五輪後にポーランドに亡命しており、収益金は政治的な困難に直面しているアスリートの支援に充てられるそうだ。入札は5千ドルからスタート、日本時間の9日午後9時時点で2万ドルを超えている(オークションは18日まで)とのことだ。

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 コロナ禍に揺れる現代、スポーツ選手にとっても社会と切り離して自分の競技に没頭するだけでは済まない時代になっている。それをアンドレイチェク選手とツィマノウスカヤ選手は身をもって示している。