小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

自然

2107 人は何で生きるか 天才少女の挫折とトルストイ

ロシアの文豪、レフ・トルストイの短編『人は何で生きるか』(中村白葉訳・新潮社『世界名作選』は、民話を通じて、人の生き方を描いたものだ。ドーピング疑惑の中で出場し、暫定4位に終わった女子フィギュアのロシア、カミラ・ワリエワ(15)の騒ぎを見…

2100 朝もやが描き出したモノトーンの世界 自然の変化と付き合う

「夜霧」や「朝靄」は、情緒的な響きがあるが、日常の会話で「霧」と「靄」(もや)を使い分ける人はほとんどいないだろう。物の本を調べると、気象用語でははっきり区分けする基準があるのだという。この基準に当てはめると、今朝、わが家の周辺で発生した…

2097 「マイクロムーン」を見る 地球から最も遠い満月の朝

(小学校の赤と緑のシンボルタワーの間に浮かぶ満月) 今朝の夜明け前、太平洋側の各地で西の空に輝く満月を見た人は多いのではないでしょうか。橙色の小ぶりな月。それはことし一番小さい満月で、「マイクロムーン」と呼ぶそうです。初めて聞く言葉です。控…

2096 朝焼け広がる厳寒の空 阪神淡路大震災から27年

今朝は朝焼けが見えた。「日の出の頃、東の空が薄紅色や燃えるような色に染まることがある。これは大気の状態によって太陽光が散乱する現象であって夏にのみ起こるわけではないが、特に夏の朝焼けは荘厳であり、夏の季語とされる。天気の下り坂の前兆といわ…

2095 遥かな空に描かれた文字は 武満徹『翼』を聴く

現代音楽の作曲家、武満徹(1930~1996)は、自身が作詞したポピュラー曲も少なくない。中でもよく知られているのは『翼』と『小さな空』だ。元同僚は、今年の年賀状にこの『翼』のことを書いてきた。この曲は「遥かな空に描く『自由』という字を」…

2092 4年ぶりの天からの便り 通学路に広がる樹氷

雪国に住む人たちにとって雪は珍しくないし、降り方によっては災害を引き起こす厄介な存在だ。かつて札幌での生活を体験し、雪は鬱陶しいと思うことが多かった。だが、雪がほとんど降らない地域に住んでいると、雪国の生活が懐かしくなったりする。昨日、南…

2086 混乱期を生きる母と娘 かくたえいこ『さち子のゆびきりげんまん』

昭和から平成を経て令和になり、昭和は遠くなる一方だ。日中戦争、太平洋戦争という戦争の時代だった昭和。そして、敗戦。70数年前の人々はどんな生活を送っていたのだろう。かくたえいこ(角田栄子)さんの児童向けの本『さち子のゆびきりげんまん』(文…

2084 蕭条とした冬景色 さ霧晴れても

調整池を回る遊歩道を散歩していると、このところ毎朝のように調整池から霧が立っている。放射冷却によって起きる現象だ。長い年月見慣れているとはいえ風情があって、見飽きない。対面からやってきた女性が『冬景色』の歌を口ずさみながら歩いていく。女性…

2081 寒気の中でも凛として咲く 香り優しき水仙の花

(庭先に咲いた水仙) 庭先のスイセンの花が咲き始めた。この花は「水仙」(このブログでは一部を除き、以降「水仙」)と漢字で書きます)と書いたのを音読したものだそうだ。昔は「雪中花」(せっちゅうか)と呼んだこともあったという。文字通り雪の中でも…

2080 秋から冬への風景 点描・美しい自然の移ろい

(千葉県鴨川市の四方木不動の滝・雄滝) 今年も残すところ、36日になった。カレンダーを見たら2021年という西暦のみのものがほとんどで、西暦とともに「令和3年」と併記されたのは1つだけだった。現行のグレゴリオ暦になって148年(日本では18…

2073 ビーナスベルトに酔う 自然のアートに包まれて

毎朝、6時前に散歩に出ます。いつも最初に歩くのは調整池を回る遊歩道ですが、今朝歩いていて西の空を見上げますと、下の方が藍色でその上の部分がピンクに染まっていました。なかなか幻想的0で美しい空の色でした。日の出前のことです。これはビーナスベル…

2072 シリウスとの対話 かけがえのない犬たちへ

「○○よく頑張ったね。いい子だね」。夕方、散歩をしていたら、小型犬を連れた若い女性とすれ違った。しばらくして、こんな声が聞こえた。だいぶ遠くなってからあの犬がしきりに吠えている。私とすれ違った犬は人が近づくとほえてしまうのだ、でもそれを我慢…

2071 秋から冬への移行 時雨の季節感

ものの本(ある事柄に関することやその方面のことについて書かれた本)によりますと、「時雨」の季節は、『万葉集』(7世紀後半から8世紀後半にかけて編纂された、現存するわが国最古の歌集)のころは秋と捉えられていたそうです。その後、都が奈良から京…

2070 ある晩秋の風景 日だまりを求めて

さうか これが秋なのか だれもゐない寺の庭に 銀杏の葉は散ってゐる (草野天平「秋」・定本草野天平全詩集より。天平は詩人草野心平の弟) 晩秋。銀杏の葉も黄色く色づき、散り始めている。私のふるさとの浄土真宗の寺にも銀杏の木があった。秋になると、黄…

2069 ありふれた日常の中で ランドセルの少年と履き慣れた靴

庭の外に遊歩道があって、1キロに及ぶけやき並木が続いている。春から冬までの季節、けやきは様々な表情を見せてくれる。葉を落とした冬の姿も風情がある。秋たけなわ。例年なら美しい紅葉となるのだが、この秋は様子がややおかしい。葉が色づく前に散り始め…

2063 群馬は魅力がいっぱい ランキング下位でも

時々地図を取り出して、見ることがあります。日本地図だったり、世界地図だったり、その時の気分によって変わりますが、地図を見ることは楽しみの一つです。先日「都道府県魅力度ランキング」が発表になり、茨城県が最下位の47位、群馬県が下から4番目の…

2060 小さな秋を見つけた 2度咲きの金木犀と「はえぬき」の新米

「秋たけなわ」というには少し早いようですが、秋本番はそこまで来ています。秋の訪れを知らせてくれる樹木として金木犀があります。あの独特の香りに接すると、私は秋を感じます。今年、庭の金木犀が咲いたのは9月10日でした。大体1週間で花は終わります…

2059 いい匂いの山の朝風 晩秋の月山風景

詩人で彫刻家の高村光太郎は、戦後、岩手で山小屋生活をした際「日本はすつかり変わりました。あなたの身ぶるひする程いやがつてゐた あの傍若無人のがさつな階級が とにかく存在しないことになりました。(以下略)」(詩集『典型』の「炉辺 報告智恵子に」…

2056 郷愁誘う紫色の通草(あけび) 里山を駆け回った遠い日

秋の味覚はいろいろある。第一に挙げるとすれば新米か。これ以外にも枚挙に尽きない。「シイタケ、マイタケ、栗、アケビ、ユズ」。埼玉秩父産の5つの旬の食べ物が知人から届いた。写真で見ても、色が鮮やかで食欲がそそられる。食欲が増す季節になりつつあ…

2055 相次ぐマスク着用めぐるトラブル 文明人の勇気とは

マスクをめぐるトラブルが内外で相次いでいる。中でもドイツの殺人事件は、多岐にわたるコロナ禍の負の歴史でも特殊な位置を占めるだろう。いつの時代でも、決まり事を守ることができない人はいる。極論すれば、国が決めたことを絶対に守らせようとするのは…

2054 ここが私の故郷…… 山はなくとも

石川啄木(1886~1912)ほど、故郷を思いながら人生を送った人物は少ないのではないか。それは啄木の第一歌集『一握の砂』(いちあくのすな)を読むと、実感する。この歌集には「ふるさと」という言葉を使った歌が多いのだ。その一つに「ふるさとの…

2053 散歩道に秋の香り「木犀の匂の中ですれ違ふ」

金木星の花が咲き出した。小さな橙色の花はあまり見えない。しかし、あの独特の香りで季節の花の開花を知った。備忘録によると今から6年前の2015年は9月23日に「金木犀開花。例年よりかなり早い」とあるから、今年は夏から秋への移ろいというバトン…

2052 ノンちゃんの記 甘えん坊のhanaの妹もあの星に

わが家で昼の間預かっていた雌のミニチュアダックスフンド「ノンちゃん・のんの」ことノアが息を引き取ったのは、6月15日でした。15年の生涯でした。それから2カ月後の8月22日にノンちゃんの遺骨を、金木犀の根元に近い庭の一隅に埋葬しました。ここ…

2043 今年も二重の虹 想像の旅でイグアス伝説味わう

コロナ感染が爆発状態で増え続けています。こうした現実から逃れることはできませんので、鬱陶しい思いで毎日を送っているのは私だけではないでしょう。早朝の散歩は、少しだけそんな気分を晴らしてくれます。しかも、今朝は北西の空に二重の虹が上がってい…

2034「you might or more head」 これ、どんな意味?

今年の「大暑」は先週木曜日(22日)でした。一年で一番暑い日々が続いています。この猛暑の中で東京五輪の屋外競技をやっている選手たちは、本当に気の毒です。私は、このところ散歩は涼しい早朝だけにしているのですが、今朝散歩コースから見た風景は透…

2030 濃霧の中に浮かぶ白虹 人々励ます自然の演出

私の散歩コース、調整池を回る遊歩道は、濃霧に包まれていた。今朝6時前。途中で引き返す人もいる。この道はよく知っているから、霧の中、歩を進めると南西の方角の空に、曲線の模様が浮かんできた。灰色の模様は次第にアーチ状になっていく。虹だった。こ…

2026 山百合の香が漂う道 マスク外して一人歩き

山の百合山の子山の香とおもふ 飯田龍太 近所まで出かけた帰りに、人気のない道を歩いていると、山百合の香りが漂ってきた。マスクを外して、その懐かしく甘い香りを深く吸い込んだ。コロナ禍の中で一人歩きのぜいたくな気分を味わった。誰かがいたらマスク…

2023 季節の色を描く 緑の『調整池』風景

四季折々、季節にはさまざまな色がある。どんな色が好きかは、人によって異なる。とはいえ、緑が嫌いな人は少ないのではないか。梅雨が続いている中で、緑がひときわ美しく感じるこのごろだ。ラジオ体操仲間のNさんは、私の散歩コースである『調整池』をテー…

2022 学校へ行く道 黄金色に輝く麦秋の風景

一人の少女が泣きながら登校している。 背負っているランドセル。 黄色い交通安全のカバーが付いているから、小学校1年生だ。 なぜ、泣いているのだろう。 小学校の方から歩いてきた、赤ちゃんを抱いた若い女性が聞いている。「どうしたの。困ったことがある…

2020 ヒヨドリ親子の“食事”光景 厳粛な生への営み 

鵯(ヒヨドリ)の大きな口に鳴きにけり 星野立子 俳句では秋の季語である鵯(ヒヨドリ)。夏の庭でも時折見かける。そのくちばしは大きくて目に付く。それを象徴する場面を見た。親鳥が雛に赤い実を食べさせているところだった。慌ててカメラを取り出し、写…