小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

2020-11-01から1ヶ月間の記事一覧

1953 小説を読む楽しみ 開高健の眼力

「小説は無益であるからこそ、貴重である。何もかもが、有効であり、有益であったならば、この世はもう空中分解してしまう」。ベトナム戦争取材記や釣り紀行で知られる作家の開高健(1930~89)の小説に対する見方((大阪市での教職員対象の講演録・2…

1952 自分の言葉・色で語りかける絵画 晩鐘からマスクまで

「詩人が何にもましてひどく苦しめられている欠陥物で、この世の屑ともいうべきものは、言葉である。ときおり詩人は、言葉を――というよりはむしろ、この粗末な道具を用いて仕事をするように生まれついた自分自身を本当に憎み、非難し、呪うことがある。羨望…

1951 男たちはどんな顔? 険しく卑しくもの欲しげでずる賢くなっていないか

「男たちはいい顔をしているだろうか。女の目から見てどう映るか」。男にとって耳の痛いことを書いた文章を読んだ。では日本の首相、アメリカの大統領は、いい顔をしているだろうか。考え込まざるを得ないのは、私だけではないはずだ。逆に、ニュージーラン…

1950 散歩の途次にて 見上げる空に不安と希望が

「私の生涯は極めて簡単なものであった。その前半は黒板を前にして坐した。その後半は黒板を後にして立った。黒板に向って一回転をなしたといえば、それで私の伝記は尽きるのである」。哲学者、西田幾多郎(『続思索と体験・続思索と体験以後』は、自身の半…

1949 時無草~行く秋に

「時無草」(ときなしぐさ)という名前の草はない。詩人の室生犀星と友人の萩原朔太郎は、詩の中にこの言葉を使っている。季節外れに芽吹いた草のことを犀星がイメージして詩にしたといわれ、朔太郎も使った、造語といえる。つい先日、散歩の途中、枯れた雑…

1948 世界が疫癘に病みたり デフォーが伝えるペスト・パニック

ロンドンが疫癘(えきれい)に病みたり、 時に1665年、 鬼籍に入る者(注・死者のこと)の数(かず)10万、 されど、われ生きながらえてあり。 H.F. ダニエル・デフォー著/平井正穂訳『ペスト』(中公文庫)は、この短い詩で終わっている。 「疫癘」は…

1947 政治は国民を指導し取り締まるもの? 辞書作りは盤根錯節

時々、辞書の頁をめくる。結構面白いことが載っている。最近、アメリカの大統領選挙、日本の学術会議委員任免拒否問題が連日新聞に載っている。いずれもが政治ニュースだ。そこで、「政治」について辞書を引いてみる。中にはユニークな説明もあり、考えさせ…

1946 朝焼けに向かう風見鶏 耳袋を外して音楽を聴く

今朝は「朝焼け」が見えました。これは日の出間際の東の空が赤く染まる現象で、夏に多いため俳句では夏の季語になっています。近所の屋根の上の風見鶏が、この空に向かって何かを話しかけているような光景が目の前に広がっていました。少し足を延すと公園の…

1945 トランプ氏は「魚を与える」人? 出典は何か

「トランプのやっていることを見ていると、『魚を与えるのではなく、魚の捕り方を教えよ』ということわざを思い出したよ」。テレビで米大統領選の投開票直前の特集番組で、白人男性がこんなふうに、トランプ大統領の4年間の政治について語っていた。含蓄の…