小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

2099 強敵と戦う武器は 小学生にも大きな影響のオミクロン株

         

            (満開になった遊歩道の紅梅)

「疾病というものは侮り難い強敵なのだ。恐るべき武器をもっているのだ。われわれがどれほど強固な武装をしたところで、なかなか歯がたつものではない。われわれがどれほど防衛の態勢を整えたところで、その攻撃にかかっては耐えうるものでないのである」

 これは、1722年にイギリスで出版されたダニエル・デフォー作『ペスト』(平井正穂訳・中公文庫)という作品に書かれている一節だ。「疾病」には「ペスト」というルビが振られているが、今世界中で猛威を振るっている「コロナ」と置き換えることもできる。300年の長い時代を経ても感染症の脅威は変わらない。

 作品の終盤では、ペストが終息した後のイギリスの実態についても触れている。疾病がやんだのだから、いがみ合いやののしり合うことがきれいにやんだらよかったのだが、そうはならなかったというのだ。「疾病流行前、わが国の平和を乱していた元凶こそは、まさしくこのはてしなきいがみ合いの根性であった」とデフォーは書いている。

 コロナ禍は現在、オミクロン株によって世界的な大流行が続いている。既に560万人が死亡しているのだから、歴史に残る恐るべき疾病といえる。新型コロナワクチン接種パスポートの義務化をめぐってフランス、ドイツ、ベルギー、チェコ、スイス、オーストリアなどヨーロッパ諸国で反対する市民が抗議のデモをしているニュースが流れている。各国政府はコロナの防疫措置としてワクチン接種を推進しようとしている。これに対し「自由への侵害」と受け止める市民が少なくないのだろう。ワクチンを打つべきか否かをめぐって、わが国でも議論が続いている。「接種は強制ではない」がわが国の基本で、ヨーロッパのような接種パスポート義務化が提案されることはないだろうが、決して他人事とは思えない。

 近所に小学校がある。全校児童数は約670人だ。このうち昨日は93人が休んだそうだ。今朝、登校する児童の姿はまばらに見えたから、休む子どもはもっと増えるだろう。児童自身が陽性になったり、家族が濃厚接触者として会社を休んだり、形態は様々だが、この小学校は1学年当たり3学級(1学級は30数人)が基本だから、1つの学年が休んだ計算になる。登校しても授業は午前11時までというから、オミクロン株の影響は大きい。一昨年の全国臨時休校という悪夢が蘇ることがないことを願うばかりだ。

『ペスト』には、「私としては、あの過ぎさった日の惨禍を忘れることなく、互いに寛容と親切をこととして、疾病終息後のわれわれの行動を律すべきであった、と何としても思わざるをえないのである」という作者自身の思いも書かれている。この指摘は現代に生きる私たちにも通じるものであり、心すべきことではないだろうか。

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