小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

俳句

2096 朝焼け広がる厳寒の空 阪神淡路大震災から27年

今朝は朝焼けが見えた。「日の出の頃、東の空が薄紅色や燃えるような色に染まることがある。これは大気の状態によって太陽光が散乱する現象であって夏にのみ起こるわけではないが、特に夏の朝焼けは荘厳であり、夏の季語とされる。天気の下り坂の前兆といわ…

2094 「思索」の信越の旅 紀行文を読む楽しみ

英国人女性、イザベラ・バードは文明開化期といわれた1878(明治11)年横浜に上陸、6月から9月にかけて北日本を旅し、さらに10月から関西を歩いた。この記録が『日本紀行』あるいは『日本奥地紀行』として今も読み継がれ、紀行文の名著になってい…

2083 人間を笑う年の暮 世界に広がる犯罪地図

12月もきょうで10日。残すところことしも21日になった。年の暮である。昨年から続くコロナ禍。南アフリカで見つかった新変異株オミクロンが世界的に拡大し、世界中で新規の感染者が増え続けている。一方の日本。第5波が落ち着き、いまのところ感染者…

2081 寒気の中でも凛として咲く 香り優しき水仙の花

(庭先に咲いた水仙) 庭先のスイセンの花が咲き始めた。この花は「水仙」(このブログでは一部を除き、以降「水仙」)と漢字で書きます)と書いたのを音読したものだそうだ。昔は「雪中花」(せっちゅうか)と呼んだこともあったという。文字通り雪の中でも…

2072 シリウスとの対話 かけがえのない犬たちへ

「○○よく頑張ったね。いい子だね」。夕方、散歩をしていたら、小型犬を連れた若い女性とすれ違った。しばらくして、こんな声が聞こえた。だいぶ遠くなってからあの犬がしきりに吠えている。私とすれ違った犬は人が近づくとほえてしまうのだ、でもそれを我慢…

2071 秋から冬への移行 時雨の季節感

ものの本(ある事柄に関することやその方面のことについて書かれた本)によりますと、「時雨」の季節は、『万葉集』(7世紀後半から8世紀後半にかけて編纂された、現存するわが国最古の歌集)のころは秋と捉えられていたそうです。その後、都が奈良から京…

2070 ある晩秋の風景 日だまりを求めて

さうか これが秋なのか だれもゐない寺の庭に 銀杏の葉は散ってゐる (草野天平「秋」・定本草野天平全詩集より。天平は詩人草野心平の弟) 晩秋。銀杏の葉も黄色く色づき、散り始めている。私のふるさとの浄土真宗の寺にも銀杏の木があった。秋になると、黄…

2057 白鵬引退・一時代の終焉 「負けずに老いる角力かな」

大相撲の横綱白鵬が引退することになった。横綱在位14年84場所、優勝回数45回という大記録を破る力士が今後出てくるとは思えないから、白鵬は歴史に残る大横綱であることは言うまでもない。一方で、晩年の激しい取り口や休場の多さ、その言動に批判が…

2056 郷愁誘う紫色の通草(あけび) 里山を駆け回った遠い日

秋の味覚はいろいろある。第一に挙げるとすれば新米か。これ以外にも枚挙に尽きない。「シイタケ、マイタケ、栗、アケビ、ユズ」。埼玉秩父産の5つの旬の食べ物が知人から届いた。写真で見ても、色が鮮やかで食欲がそそられる。食欲が増す季節になりつつあ…

2053 散歩道に秋の香り「木犀の匂の中ですれ違ふ」

金木星の花が咲き出した。小さな橙色の花はあまり見えない。しかし、あの独特の香りで季節の花の開花を知った。備忘録によると今から6年前の2015年は9月23日に「金木犀開花。例年よりかなり早い」とあるから、今年は夏から秋への移ろいというバトン…

2045「三つのベースに人満ちて……」 野球の華に挑み続ける大谷

「本塁打(ホームラン)は、野球の華」というそうだ。9回裏、相手チームに3点の差で負けていても、走者満塁で次の打者がホームランを打てば、劇的な逆転勝ちとなる。一発逆転で負けから勝ちにひっくり返すのだから、本塁打は大きな魅力がある。それをメジャ…

2041 2000キロの白骨街道逃避行 丸山豊『月白の道』

不明して、最近まで私は丸山豊(1915~1989)という人を知らなかった。医師・詩人で、戦争散文集という副題が付いた『月白(つきしろ)の道』(中公文庫)の作者である。これまで大岡昇平の『レイテ戦記』や江崎誠致の『ルソンの谷間』、伊藤桂一『…

2038  ヒグラシ鳴く五輪最終日 子規の病床テレビ観戦を想像

夕方、調整池の周囲をめぐる遊歩道を散歩していたら「カナカナカナ……」とヒグラシが鳴いているのが聞こえた。何となく物寂しさを覚える哀調ある鳴き声だ。子どものころは、このセミが鳴くと夏休みが終わりに近かった。8月20日過ぎには2学期が始まったか…

2030 濃霧の中に浮かぶ白虹 人々励ます自然の演出

私の散歩コース、調整池を回る遊歩道は、濃霧に包まれていた。今朝6時前。途中で引き返す人もいる。この道はよく知っているから、霧の中、歩を進めると南西の方角の空に、曲線の模様が浮かんできた。灰色の模様は次第にアーチ状になっていく。虹だった。こ…

2026 山百合の香が漂う道 マスク外して一人歩き

山の百合山の子山の香とおもふ 飯田龍太 近所まで出かけた帰りに、人気のない道を歩いていると、山百合の香りが漂ってきた。マスクを外して、その懐かしく甘い香りを深く吸い込んだ。コロナ禍の中で一人歩きのぜいたくな気分を味わった。誰かがいたらマスク…

2020 ヒヨドリ親子の“食事”光景 厳粛な生への営み 

鵯(ヒヨドリ)の大きな口に鳴きにけり 星野立子 俳句では秋の季語である鵯(ヒヨドリ)。夏の庭でも時折見かける。そのくちばしは大きくて目に付く。それを象徴する場面を見た。親鳥が雛に赤い実を食べさせているところだった。慌ててカメラを取り出し、写…

2004 酒がうまいのは二重の不幸か 山頭火は路上飲みの大先輩?

コロナ禍によって緊急事態宣言やまん延防止重点措置が出ている中で、酒の路上飲みがニュースになっている。酒がうまいから居酒屋が営業していなくとも、集団で路上飲みをしてしまうのだろうか。民俗学の柳田國男(1875~1962)は「酒の味が非常に好…

1988 春を待つ思いは世界共通 浮かれることはできない日々

3月も中旬になった。私が住んでいる千葉市周辺ではミモザや水仙、レンギョウといった黄色い花だけでなく、早咲きの八重桜(陽光桜)も咲き出した。ソメイヨシノの開花はまだだが、数日中には開花の発表があるかもしれないほど暖かな日和が続いている。だが…

1963 空飛ぶ宝石との出会い 戻ってきたカワセミ

新型コロナ感染症の第3波によって、首都圏で2回目の緊急事態宣言が出されることになった。コロナ禍によって、昨年から続いている閉塞感は強まるばかりだ。そんな時はぶらぶらと散歩をする。近くの遊歩道を歩いていたら、道のわきを流れる小川の岩の上に青…

1944 柿を愛する人は「まっすぐな道でさみしい」

少し寒さが増してきているこのごろ。とはいえ、いい季節であることは間違いない。さすらいの自由律句の俳人、種田山頭火の句を読む。「何おもふともなく柿の葉のおちることしきり」。葉が落ちて赤い実だけの柿が目立つようになった。柿を含め、果物もおいし…

1932 ちいさい秋がやってきた 山頭火とともに

秋おだやかなお隣りの花を見るなり 種田山頭火 今朝5時半の気温は16度しかなかった。つい最近まで猛暑などと言っていたのがうそのような気候の変化である。きょう30日で9月も終わり、秋本番ともいえる季節の到来だ。コロナ禍を忘れ、束の間だけ秋をテ…

1922 早朝の二重(ふたえ)虹 天まで続く七色の階段

「こんな美しい虹を見たのは初めて」「二重の虹はなかなか見られないよね」。朝6時前、雨上がりの北西の空に虹が出ているのを見た。しかも二重の虹である。散歩を楽しむ人たちは、束の間の自然界のパノラマに見入っている。何かいいことがありそうな、そん…

1918 夏の風物詩ヒマワリ物語 生きる力と悲しみの光と影

ヒマワリの季節である。8月になって猛暑が続いている。そんな日々、この花は勢いよく空へ向かって咲き誇っている。「向日葵の百人力の黄なりけり」(加藤静夫)の句のように、この黄色い花がコロナ禍の世界の人々に力を与えてほしいと願ってもみる。よく知…

1910 奇跡を願うこのごろ 梅雨長し部屋に響くはモーツァルト

「奇跡」を辞書(広辞苑)で引くと、「(miracle)常識では考えられない神秘的な出来事。超自然的な現象で、宗教的真理の徴(しるし)と見なされるもの」とある。2020年の今年こそ、奇跡が起きてほしいと願う人が多いのではないだろうか。ある日突然、こ…

1907「それを言っちゃあおしめえよ」 寅さんに怒られる

「それを言っちゃあおしめいよ」。寅さんが怒っている夢を見た。天国で楽しい生活を送っているはずの柴又の寅さん(山田洋次監督、渥美清主演「男はつらいよ」シリーズの主人公)は、いつもの、あのスタイルで、普段の柔和な表情とはかけ離れた厳しい顔で、…

1900 コロナ感染者1000万人超 壮大なる無駄遣いアベノマスク 「ブログ1900回!」

ブログ「小径を行く」は今回で1900回です。初めてから14年。ここまで到達しました。この記念すべき回にコロナ感染対策の「アベノマスク」、感染者1000万人について書いてみました。これも歴史なのでしょうか。 政府が新型コロナ感染拡大防止を目的…

1896 地図の旅、札幌へ そこはアカシアの季節

地図を見ながら想像の旅を続けている。山形を出発した旅は九州へと移り、さらに沖縄を経てヨーロッパまで行った。今回はヨーロッパから帰国し、北海道へと歩を進める。想像の旅だから、強行軍でも疲れることはない。札幌の知人のフェースブックを見ていたら…

1892 青春の地は金峰の麓村 地図を見ながらの想像の旅(2)

閑古啼くこゝは金峰の麓村 山形県鶴岡市生まれの作家、藤沢周平(1927~1997)の句(『藤沢周平句集』文春文庫)である。藤沢の死後、主に鶴岡で集められた色紙や短冊などに見られた7句のうちの1句で、藤沢は鶴岡師範学校を出た後、当時の湯田川村…

1867 ライラックがもう開花 地球温暖化ここにも

つつましき春めぐり来てリラ咲けり 水原秋櫻子 近所を散歩していたら、ライラック(リラ)の花が咲いているのを見つけた。まだ4月に入ったばかりだから、例年よりもかなり早い開花だ。空は青く澄み渡り、紫色の花からは微かな香りが漂ってくる。世界を覆う…

1861 自家撞着の政治家 知識を身につけていても

人間は生きよと銀河流れをり 新感覚派の俳人といわれた上野泰(1918~1973)の句である。「スケールの大きな世界。すでにほろんだ星も含む銀河が『人間は生きよ』と語りかけながら流れていきます。心に何か悩みや屈託があったとしても、この涼やかな…