小径を行く 

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。(筆者=石井克則・遊歩)

俳句

2863 「オミナエシの歌」 晩夏絶唱

8月も今日を含めて残り2日。季節の上では初秋であり、秋の七草に親しむ時期だ。「ハギ・キキョウ・クズ・フジバカマ・オミナエシ・オバナ(ススキ)・ナデシコ」のことだが、このうちフジバカマは私の家の周辺でほとんど見かけない。オミナエシ(女郎花)も…

2862  山頭火の「孤寒」と「業」 放浪の俳人の生き方

近所で見つけたオミナエシ(女郎花)の群生 疲れた時や気持ちが落ち込んだ時、私は1冊の本を取り出す。放浪の自由律句の俳人、種田山頭火(1882—1940)の「山頭火句集」(ちくま文庫)だ。この本の頁をパラパラとめくり、そこにある句や随筆に目を向ける。…

2861 ラスト掲載の季語は「吾亦紅」 待ち遠しい秋の到来

オミナエシ(女郎花)の中にひっそりと咲く吾亦紅 俳句歳時記(角川学芸出版)の季語索引の最後に掲載されているのが「吾亦紅」(われもこう)だ。秋の季語で、山野で見ることができるバラ科の多年草のことだ。「高原の風に吹かれているさまなどは少し淋しげ…

2852 猛暑に耐える2つの花 強い生命力詠う句

満開のサルスベリの花 私の住む地域で樹木に咲いている花といえば、サルスベリとキョウチクトウだ。2つの花はこの猛暑に耐えて、咲き続けている。私たち人間はこの暑さに負けてしまう。ところが、自然界は違う。それが2つの花であり、その生命力の強さを詠…

2843 ヒグラシは悲しき鳴き声 乗り越えれば光が……

美しい国宝・犬山城天守 蜩(ひぐらし)や悲しみ過ぎて笑つちやふ この句を見て、国宝犬山城を思い浮かべる人は、相当俳句に詳しいに違いない。この城は愛知県犬山市にあり、日本の城では松本(長野県)、彦根(滋賀県)、姫路(兵庫)、松江(島根県)とと…

2842 海は平和と修羅場 ゴッホの海景からの独言

夕暮れのエーゲ海 猛暑が続くと、海や山に行きたいと思う人は多いだろう。出掛けるのは面倒なら、せめて絵や写真、あるいは映画を見て涼を味わうことも一つの方法だ。絵といえば、以前東京都美術館で見たことがあるフィンセント・ゴッホ(1853—1890)の「サ…

2839 近づいているのか「秋隣」 広島・長崎にも露草が

ひっそりと咲くツユクサ 昔から「二八(にっぱち)」という言葉がある。2月と8月は商売の売り上げが落ちる月ということが語源だそうだ。2月は年末年始の反動で需要が落ち込み、8月は暑さとお盆休みで物が売れない、ということだ。かつてこの二八現象は、…

2832 消えた?夏の風物詩 風鈴よどこに

葉がバナナに似ているプルメリアの花 風鈴の音を点ぜし軒端かな 高浜虚子 軒先から風鈴の音が聞こえる、そんな風情を感じることが最近はあまりない。猛暑が続き、風も弱く、私の部屋はエアコンのために閉め切っており、折角の風鈴も用がない。江戸時代風鈴売…

2829 猛暑が普通の夏になるのか 涼しい顔をしてみたい

涼し気な一輪の朝顔 猛暑が続く。涼を求め、冷たいものを口にする日々。できれば「涼しい顔」で人と接したい。だが、そうは行かず、汗を流して暑苦しい顔で「今日も暑いですね」とあいさつしてしまう。ほとんどの人が私と同様に、暑さに耐えているのだろう。…

2825 にぎやかな「風の道広場」 ラジオ体操に大勢の子どもたち

北海道や東北、日本海側、長野などの一部の道県を除き全国の小中高校は19日から夏休みに入っている。夏休みの朝といえばラジオ体操だ。私も子どもの頃、近所の神社の境内に行き、体操をやったことを鮮明に覚えている。現在、私が参加している近所の広場で…

2824 猛暑の中の涼風が 日暮れに聞くヒグラシの歌

ヒグラシが鳴いている調整池の森 夕方、近所の調整池を回る道を散歩していますと、近くの森から「カナカナカナ」というヒグラシの鳴き声が聞こえてきました。その声は、私の耳には哀調を帯びているように入って来たのです。同じセミでもクマゼミのけたたまし…

2822 土用の丑の日とうなぎ 源内先生のPR効果 

土用丑の日、夕方は美しい夕焼けが 昨日のブログで触れた通り、今日19日は土用の丑の日だ。土用は立秋前の18日間をいい、この時期にある丑の日が土用の丑の日だ。暑い盛り、夏バテをしないよう昔からうなぎをはじめ土用しじみ、土用餅、土用卵など精のつ…

2821 猛暑の中の子規の会 凝縮した言葉を探る格闘

梅雨明けの空はどこまでも青い 気象庁は今日18日、「関東甲信と北陸、東北南部が梅雨明けしたとみられる」と発表した。ここ数日、ぐずついた天気が続いたとはいえ、暑い日が多く、気分はとうに梅雨明けだった。明日は土用の丑の日。偶然、参加した会合でう…

2813 花と香りに力をもらおう 7月のユリの詩(うた)

(ヤブカンゾウの中に一輪のヤマユリ) 自然公園の水辺朱色の花のヤブカンゾウの群生その中に一輪の白い花ヤマユリが咲いていただれかが植えたのか近くの斜面にはこのユリが生えている

2809 「むかご」に見る生命力 ヤマユリとオニユリの季節

うつむくようなオニユリの花 うつむいて何を思案の百合の花 正岡子規 百合の季節です。庭の一隅では「ヤマユリ」が、近所の遊歩道の脇には「オニユリ」がそれぞれ花を咲かせ始めました。感心な植物です。こんなに暑い日が続いても、自分の花の時期は心得てい…

2806 明日は「半夏生」の日 育たない自然公園のヤマユリ

棒状の穂が半夏生の花 6月も今日で終わり。明日7月1日は七十二候の「半夏生」(はんげしょう)の日だ。歳時記によると、この日はサトイモ科の「半夏」(はんげ=カラスビシャクの漢名)が生え始めるころで、昔は田植えを終えた農家が休みを取る日だったそ…

2805 もうクマゼミの季節 騒音でも元気の源に

朝、散歩していたら、クマゼミの鳴き声が聞こえてきた。まだ6月なのに、気が早いセミだ。とはいえ、既に沖縄、九州から近畿地方まで梅雨が明け、関東地方もエアコンのお世話になる日が続いているのだから、クマゼミが鳴くのも仕方がないことかもしれない。…

2795「思いわずらう時は歩こう」 藤村と山頭火の教え(ブログデザイン変更)

以前、何回かに分けて「明日は明日の風が吹く」という言葉について、このブログで書いたことがある。できれば、楽しくおかしく日々を過ごしたい。だが、私自身だけでなく、世の中の動きを含め思い悩むことも少なくない。そんな時、「明日は明日の風が吹く」…

2794 平和を願い眠る木 ネムノキの詩(うた)

ネムノキは不思議な木です気温の微妙な変化を感じる植物なのでしょうか2度咲きは珍しくありません去年は何と3度咲きを見ました

2788  中也が教えるビールのおいしさ 季語の由来は冷たさ

花菖蒲の季節です 外来語で俳句の季語になった言葉もかなりある。その中で「麦酒・ビール」(ほかにも関連で黒ビール、生ビール、地ビール、ビアホール、ビアガーデン、缶ビールなどがある)は私の好きな季語の一つになる。中には日本酒を好み「ビールはどう…

2785 蛍と梅雨入りと 心安らかに光見る

ハルシャギクが美しい 「腐草為蛍」=腐草化(ふそうか)して蛍となる=は、草が腐って蛍になるという昔からの俗説だ。蛍のことを「朽草」(くちくさ)と呼ぶのは、この説に基づくものだという。蛍を観察していると、たしかに水辺周辺の草の中から光を放ちな…

2778 近づく富士の季節 俗な句になっても……

友人の絵「富士山と月」 「赤富士」は、富士山が、夏の朝日に赤々と染まる現象だ。俳句では夏の季語になっている。これに対し「青富士」はあまり使わず、季語にもない。だがこの「青富士」を使った句がある。私の家にも友人が描いた2枚の富士山の絵がある。…

2772 海が見えない山でも 郷愁誘う一茶の句

鋸山の眼下には東京湾が見える 夏山や一足づつに海見ゆる 旧暦5月(現在の6月)、小林一茶(1763—1827)は江戸から房総半島の木更津に舟で渡り、安房方面を旅したという。夏山を登る途中、一歩一歩進んで行くと、海が見えてくる、という光景を描いたものだ…

2767 朝の讃歌 「おはよう」は夏の響き

金沢文庫・称名寺の黄色の花菖蒲 立夏が過ぎて夏至があと1カ月余に迫り、夜明けが次第に早くなりつつある。夏の早朝は気持ちがいい。子どもたちは朝が苦手かもしれないが、逆に高齢者は朝が友だちといっていい。散歩やラジオ体操で交わされる「おはよう」と…

2763 人や動物の夢の世界は 鬱陶しい日々の中で

目に優しいバラ・アンジェラ 「こんな夢を見た」。夏目漱石の『夢十夜』は、このような書き出しで人間と夢に関する不気味で不思議な10の話が展開されている。言うまでもなく、人間は夢を見る動物だ。では他の動物はどうだろうか。最近の研究によると、人間…

2758 5月に似合う蕪村の感性 「郷愁の詩人」と朔太郎

小高い山から見たある都市の風景 君あしたに去りぬゆうべの心千々に何ぞ遥かなる。 君を思うて岡の辺(おかのべ=丘のあたり、ほとり)に行きつ遊ぶ。岡の辺なんぞかく悲しき。 これは、誰の詩だろう。詩に詳しい人には常識だろうが、江戸時代の俳人で画家の…

2757 それぞれの「柏餅」 俳句で味わう哀愁の季節感

白い花のヤマボウシが満開 子どもの日。かつては柏餅と粽(ちまき)を食べる習慣があった。連休を利用して故郷に帰省して、柏餅を食べている人たちもいるだろう。柏餅は夏の季語であり、中には哀切を帯びた句もある。以下の3句はその代表かもしれない。この…

2754 「特許許可局」の季節 初夏を告げるホトトギス

朝、散歩をしていると、「チョットコイ、チョットコイ」と鳥の鳴き声がする。4月はウグイスとともに、この鳴き声がよく聞こえた。コジュケイという野鳥だ。今日から5月。今度は「トッキョキョカキョク」という鳴き声の野鳥の出番になってくる。ホトトギス…

2748 山路を歩きながら キンランやフジとの対話

池の端に咲くヤマフジ 私の住む街の真中にかつての里山がそのまま自然公園として残っている。4月も下旬となり、このところ最高気温は25度を超える夏日も記録し、急に新緑が目に付くようになった。公園を歩くと、山野草や樹木が「よく来たね」とでも言うよ…

2746 メヌエットの風景と蓬摘む2人 新緑萌える朝に

樹々の若葉の光り揺れだすメヌエット 音楽を俳句に取り入れた加藤千世子(1909~1986)の句だ。夫は人間探求派の俳人、加藤楸邨(しゅうそん)。散歩をしていて、樹々の若葉が萌えている風景を見ると、体が軽くなりスキップをしたくなるような思いがする。今…