小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

2007-02-01から1ヶ月間の記事一覧

84 空をつかむまで 現代児童文学を読む

かつて児童文学の道を志した。挫折した結果、事実を直視するペンの道を選んだのだが、時折、児童文学を読む。関口尚のこの小説は坪田譲治文学賞に選ばれた優れた作品だ。読後、このように爽快感を得ることができたのは久しぶりのことだ。 異性への憧れ、友情…

84 空をつかむまで 現代児童文学を読む

かつて児童文学の道を志した。挫折した結果、事実を直視するペンの道を選んだのだが、時折、児童文学を読む。関口尚のこの小説は坪田譲治文学賞に選ばれた優れた作品だ。読後、このように爽快感を得ることができたのは久しぶりのことだ。 異性への憧れ、友情…

83 映画「ルワンダの涙」 極限での生き方の選択

ルワンダは、アフリカ中央部にある。高原地帯で平均気温は約19度というから、住みやすい国土のはずだ。だがこの国も、先に書いたスリランカ同様、部族対立が根強く、それが元で虐殺があったことは記憶に新しい。この虐殺劇が何度も映画化されている。昨年後…

83 映画「ルワンダの涙」 極限での生き方の選択

ルワンダは、アフリカ中央部にある。高原地帯で平均気温は約19度というから、住みやすい国土のはずだ。だがこの国も、先に書いたスリランカ同様、部族対立が根強く、それが元で虐殺があったことは記憶に新しい。この虐殺劇が何度も映画化されている。 昨年後…

82 山谷にて 「きぼうのいえ」を見る

「東の山谷、西の釜が崎」という言葉がある。双方とも、いわゆる「ドヤ街」といわれる簡易宿泊所があり、日雇い労働者や路上生活者が多く住んでいる街である。 かつては、この街を舞台に、いろいろな話題があった。 山谷は台東区清川・日本堤・東浅草と荒川…

82 山谷にて 「きぼうのいえ」を見る

「東の山谷、西の釜が崎」という言葉がある。双方とも、いわゆる「ドヤ街」といわれる簡易宿泊所があり、日雇い労働者や路上生活者が多く住んでいる街である。 かつては、この街を舞台に、いろいろな話題があった。山谷は台東区清川・日本堤・東浅草と荒川区…

81 父と子の奮闘  映画「幸せのちから」

かつて、父と子の楽しくもあり、苦しい生活もありを描いたアメリカの映画「クレーマー・クレーマー」が大ヒットした。アメリカ社会の現実を描いたから、共感を呼んだのだろう。 「幸せのちから」も同様の映画だ。それもアメリカンドリームを体現した男と子供…

81 父と子の奮闘  映画「幸せのちから」

かつて、父と子の楽しくもあり、苦しい生活もありを描いたアメリカの映画「クレーマー・クレーマー」が大ヒットした。アメリカ社会の現実を描いたから、共感を呼んだのだろう。 「幸せのちから」も同様の映画だ。それもアメリカンドリームを体現した男と子供…

80 東京マラソン 人の波にのまれる

雨の中で、東京マラソンがあった。日比谷や銀座で3万人が走った大会をのぞいた。一口に3万人というが、それはいつまでも続く蟻の列のような感じがした。 東京の都心部を、7時間の制限時間で走るというこのマラソン。沿道もすごいというしかない人出だった。…

80 東京マラソン 人の波にのまれる

雨の中で、東京マラソンがあった。日比谷や銀座で3万人が走った大会をのぞいた。一口に3万人というが、それはいつまでも続く蟻の列のような感じがした。 東京の都心部を、7時間の制限時間で走るというこのマラソン。沿道もすごいというしかない人出だった。…

79 ストラドとデル・ジェス バイオリンの名器を聴く

一夜、バイオリンの名器のライバルといわれる「ストラディバリウス」と「グアルネリ・デル・ジェス」の弾き比べを聴く機会があった。弾き手は、パガニーニ国際コンクールで最高位を受賞した渡辺玲子。ピアノ伴奏は売り出し中の江口玲。2つの名器は、前者が繊…

79 ストラドとデル・ジェス バイオリンの名器を聴く

一夜、バイオリンの名器のライバルといわれる「ストラディバリウス」と「グアルネリ・デル・ジェス」の弾き比べを聴く機会があった。弾き手は、パガニーニ国際コンクールで最高位を受賞した渡辺玲子。ピアノ伴奏は売り出し中の江口玲。2つの名器は、前者が繊…

78 映画「それでもボクはやっていない」 裁判の現実を丹念に描いた周防作品

あと2年少しで「裁判員制度」が始まる。重大刑事事件の裁判に国民から選ばれた裁判員6人が3人の裁判官とともに立ち会い、被告が有罪か無罪かの判断をするのである。その裁判員制度のスタートが迫っている中で、「Shall We ダンス?」の周防正行監督が、11年…

78 映画「それでもボクはやっていない」 裁判の現実を丹念に描いた周防作品

あと2年少しで「裁判員制度」が始まる。重大刑事事件の裁判に国民から選ばれた裁判員6人が3人の裁判官とともに立ち会い、被告が有罪か無罪かの判断をするのである。その裁判員制度のスタートが迫っている中で、「Shall We ダンス?」の周防正行監督が、11年…

77 空飛ぶタイヤ 企業社会の病理を描いた小説

新聞の朝刊を開く。毎日のように社会面の下に企業の「おわび広告」が掲載されている。多い日は、8社のおわび広告が社会面と第2社会面の下の広告欄をすべて占めてしまった。これは何なんだと思う。 「空飛ぶタイヤ」(池井戸潤著、実業の日本社)を読んで、そ…

77 空飛ぶタイヤ 企業社会の病理を描いた小説

の朝刊を開く。毎日のように社会面の下に企業の「おわび広告」が掲載されている。多い日は、8社のおわび広告が社会面と第2社会面の下の広告欄をすべて占めてしまった。これは何なんだと思う。 「空飛ぶタイヤ」(池井戸潤著、実業の日本社)を読んで、その答…

76 濡れ衣 迷犬hanaのつぶやき

私にとって、迷惑なことがありました。そのためについ、お父さんとママに文句を言ってしまいました。 つい先日の夜のことです。リビングの一角にあるゴミ箱のゴミがあふれ、近くに少し散らばっていました。隣の和室で何かをしていたお父さんが戻ってきて、マ…

76 濡れ衣 迷犬hanaのつぶやき

私にとって、迷惑なことがありました。そのためについ、お父さんとママに文句を言ってしまいました。 つい先日の夜のことです。リビングの一角にあるゴミ箱のゴミがあふれ、近くに少し散らばっていました。隣の和室で何かをしていたお父さんが戻ってきて、マ…

75 フラガール もったいない図書館 2つの奇跡

これから紹介する2つのエピソードは「奇跡」と呼んでいいだろう。映画「フラガール」が第49回ブルーリボン賞で作品賞、主演女優賞(蒼井優)助演女優賞(富司純子)の3冠を達成した。さらにキネマ旬報の「第80回キネマ旬報ベスト・テン」(2006年日本映画ベ…

75 フラガール もったいない図書館 2つの奇跡

これから紹介する2つのエピソードは「奇跡」と呼んでいいだろう。映画「フラガール」が第49回ブルーリボン賞で作品賞、主演女優賞(蒼井優)助演女優賞(富司純子)の3冠を達成した。さらにキネマ旬報の「第80回キネマ旬報ベスト・テン」(2006年日本映画ベ…

74 スリランカの涙(2)

コロンボ市内の平凡な風景を見ていると、この国が内戦状態にあることを忘れる。しかし、別の場所では、政府軍の兵士が武器を持ち、厳しい顔つきで立っている。それがスリランカの日常なのだ。 政治的なことはよく分からない。新聞などによると、スリランカの…

74 スリランカの涙(2)

コロンボ市内の平凡な風景を見ていると、この国が内戦状態にあることを忘れる。一方、別の場所では、政府軍の兵士が武器を持ち、厳しい顔つきで立っている。それがスリランカの日常なのだ。 政治的なことはよく分からない。新聞などによると、スリランカの北…

73 スリランカの涙(1)

スリランカは「インド洋に浮かぶひとしずくの涙」といわれ、観光地化されてない美しさから「インド洋の真珠」ともいわれているという。コロンボ市内ではハスの花が美しく咲いている。この花を見ていると心が穏やかになる。フィリピンからスリランカに旅した…

73 スリランカの涙(1)

スリランカは「インド洋に浮かぶひとしずくの涙」といわれ、観光地化されてない美しさから「インド洋の真珠」ともいわれているという。コロンボ市内ではハスの花が美しく咲いている。この花を見ていると心が穏やかになる。フィリピンからスリランカに旅した…

72 父が眠る島 フィリピンで思ったこと(2)

マニラはほかの東南アジアと同様、車と雑踏の街だ。現在のマニラからは、太平洋戦争時代を思い起こすことはできない。街を歩くと、豊かな生活を送る人と、貧しい人の姿が顕著である。それがフィリピンの現実だ。 父が眠るアンヘレスの実情は詳しくは知らない…

72 父が眠る島 フィリピンで思ったこと(2)

マニラはほかの東南アジアと同様、車と雑踏の街だ。現在のマニラからは、太平洋戦争時代を思い起こすことはできない。街を歩くと、豊かな生活を送る人と、貧しい人の姿が顕著である。それがフィリピンの現実だ。 父が眠るアンヘレスの実情は詳しくは知らない…

71 父が眠る島 フィリピンで思ったこと(1)

私事に触れる。父親の顔は写真でしか知らない。母が父代わりもしてくれて、育ててくれたことは当然である。そのためか、父を持たない寂しさやつらさを感じないままに幼少期、少年時代を送り、いつしか故郷を離れて父のことを考えることがないままに長い年月…

71 父が眠る島 フィリピンで思ったこと(1)

私事に触れる。父親の顔は写真でしか知らない。母が父代わりもしてくれて、育ててくれたことは当然である。そのためか、父を持たない寂しさやつらさを感じないままに幼少期、少年時代を送り、いつしか故郷を離れて父のことを考えることがないままに長い年月…