小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

2018-06-01から1ヶ月間の記事一覧

1677 恩讐のかなたに 明治維新と会津

ことしは明治維新から150年になるという。明治維新については様々なとらえ方があるが、日本社会が武家中心の封建国家から近代国家へと大きく転回したことは間違ない。その裏で薩摩、長州藩を中心にした新政府軍(官軍)と戦った旧幕府軍は賊軍といわれ、…

1676 思い出の花を求めて 乃南アサ『六月の雪』

「欖李」(ランリー)という花の存在を初めて知った。乃南アサの小説『六月の雪』(文藝春秋)は、32歳の杉山未來という女性がけがをして入院中の祖母を励ますため、祖母が生まれ育った台湾の台南を訪ねる物語だ。祖母は台南で「6月の雪を見た」と記憶し…

1675 なちかさや沖縄 今を「生きる」

23日は沖縄慰霊の日だった。糸満市摩文仁の平和祈念公園で開かれた沖縄全戦没者追悼式。ことしも中学生による平和の詩の朗読があった。沖縄県浦添市立港川中3年の相良倫子(14)さんが読み上げる「生きる」という詩を聞いていて、胸が熱くなった。それ…

1674 辞書を引く楽しみ 「問うに落ちず語るに落ちる」

最近、辞書を引くことが多い。分厚い辞書だけでなく電子辞書には出版社別のいろいろな辞書が入っていて、気になる言葉を簡単に調べることができる。例えば「語るに落ちる」という言葉がある。政治家の言動を見ていると、昨今これに当てはまることが少なくな…

1673 濁世と坊ちゃんの啖呵 漱石の言葉の爽快さ

夏目漱石の『坊ちゃん』に有名なたんか(啖呵)が出てくる。「ハイカラ野郎の、ペテン師の、イカサマ師の、猫被りの、香具師の、モモンガーの、岡っ引きの、わんわん鳴けば犬も同然な奴」(9章)である。「濁世」(だくせ、じょくせ、ともいう)という言葉…

1672 方丈記と重なる少女の災難 胸えぐられる光景

大阪府北部で最大震度6弱を観測した18日朝の地震で、高槻市の市立寿栄(じゅえい)小学校のブロック塀が倒壊し、小学4年の三宅璃奈さん(9)が死亡するなど、大阪を中心に大きな被害が出た。大阪に住む友人に連絡すると「怖かった」という声が返ってき…

1671 サッカーの祭典と子規  苦しみは仁王の足の如し

サッカーW杯ロシア大会が始まった。テレビニュースを見て、なぜかワクワク感があることに気づいた。それは同じように4年に1回開催されるオリンピック(夏、冬2年の間隔)の開幕とほぼ似た感覚だ。これは私だけでなく、スポーツを愛好する多くの人に共通…

1670 虐待死と新幹線殺人 満席の『万引き家族』

東京都目黒区のアパートで船戸結愛ちゃんという5歳の女の子が虐待で死亡、継父と実母が逮捕されたのに続き、走行中の新幹線車内で22歳の男が乗客を刃物で襲い、女性客を守ろうとした男性が殺される事件が起きた。2つの事件とも家族の在り方が問われる深…

1669 大谷と職業病 スポーツ選手のけがとの闘い(3)

野球の投手にとって肘の損傷は「職業病」といっていい。これまで多くの投手がこのけがに苦しみ、野球人生を途中で断念した投手も少なくない。大リーグに行き、エンゼルスで投打の二刀流に挑んでいる大谷翔平(23)が右肘の内側副靱帯(じんたい)を損傷し…

1668 被災地に流れる交響曲 自然との共生願って

仙台の友人がアマチュアオーケストラで、ベートーベン(ベートヴェンとも表記)の交響曲6番「田園」を演奏したという。この曲は多くの人が知っていて、かつては同名の名曲喫茶店もあった。そのポピュラー性が嫌われるのだろうか、クラシック専門家の評価はそ…

1667 「ここに地終わり海始まる」 心揺さぶられる言葉

「ここに地終わり海始まる」ポルトガルの国民詩人ルイス・デ・カモンイス(1525?-1580)の詩の一節だ。リスボンの西シントラ地方のロカ岬はユーラシア大陸の西の果てといわれ、140メートルの断崖の上に十字架がある石碑が建っている。そこには…

1666 正義の話について  膨らむ疑問

昨今、「正義」という言葉を考えることが多い。森友学園問題で大阪地検特捜部は国有地の8億円もの大幅値引き売却に対する背任や決裁文書を改ざんした虚偽有印公文書作成など全ての告発容疑について、佐川宣寿前国税庁長官など財務省幹部ら38人全員を不起…