小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

コロナ

2105 スポーツの爽やかさどこへ 失望の北京五輪

「スポーツの爽やかさはどこにいった。つまらない大会だ」。世界でオミクロン株によるコロナ禍が爆発状態のさ中に開催中の北京冬季五輪を見ていて、こんなふうに感じている。なぜだろう。それには、日本選手が絡んだ2の競技が絡んでいると私は思うのだ。五…

2103 2月生まれの感覚 寒い朝でも……

このごろは、夜明け前の東の空を見上げるのが楽しみだ。明けの明星(金星)が輝いているからだ。「いつせいに春の星座となりにけり」(黒田杏子)という句がある。今日は立春。この日が来ると、黒田の句のように昨日までは冬の星座だったものが、今日からは…

2102 ジェンナーと華岡青洲と 医学の進歩と人体実験の被験者たち

新型コロナに関して、日本でも3回目のワクチン接種が始まっている。このワクチンの開発に当たっても治験(国の承認前の薬剤を患者や健康な人に投与し、安全性と有効性を確かめるための試験のことで、新薬開発のための治療を兼ねた試験を言う)という人体実…

2098 『ラルゴ』・幅広くゆるやかに ピアニスト反田さんの願い

『神よ、ポーランドをお守りください』。ポーランドの人々は幾世紀にもわたって、このような祈りを教会でキリストにささげたに違いない。同じ言葉を私たち日本人は、神にささげたことがあるのだろうか。それは別にしてポーランドはこれまで大国によって侵略…

2094 「思索」の信越の旅 紀行文を読む楽しみ

英国人女性、イザベラ・バードは文明開化期といわれた1878(明治11)年横浜に上陸、6月から9月にかけて北日本を旅し、さらに10月から関西を歩いた。この記録が『日本紀行』あるいは『日本奥地紀行』として今も読み継がれ、紀行文の名著になってい…

2093 経験を軽く見た行動が背景に? 第6波に入ったコロナ禍

(近所の公園の池で見かけた白鳥) コロナ禍が第6波に突入してしまったことは間違いない。年末、次第に増え始めた感染者は新年を迎えて激増の一途をたどり、8、9両日とも新規感染者は8千人を超えた。前の週と比較して倍どころか10倍という数字を聞くと…

2090 新年の九十九里を歩く 古刹には名言の碑

『鳥は飛ばねばならぬ 人は生きねばならぬ』。仏教詩人といわれる坂村真民の詩の一節だ。コロナ禍で人の命は軽くなっている。そうした現代に生きる私たちを励ますような詩碑が古刹の一角にあった。「浜の七福神」といわれる七福神巡りのコースが千葉県の九十…

2088 コロナ禍の2021年を送る 逆境にあっても明日を信じて

2021年もコロナ禍で明け暮れました。新聞・通信社が選ぶ十大ニュース、今年もコロナ禍が内外ともにトップ(あるいはそれに近い)になっています。何しろ、世界の感染者は2億8436万人、死者は542万人(30日現在。日本は感染者173万3207…

2086 混乱期を生きる母と娘 かくたえいこ『さち子のゆびきりげんまん』

昭和から平成を経て令和になり、昭和は遠くなる一方だ。日中戦争、太平洋戦争という戦争の時代だった昭和。そして、敗戦。70数年前の人々はどんな生活を送っていたのだろう。かくたえいこ(角田栄子)さんの児童向けの本『さち子のゆびきりげんまん』(文…

2083 人間を笑う年の暮 世界に広がる犯罪地図

12月もきょうで10日。残すところことしも21日になった。年の暮である。昨年から続くコロナ禍。南アフリカで見つかった新変異株オミクロンが世界的に拡大し、世界中で新規の感染者が増え続けている。一方の日本。第5波が落ち着き、いまのところ感染者…

2081 寒気の中でも凛として咲く 香り優しき水仙の花

(庭先に咲いた水仙) 庭先のスイセンの花が咲き始めた。この花は「水仙」(このブログでは一部を除き、以降「水仙」)と漢字で書きます)と書いたのを音読したものだそうだ。昔は「雪中花」(せっちゅうか)と呼んだこともあったという。文字通り雪の中でも…

2075 フェルメール現象再び? 知られざるレッサー・ユリィ

(ユリィ「夜のポツダム広場」) 久しぶりに美術館に行き、1枚の絵の前で釘付けになった。「夜のポツダム広場」。描いたのはドイツのレッサー・ユリィ(1861~1931)。私の知らない画家だった。絵の下半分は雨に濡れた路面が建物の照明に照らされて…

2072 シリウスとの対話 かけがえのない犬たちへ

「○○よく頑張ったね。いい子だね」。夕方、散歩をしていたら、小型犬を連れた若い女性とすれ違った。しばらくして、こんな声が聞こえた。だいぶ遠くなってからあの犬がしきりに吠えている。私とすれ違った犬は人が近づくとほえてしまうのだ、でもそれを我慢…

2062 「よく分からないから不気味」コロナ感染急減の背景は 

「なぜ、コロナ感染者がこんなに急に減ったのだろうね。よく分からないから不気味なの」。小学校高学年の家族が「登校中、低学年を送ってきた大人がこんなことを話しているのが聞こえたよ」と教えてくれた。今夏、あれほど猛威を振るったコロナ禍。一時は1…

2055 相次ぐマスク着用めぐるトラブル 文明人の勇気とは

マスクをめぐるトラブルが内外で相次いでいる。中でもドイツの殺人事件は、多岐にわたるコロナ禍の負の歴史でも特殊な位置を占めるだろう。いつの時代でも、決まり事を守ることができない人はいる。極論すれば、国が決めたことを絶対に守らせようとするのは…

2051 コロナ禍の床屋談義 ワクチン接種をめぐって

新型コロナ感染症のワクチン接種が毎日ニュースになっている。東京・渋谷のワクチン接種会場に多くの若者が並ぶ光景が先日まで続いた。コロナ禍はどこでも話題の中心になっている。たまたま行った理髪店でもそうだった。待合室で私が順番を待っていると、髪…

2050 シメールを背負った国会議員たち 短命・菅首相退任劇の中で

菅首相が3日、自民党臨時役員会で自民党総裁選に立候補しないことを表明した。今月末の党総裁任期満了に伴い首相を退任することなるわけで、わずか1年余の短命首相といえる。このニュースを見ながら、孔子と弟子たちの問答をまとめた『論語』の「政治」に…

2044 孫文と株成金の娘のこと 不思議な人とのつながり

これはコロナ禍以前に、箱根まで行った際に書いた短いエッセーだ。数年前のことだ。そんな日を振り返り読み返している。この世の人のつながりは、やはり不思議なものがある。私と加藤文子さんもそうだった。詳しい経緯は書かないが、加藤さんは私にとって忘…

2040「賢さ」とは 感染爆発列島に思う

いわゆる「記紀」といわれる古事記(712年に編纂された天皇家の神話)と日本書紀(720年に完成した日本の正史)には、第10代崇神(すじん)天皇の時代に大きな疫病(現代の感染症か)が流行したことが書かれている。日本書紀によれば、当時の人口の…

2038  ヒグラシ鳴く五輪最終日 子規の病床テレビ観戦を想像

夕方、調整池の周囲をめぐる遊歩道を散歩していたら「カナカナカナ……」とヒグラシが鳴いているのが聞こえた。何となく物寂しさを覚える哀調ある鳴き声だ。子どものころは、このセミが鳴くと夏休みが終わりに近かった。8月20日過ぎには2学期が始まったか…

2035 伝わらない首相のメッセージ コロナついに1万人超

五輪の最中、日本の新型コロナ感染者が29日、1日で1万人を超えた。感染爆発状態だ。これを抑えるにはどうすべきなのか。そのメッセージが伝わらない。政府は何をやっているのだろう。菅首相の虚ろな目を見ていると、国民の不安は増すのではないだろうか…

2030 濃霧の中に浮かぶ白虹 人々励ます自然の演出

私の散歩コース、調整池を回る遊歩道は、濃霧に包まれていた。今朝6時前。途中で引き返す人もいる。この道はよく知っているから、霧の中、歩を進めると南西の方角の空に、曲線の模様が浮かんできた。灰色の模様は次第にアーチ状になっていく。虹だった。こ…

2027 異常・異例五輪開催へ ワクチン効果減少も懸念

コロナ禍が続く中で、スポーツが大きな話題になっている。23日から始まる東京五輪は、東京に4度目の緊急事態宣言が出されることが決まったことから、まん延防止重点措置が継続される神奈川、埼玉、千葉を加えた4都県で開催する競技は無観客開催となった…

2021 リトマス試験紙的存在の五輪 人が生き延びるために

「馬の耳に念仏」ということわざは「馬を相手にありがたい念仏をいくら唱えても無駄。いくらよいことを言い聞かせてもまるで理解できないからまともに耳を傾ける気がなく、何の効果もないことのたとえ」あるいは「人の意見や忠告を聞き流すだけで、少しも聞…

2018 五輪は滅亡への道か 極度な緊張を強いられる東京

コロナ禍によって世界が混乱に陥っている中、1年延期された東京五輪・パラリンピックの開催が迫ってきた。「安心・安全な大会を目指す」という言葉が開催当事者から繰り返されても、中止を求める声は根強い。作家の沢木耕太郎は、1996年の米アトランタ…

2017 優しい眼差しで紡ぐ言葉 詩人たちとコロナ禍

現代に生きる私たちにとって逃げることができない重い存在は、コロナ禍といっていい。この1年半、この話題が果てしなく続く日常だ。それは詩人にとっても無縁ではなく、最近、手元に届いた詩誌や小詩集にもコロナ禍が描かれている。この厄介な感染症が収束…

2016 「苦しんでいても微笑みを」『今しかない』(2)完

「ユーモアとは、にもかかわらず笑うこと(Humor ist,wenn man trotzdem lacht)」。これはドイツ語のユーモアの定義で、2020年9月6日、88歳で亡くなった上智大名誉教授アルフォンス・デーケンさんの講義で聞いたことがあります。デーケンさんは日本…

2015「笑顔を取り戻そう!」『今しかない』第3号から(1)

長引くコロナ禍によって、世の中から笑顔が消えてしまったようです。日々のニュースは暗い話題ばかりだと感じます。そんな時、『今しかない 笑顔』という小冊子が届きました。友人もボランティアとして運営に協力している埼玉県飯能市の介護老人保健施設・飯…

2014 ベニバナ無惨 謝罪求めるボランティア  

近所の公園の一角にボランティアが管理している小さな花壇がある。そこにはベニバナが数十本植えられていた。それが最近ごっそり抜かれ、花壇の外に放置されているのが見つかった。この行為にボランティアたちが怒り、花荒らしに「謝罪を求める」看板を設置…

2013 地球の気候変動への処方箋? 斎藤幸平著『人新世の「資本論」』

「人新世」(じんしんせい、ひとしんせい=アントロポセン)は、地球の時代を表す名前の一つで、環境破壊などによる危機的な状況を表す言葉として使われる。オゾンホールの研究でノーベル化学賞を受賞したオランダ人化学者、パウル・クルッツェン(1933…