小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

2018-01-01から1年間の記事一覧

1712 読書の秋 乱読・つんどく

急に涼しくなり読書の秋を迎えた。このところフィクション、ノンフィクションの区別なく興味があれば読んでいる。以下は9月から最近までに読んだ本(再読も含む)の寸評。 ▽前川喜平ほか『教育のなかのマイノリティを語る』(明石書店) 前川氏は元文科事務…

1711 オプジーボと先輩からのメール 本庶佑さんのノーベル賞に思う

職場の先輩Yさんが肺がんで亡くなったのは2017年3月のことだった。闘病中のYさんから、当時としてはあまり聞きなれない「オプジーボ」という薬を使っているとメールをもらったことがある。がん患者には光明ともいえる薬である。この薬の開発につなが…

1710 荒々しさ増す地球の気象 『空白の天気図』再読

台風24号が去った。きょうから10月。とはいうものの、手元の温度計は30度を超えている。25号も発生したというから、ことしは台風の当たり年といえる。昭和以降の被害が甚大だった台風を「3大台風」と呼んでいるという。室戸台風(1934年9月2…

1709 ニュースに見る現代社会 貴乃花・新潮45・伊方原発訴訟

朝刊を開いて、載っているニュースについて考えることが日課になっている人は少なくないだろう。私もその一人である。けさは3つのニュースが目についた。大相撲の貴乃花親方の退職届、雑誌「新潮45」の休刊、そして四国電力伊方原発の運転認める広島高裁…

1708 不思議なキンモクセイの香り 郷愁を呼ぶ季節

ことしも庭のキンモクセイの花が咲き始めた。花よりも、独特の香りで開花を知った人は多いのではないか。実は私もそうだった。植物の花はさまざまな香り(におい)がある。その香りは虫を呼び、受粉を助けてもらう働きがあるのだが、キンモクセイの花には虫…

1707 感動の手紙の交換 骨髄移植シンポを聴く

命が大事であることは言うまでもない。人間にとってそんな基本的なことをあらためて考える機会があった。骨髄移植に関するシンポジウムでのことである。骨髄移植。日常的にはこの言葉を聞くことは少なくない。だが、その実情は私を含め、多くの人は知らない…

1706 戦争を憎む強いまなざし 最近読んだ3冊の本

女性作家による太平洋戦争~終戦直後を扱った3冊の本を読んだ。乃南アサ『水曜日の凱歌』(新潮文庫)、須賀しのぶ『紺碧の果てを見よ』(新潮文庫)、中脇初枝『神に守られた島』(講談社)である。乃南は1960(昭和35)、須賀は1972(昭和47…

1705 秋の気配そこまで 野草と月とそばの季節に

9月も半ば。これまで味わったことがないような猛暑、酷暑の夏が過ぎて、秋の気配が漂ってきた。コオロギの鳴き声も次第大きくなり、エアコンに頼らず、自然の風の中で生活ができるのはとてもうれしい。そんな一夕、正岡子規が好きな人たちが集まって開いて…

1704 大谷の二刀流復活記念日は? けがとの闘い1年を振り返る

俵万智の歌集『サラダ記念日』(河出書房)が280万部というベストセラーになったのは、31年前の1987年のことだった。歌集には題名となった「『この味がいいね』と君が言ったから七月六日はサラダ記念日」の短歌が収められていて、「記念日」という…

1703 北海道大地震の体験 知人のブログから

北海道に住む知人夫妻が、ブログに北海道胆振東部地震の体験記を書いている。自然災害が多発する日本列島に住む私たちに貴重な情報だ。以下に核心部分を紹介する。 オール電化生活の高齢者住宅に住む私達は、卓上コンロのガスボンベを求めて近隣のスーパーへ…

1702 繰り返す自然災害 想定外からブラックアウトへ

「予(われ)、ものの心を知れりしより、四十(よそじ)あまりの春秋(しゅんじう・しゅんしう)をおくれる間に、世の不思議を見ること、ややたびたびなりぬ(「私は物事の分別がつくようになったころから、40余年の歳月を送ってきた。その間に常識ではあ…

1701 朝鮮出兵に巻き込まれた男の数奇な運命 飯嶋和一の『星夜航行』

14世紀後半、豊臣秀吉は明(現在の中国)征服を唱えて2回にわたって朝鮮出兵を行い、、明の従属国だった李氏朝鮮を攻撃した。「文禄・慶長の役」(1592~93、97~98)といわれる朝鮮侵略だった。飯嶋和一の『星夜航行』(新潮社)を読んだ。こ…

1700 初秋の風物詩 マロニエの実落下が続く遊歩道

私の家の前は遊歩道になっていて、街路樹としてのけやきの大木がある。そのけやき通りを東に歩いていくと、街路樹は数本のクスノキとなり、さらにその次にはマロニエ(セイヨウトチノキ)が植えられている。9月になった。マロニエの実が次々に落ちてきて、…

1699 できるのかパラリンピック 障害者雇用水増しの国なのに

かつて、職場の同僚に半身が不自由な同僚がいた。彼女は自由な方の手でパソコンを打ち、きっちりと仕事をこなしていた。誠実でまじめだから同僚たちから信頼されていた。障害者雇用で採用された一人だった。障害者雇用の義務がある国の行政機関の多くで雇用…

1698 戦争に翻弄された世界のフジタ 2枚の戦争画は何を語るのか

太平洋戦争中、画家たちは軍部の依頼・指示によって国民の戦意高揚を意図する絵を描いた。エコール・ド・パリの画家として知られる藤田嗣治もその一人だった。東京都美術館で開催中の「藤田嗣治展」で、そのうちの2枚を見た。彼を有名にさせた「乳白色の画…

1697 社会現象になった金足農 「ベースボールの今日も暮れけり」

「刀折れ矢尽きる」あるいは「弓折れ矢尽きる」というのだろうか。甲子園の夏の高校野球決勝、大阪桐蔭―金足農戦(12-3で大阪桐蔭が優勝。春夏連覇の2回という新記録を達成)をテレビで見ていて、この故事を思い浮かべた。「戦う手段が完全になくなる。物事…

1696 落語で聞いた特攻の母 鎮魂と祈りの季節に

桂竹丸の「ホタルの母」という落語を聞いた。これが落語かと思った。それは創作落語で語り継ぐ戦争。「特攻」の「ホタルの母」だった。舞台は鹿児島知覧。太平洋戦争末期、本来なら日本の将来を担う若者たちがここから特攻機に乗り込み、尊い命を失った。こ…

1695 シベリアで死んだ友人の父のこと してるふりの遺骨収集

正午、甲子園球場の高校野球が中断し黙とうの放送が流れた15日、友人がフェースブックでシベリアに抑留されて命を落とした父親のことを書いている。父親がシベリアで亡くなったことは聞いていたが、旧満州時代のことは初めて知った。友人にとってもこの日…

1694 戦いに仆れた沖縄県知事 「わたしは人間だったのだ」

人は理不尽なことに対し、どのように向き合うか。その一つの答えを示し、道半ばにして仆れたのは現職でがんのために67歳で死去した沖縄県の翁長雄志(おながたけし)知事だった。孤軍奮闘という言葉は、この人のためにあったといって過言ではあるまい。普…

1693 高校野球美談の陰で 猛暑が及ぼす甲子園記念大会への影響

異常な暑さの中で甲子園の夏の高校野球大会が続いている。熱中症で足がけいれんした左翼手に相手校の3塁コーチの選手が駆け寄り、冷却スプレーで冷やしてやった、というニュースが美談として報じられている。これだけでなく、今大会は暑さのために毎日のよ…

1692 先人たちの思いは 東京医大の入試女子差別

日本の女医第1号は、荻野吟子である。そして、日本初の東京女子医学校(現在の東京女子医大)を創設し、女子の医学教育に尽くしたのが吉岡彌生だった。吉岡を尊敬し医師になり、医療活動の生涯を送ったある女性から何回かにわたり話を聞いたことがある。こ…

1691 続パソコンの延命策 内蔵HDDをSSDに換装

以前デスクトップのパソコンの調子がおかしくなった際、内蔵ハードディスクドライブ(HDD)を交換した。しかし、OSをウインドウズ10にバージョンアップしてから動きが遅いと感じたので、HDDよりも高速だといわれるSSDに替えることにトライした。…

1690 台風一過の午後のひととき プレーヤーに入れたCDはあの曲

台風一過、暑さが戻ってきた。こんな時にはCDを聴いて少しでも暑さを忘れたいと思う。プレーヤーに入れたのは、チャイコフスキーの「弦楽セレナード」(ネヴィル・マリナー指揮、アカデミー室内管弦楽団)だった。実は昨日、友人が演奏者として参加したコン…

1689 邯鄲の昼寝 覚める時まで真に生きたい

「イタリアやスペインでは〇〇は四季を通じて行われ、一つの文化である」。これは角川俳句大歳時記(角川学芸出版)に出ている、ある季語の解説の一部だ。賢明な方はすぐにあれかと思い至るはずだ。そうです。「〇〇」は「昼寝」でした。この夏は猛暑を超え…

1688 観測史上最高の「激暑」 心配な東京五輪

近所の自治会の掲示板に、夏休みの子どもたちの「ラジオ体操」や「そうめん流し大会」中止の案内が出ていた。長引く猛暑の影響だ。散歩をしていると干からびたミミズの多くの死骸が目に付き、街路樹からはうるさいほどのセミの鳴き声が聞こえる。大暑の23…

1687 孤軍奮闘の御嶽海 甘えの横綱たち

3人の横綱だけでなく、新大関の栃ノ心までけがで休場した大相撲名古屋場所。14日目で関脇御嶽海が初優勝を決めた。それに対し残った大関2人は元気がなく、ようやくカド番を脱した。それでも人気があるから、相撲協会は危機感を持っていないのかもしれな…

1686 夕焼けの中で 郷愁誘う自然の芸術

私は夕焼けを見るのが好きだ。なぜ? 大空に展開する自然の芸術に陶酔する時間がたまらないのかもしれない。昨日の夕、久しぶりにこの風景に出会った。猛暑続きの日々、夕焼けは翌日の好天の予兆だそうだ。その通り、きょうも朝から暑い。 昨夕、エアコンが…

1685 害虫と益虫をめぐる勘違い 「こがねむし」の歌私見

毎年、いまごろの暑い時期になると、庭のナツツバキ(シャラノキ)に昆虫がやってきて葉を食い荒らす。体長2・5センチほどの昆虫だ。背中は緑色に光っている。私はこの昆虫をカナブンだと思い込み、家族に「またカナブンが来ている」と話した。だが、調べ…

1684 仏像との対話 皮相浅薄時代に

「君たちは古美術品が語りかけてくることを一言一句聞き漏らしてはならない」日本の古美術再生運動を指導した岡倉天心(1863~1913)は、東京美術学校(東京芸大の前身)校長就任の際のあいさつで、こう話したという。明治維新後、日本では廃仏毀釈の運動が…

1683「酷暑」の夏 涼を求めて

新聞に「酷暑」の見出しが躍っている。外からはやかましいクマゼミ(熊蝉)の鳴き声が聞こえる。きょうも暑くなりそうだと思いながら、部屋の温度計を見ると、午前8時を少し回ったばかりなのに、既に30度を超えている。つい「暑い!」と口走ってしまう。…