小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1700 初秋の風物詩 マロニエの実落下が続く遊歩道

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 私の家の前は遊歩道になっていて、街路樹としてのけやきの大木がある。そのけやき通りを東に歩いていくと、街路樹は数本のクスノキとなり、さらにその次にはマロニエセイヨウトチノキ)が植えられている。9月になった。マロニエの実が次々に落ちてきて、気を付けないと頭に当たる。遊歩道はマロニエの実と剥がれた皮が転々としていて、初秋の風物詩を演出している。  

 マロニエは私が参加しているラジオ体操広場にもある。この広場は遊歩道とつながっていて、毎日40人前後が集まってラジオ体操をする。学校の夏休み中は数人の子どもが参加していた。だが、途中でその数が減り、最後まで残ったのは小学校1年生の小さな女の子1人だった。マロニエの実は8月下旬から少しずつ落ち始めていて、女の子はある日小さな手いっぱいに実を集めて家に持ち帰った。栗の実と思ったようだった。

 だが、母親から「栗とは違うよ。庭に埋めなさい」と言われたそうで、次の日から集めるのはやめた。夏休みが終わって女の子は姿を見せなくなった。そして遊歩道と体操広場には落ちた実がかなり目立つようになった。  

 以前、スロバキアの首都、ブラスチラバでちょうどマロニエの実が落ちている公園を歩き、風情を感じた。だが、遊歩道もそうだが、トチノキマロニエが街路樹となっている場合、実が落ちる時期、歩行者はけっこう歩きにくいのではないかと思われる。

 マロニエの通りで知られるパリのシャンゼリゼ通りにはマロニエが街路樹として植えられ、秋にはかなりの実が落下し、歩行者の頭を直撃することがあるそうだ。だから、傘をさしてこの通りを歩く人の写真を見たことがある。こちらの遊歩道や広場もかなりやばい。  

 マロニエと同じムクロジ科(旧トチノキ科)にトチノキがあり、あく抜きして栃餅にして食べる地域もあった。縄文時代の遺跡からこの実が出土しており、古くから日本に生息していたのだろう。一方、マロニエギリシア北部、アルバニアあたりが原産といわれ、世界各地に街路樹として植えられている。日本には明治時代に輸入されたから、トチノキよりかなり後輩になる。  

 遊歩道でマロニエの実を写真に収めていたら、近所の老人が袋を持ってきて、実と皮を集め始めた。実はインターネットで栃餅の作り方を調べ、皮は庭に埋めて肥料にするのだそうだ。うまく栃餅ができるといいのだが……。台風21号が四国、近畿地方を直撃した。関東も風が強いから栃の実の落下が続くはずだ。散歩には頭上注意の季節なのである。  

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