小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

2016-01-01から1年間の記事一覧

1508 この世は美しく甘美な人の命 お盆に思う

日が暮れて草のにほひの盆の寺 今井杏太郎 お盆である。昨日夕、家族で墓参りをした。寿陵(生前墓)であるわが家の墓にはお骨は入っていない。 私は東北出身で生家に墓はある。だが、将来のことを考えると、住まいの近くに墓があった方がいいだろうと数年前…

1507 銀メダリストのフェアプレー精神 最後で内村に逆転されたが……

このところオリンピックからフェアプレー精神は失われ、勝つことが最優先になっている印象が強い。だが、開催中のブラジル・リオ五輪でフェアプレー精神が健在であることを知り、心が和んだ。 それは日本時間11日早朝(現地時間10日夕)に行われたリオ五…

1506 野球界の光と影 イチローの3000本とAロッドの引退

8日(現地時間7日)大リーグ、マーリンズのイチローが3000本安打を達成した。一方、3000本安打を打っているヤンキースのアレックス・ロドリゲスが引退を表明した。2人は対照的な打者だった。 「細くて小さなプレーヤーが、巧みなバットコントロー…

1505 被爆者たちの死の舞踏 71年前の人類の悲劇の体験

きょう6日は、広島原爆の日だった。河野治彦『灯篭流し 陽の目を見なかった父の原爆小説』(文芸社)を読み返した。原爆投下から終戦までの1週間の広島の街の実情を記した手記である。痛みに耐えるために地団駄を踏む格好をしながら、経を読むように一つの…

1504 千代の富士挽歌 風は過ぎ行く人生の声

8月になった。ことしの立秋は7日だから、暦の上での夏はきょうを含めてあと6日しかない。とはいえ、心地よい秋の風が吹くのはまだだいぶ先のことだ。盛夏の昨7月31日、大相撲で初めて国民栄誉賞を受賞した第58代横綱千代の富士が亡くなった。61歳…

1503 ロッキード事件40年 様変わりした検察

NHKTVでロッキード事件特集が放送された。のちに検事総長となる吉永祐介氏が東京地検特捜部副部長・主任検事として様々な困難を乗り切って田中角栄元首相の逮捕にこぎつけるが、もう一つの捜査ターゲット、自衛隊のP3C導入をめぐる疑惑は解明されな…

1502 あすなろ物語 横綱目指す稀勢の里

大相撲の大関・稀勢の里は名古屋場所も優勝できなかった。夏場所と名古屋場所で連続して「綱取り」の場所といわれながら優勝できずに場所を終えている。辛口の解説者、北の富士さんは「稀勢の里を横綱にさせたい後援会の会長になりたいくらいだ」と広言する…

1501 新しい運動用具との出会い 夏の風物詩・ウォーキング用ポール

プロ野球、広島カープの黒田博樹投手(41)が日米通算200勝を達成し、大投手の仲間入りを果たした。打者の2000本安打とともに、プロ野球選手にとって憧れの記録であり、今後なかなかこの記録を達成する投手は出そうにない。イチローもそうだが、黒…

1500 年輪を刻んで 懐かしく、心温まる人たちとともに

日本各地には、「巨樹」と呼ばれる大木がかなり存在する。福島県いわき市の国宝・白水阿弥陀堂の境内にも、イチョウの大木があった。いわき市の天然記念物に指定され、樹高29メートル、幹回り5・9メートルで、推定樹齢は不明だという(いわき市HPより…

1499 古代ハス咲く白水阿弥陀堂  平泉ゆかりの国宝建築物

全国に阿弥陀堂は数多い。阿弥陀如来を本尊とする大小のお堂は身近なものになっている。美しい阿弥陀堂としてよく知られている福島県いわき市内郷の「白水(しらみず)阿弥陀堂」を見る機会があった。真言宗智山派の願成寺にあり、建築物としては福島県で唯…

1498 危険度増す国際支援活動 不公正・不平等社会とテロ

バングラデシュの首都ダッカで起きたIS関連グループによるレストランでの外国人を狙った7月1日のテロから8日が過ぎようとしている。日本人7人を含む多くの外国人や警察官が犠牲になった。犯行グループ7人は全員がバングラデシュの若者だった。日本人…

1497 五輪哀歌 アナクロとグローバル化と

ブラジルのリオ五輪が近づいているせいか、昨今の新聞には五輪関連のニュースが少なくない。朝刊には「国歌歌えぬ選手 日本代表ではない」という見出しの記事があり、夕刊には男子ゴルフの松山選手が「リオ五輪辞退」というニュースが載っていた。これらの記…

1496 難しい植物の名前 夕菅とヘメロカリス

「われらが花を見るのは、植物学者以外は、この花の真目的を耽美するのではなくて、多くは、ただその表面に現れている美を賞観して楽しんでいるにすぎない。花に言わすれば、誠に迷惑至極と歎つ(かこつ)であろう。花のために、一掬の涙があってもよいでは…

1495 パソコンの延命は 内蔵HDD交換にトライ

パソコンの調子がおかしくなった。フリーズ(マウスが止まったまま応答しないこと)が頻発し、強制終了して立ち上げようとすると、画面が暗いままの状態が続く。いよいよ寿命かと思う。2009年製だから7年目のパソコン(NECのデスクトップ型)だ。 し…

1494 雄々しい高橋英吉の《海の三部作》 被災地作品展を見る

私が高橋英吉という彫刻家の名前を知ったのは、もう36年前のことになる。だが、その作品を見る機会がないまま長い歳月が過ぎてしまった。先日、東京藝大美術館に足を運び、そこで高橋の作品に初めて接した。海に生きる雄々しい漁夫をテーマにした代表作の…

1493 ホトトギス朝の歌 梅雨の晴れ間に

梅雨の晴れ間が広がった先日の朝、近くの雑木林からホトトギスの鳴き声が響いてきた。私にはなぜか子どものころから、この鳴き声が「トッキョキョカキョク」(早口言葉で使われる「東京特許許可局」のうち、「東京」を除く)と言っているように聞こえる。初…

1492 コルビュジエの思想 世界遺産になる西洋美術館

建築家、安藤忠雄氏の愛犬の名前は「ル・コルビュジエ」というそうだ。どこかで聞いた名前だ。そう、フランスの20世紀を代表する同名の建築家(1887年10月6日―1965年8月27日)である。上野の国立西洋美術館を含め、彼が設計した建物が世界文…

1491 川上さんの予言 大記録への挑戦続くイチロー

大リーグで活躍するマーリンズ・イチローの大記録達成が近づいてきた。8日(日本時間9日)のツインズ戦に出場したイチローは3安打を打ち、メジャー3000本安打まで29本(2971)にまで迫り、メジャー最多安打のピート・ローズの4256本まで日…

1490 でんでん虫の季節 白居易の詩に思う

梅雨は憂鬱(ゆううつ)な季節だ。じめじめしていて気持ちもカラッとしない。うっとうしいニュースも少なくない。朝、散歩をしていると、道の真ん中にカタツムリが2匹いた。道を横切ろうとしているようだ。カタツムリも懸命に生きようとしているのだろう。 …

1489 孤独感と戦う森の生活 ソーローと大和君

「わたしは、ある人が森のなかで道に迷い、とある木の根もとで飢えと疲れとために死にかかったが、肉体的の困憊のため病的になった想像力が彼の周囲にあらわした怪奇な幻像――それを彼は現実であると信じたのだ――によって孤独感をまぬがれた、という話を聞い…

1488 都合のいい「新しい判断」 政治に必要なのは「モラルと思想」

「理性ある動物、人間とは、まことに都合のいいものである。したいと思うことなら、何にだって理由を見つけることも、理屈をつけることもできるのだから」。アメリカ独立宣言起草委員の1人で、アメリカ建国の父ともいわれるベンジャミン・フランクリンの言…

1487 嫌われる鳥でも ヒヨドリが玄関脇に営巣

野鳥の中で、ヒヨドリは全体が灰色と姿も美しさとは程遠く、鳴き声もピーヨ、ピーヨとやかましい。冬、庭のガーデンテーブルにミカンを置くとメジロがやってくるが、ヒヨドリがついてきてメジロを追い払って、食べ尽くしてしまう。そんなヒヨドリを好きだと…

1486 詩から想像する太古の歴史 最後のネアンデルタール人の哀愁

埼玉県在住の9人の詩人による『薇』という詩誌14号に「最後の一族」という秋山公哉さんの詩が載っている。ヒト属の一種といわれるネアンデルタール人のことを描いた詩である。偶然だが、イギリスの人類学者アリス・ロバーツの『人類20万年 遥かな旅路』…

1485 オバマ大統領の広島訪問の意味 非道さを伝えたAPの第一報

「人類が開発した最も恐ろしい兵器――原子の分裂という宇宙の根源的な力によって徹底的な破壊をもたらす原子爆弾――が今日、その凄まじさで日本を驚愕させ、そしてそれがもたらす戦争と平和への潜在的可能性を示し、世界の他の地域をも驚愕させた」 これは、広…

1484『わが定数歌』 ある大先輩の歌集から

芽を吹きて欅(けやき)は空に濃くなりぬわが「市の樹(まちのき)」と思ひつつ行く 私の2階の部屋の窓から、街路樹のけやきが見える。緑の葉が遊歩道を覆っている。冒頭の短歌は、若い時分にお世話になった秋田市の大先輩が「わが定数歌」として詠んだうち…

1483 静かな秋田の市立美術館 若冲展とは別の世界

先日、秋田市立千秋美術館の「最後の印象派」展を見た。20世紀初頭のパリで活躍した画家たちの絵80点を集めたものだ。入場者はそう多くはなく、ゆったりと時間が流れる中でじっくり絵を見ることができた。一方、上野の東京都美術館で開催中の伊藤若冲展…

1482 花が香り立つ季節 バラは五月晴れが似合う

いまごろは七十二候でいえば「末候」=竹笋生ず(たけのこしょうず)に当たる。「たけのこが、ひょっこり出てくるころ」という意味だそうだ。だが、温暖化からか、たけのこの旬は過ぎている。この季節、あちこちで咲いているバラの香りがかぐわしい。 最相葉…

1481 この世は勧善懲悪ではない ゴンクール賞 『天国でまた会おう』

ピエール・ルメートル著『天国でまた会おう』(ハヤカワ文庫、上下)は『第一次世界大戦(1914~1918)で、上官によって瀕死の状況に追い込まれながら生き延びたフランスの元兵士2人が戦後、どのように生きたを描いている。 2人は壮大な詐欺事件と…

1480 誰にも弱点・アキレス腱が 人を知るために

旧聞に属するが、女子マラソンの野口みずき(37)と男子水泳(平泳ぎ)の北島康介(33)という、オリンピックの金メダリストが相次いで現役を引退した。一方、大相撲界では、幕内最高齢の安美錦(37)がアキレス腱断裂で3日目から休場し、引退の危機…

1479 街路樹の下を歩きながら 文章は簡単ならざるべからず

大型連休が終わった。熊本の被災地では、依然避難所暮らしを余儀なくされている人が少なくない。一方で、被災地以外では多くの人がどこかに出掛け緑の季節を楽しんだのだろう。それがこの季節の習わしだ。以前は私も同じ行動をとっていた。だが、最近は違う…