小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1491 川上さんの予言 大記録への挑戦続くイチロー

画像 大リーグで活躍するマーリンズイチローの大記録達成が近づいてきた。8日(日本時間9日)のツインズ戦に出場したイチローは3安打を打ち、メジャー3000本安打まで29本(2971)にまで迫り、メジャー最多安打ピート・ローズの4256本まで日米通算であと7本(4249)になった。

「秒読みに入った」という気の早い表現もあるが、いずれにしても通算で新記録は間もなくだろうし、3000本も今シーズン中には間違いなく達成されるだろう。大記録を達成した後のイチローの去就が気になる。

 イチローはこれまで、走力を生かして内野ゴロでもヒットにして、安打数を稼いできた。しかし、さすがに年齢とともに走力が衰えてきたのか、このところ内野安打は減ってきている。メジャーに移籍して28歳から37歳まで10年間3割を打ったが、38歳になった2011年から2015年までは3割を割っている。

 昨シーズンの打率は2割2分9厘とメジャー生活で最低となり、衰えは隠せなかった。打つことに重点を置くという打撃スタイルのため四球数も少なく、出塁率も下がってきた。しかし、42歳のイチローは今シーズン調子がいい。打率も3割以上を維持し、出番さえあれば2つの記録を破るのは間違いないとみられていた。

 イチローは間違いなく天才だ。大リーグが嫌いだと公言する解説者の張本さんも、イチローだけは批判しない。同じように、天才打者だった張本さんも一目置く存在なのだろう。打撃の神様といわれた元巨人監督、故川上哲治さんは、『遺言』(文春文庫)という本の中でイチローについて、以下(要約)のように触れている。(この本はイチローがメジャーで活躍を始めた2001年の5月に出版)

《もちろん大リーグでも成功するだろう。タイミングの取り方は日本球界ではナンバーワン。下半身でしっかり踏み止め、腰を回転させて打つ―バッテングの基本がきちんとできているので、どんな球に対しても振り切れる。足もあるし肩もいい。身体のスピードでは負けない。

 問題はパワーとスタミナだが、すらりとしてきゃしゃに見えるが、筋力はしっかりついていてバネがある。バッテング一筋で立ち向かえばメジャーのスピード、例えば150キロの球速、球質の重量感にも対応していけるはずだ。》

 川上さんは、イチローと同じ大リーグで活躍した松井秀喜に対しても好意的な評価をしているが、先日、覚せい剤取締法違反で執行猶予付きの有罪判決を受けた清原和博については、当時も厳しい見方をしていた。(要約)

《若い時分に西武で甘やかされて育ったせいか、もともとの性分なのか、やる気はあっても長続きしない。素質に恵まれ、高い給料をもらいながら、それ相応の働きを期待されながら、いいプレーをコンスタントに発揮できない。10年たっても15年たっても、タイトルともなにひとつ無縁だ。(打点王を1回獲っている)毎年のようになにかしら挫折する。その繰り返しだ。今のままでは40歳前後までは働けないのではないか。》

 清原は41歳になった2008年限りで引退したが、最後の2年間は安打4本(2007年0本、08年4本)しか打っていない。打撃の神様、川上さんは、人を見る目も確かだったことがよく分かる。イチローも清原も川上さんの書いている通りになった。イチローは今シーズン前に、51歳まで現役を続けたいと語ったと伝えられている。その意気やよしである。