1482 花が香り立つ季節 バラは五月晴れが似合う
いまごろは七十二候でいえば「末候」=竹笋生ず(たけのこしょうず)に当たる。「たけのこが、ひょっこり出てくるころ」という意味だそうだ。だが、温暖化からか、たけのこの旬は過ぎている。この季節、あちこちで咲いているバラの香りがかぐわしい。
最相葉月著『青いバラ』(小学館)に、香料の原料として利用されているバラのことが書かれている。それは大きく分けて2つの地域で栽培されているという。①ロザ・ダマスセナという品種を栽培するブルガリアとトルコ、②キャベジ・ローズという八重咲きのロザ・センティフォーリアを栽培する南仏のグラースとモロッコだ。
これらの地域にはバラから香料用の精油を取る香料会社が多数存在するそうだ。 私は知らなかったが、バラの香りの成分は540種類程度あるいは1000~1500ともいわれる。バラの香りはそれほどになぞに満ちているといえる。
正岡子規は薔薇によせて次の句を詠った。
障子あけて病間あり薔薇を見る
薔薇を剪る鋏刀(はさみ)の音や五月晴れ
病の床に伏しながら、五月晴れのもとに咲くバラを見つめた子規は、その匂いを感じることができたのだろうか。 朝、庭からの香りを楽しみながら届いたばかりの新聞を読む。
詩人の丸山薫(1899~1974)はこんな詩を書いている。
『朝』
お父さんが新聞をひらくと 新聞紙いつぱいに ぱつと 朝日が射した
朝日の中で 刷りたての活字の匂いがする 活字の匂いはいいな
ぼくにはよく言えないが ジャムのような パンのような 食べたくなる匂いだ (『黒い黒板』より)
新聞には、沖縄県うるま市の若い女性が遺体で見つかり、元米海兵隊員で米軍基地軍属の男が逮捕されたというニュースが出ている。またかと思う。うるま市は世界遺産、勝連城(グスク)跡がある町だ。世界遺産とはいえ、静かさが保たれていて気に入っている遺跡である。うるま市のことを、このようなニュースで思い出すのは誠に残念だ。
花が香り立つ季節。新聞を閉じて散歩に出ると、風に乗ってノイバラの甘い匂いが漂ってきた。調整池の周囲に群落する白い花が咲き誇っている。だが、心は暗い。
関連ブログ