小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

自然

1635 霧の朝に初音聞く  幻想の世界を歩く

急に暖かくなったと思ったら、けさウグイスの初音を聞いたた。朝6時過ぎ、調整池を周回する遊歩道を歩いた。調整池周辺は濃い霧に包まれていた。その霧を突き破るように、うぐいすの鳴き声が耳に飛び込んできた。日記を見ると、早い年だと2月20日ごろ、…

1609 四国からの懐かしい便り 元同僚からのミカンの贈り物

「四国西部にあり、瀬戸内海、宇和海に面する。山がちな県で、温暖な気候を利用して、ミカン、イヨカン、キウイフルーツなどの栽培がさかん。また、養殖漁業もさかんで、真珠、ハマチ、マダイは全国有数の水揚げをほこる。今治市は全国一のタオル生産地だ」 …

1592 夕焼け断章 暗くなるまで見ていたい

先日、素晴らしい夕焼けを見た。夕焼けは、太陽が沈む前に西の空が燃えるような紅色になる自然現象である。四季折々に見られるのだが、俳句では夏の季語になるそうだ。 夕焼けといえば、あの童謡を思い浮かべる人が多いかもしれない。あれは、やはり夏の歌な…

1591 キノコのある生活 山形から季節の便り

山形に住む友人から、季節の便りが届いた。この季節といえば、どんなことをしているのだろうと思っていたが、そう、山歩きが趣味の友人は、キノコ採りに明け暮れているのである。 友人が採っているのは海の紅色サンゴと似ているホウキダケである。かなりおい…

1587 9月に吹く風 変わらぬ人間性

物いへば唇寒し秋の風 松尾芭蕉 今日から9月。急に涼しくなった。秋風が吹き、街路樹のトチノキの実が落ち始めた。詩人の大岡信は、日本人の秋風に対する思いについて、面白いことを書いている。最近、ニュースになった政治家のヒトラーに関する発言を考え…

1584 咲き続ける朝顔 季語は秋でも夏の風物詩

小学校1年生の孫娘から預かった鉢植えの朝顔が咲き続けている。わが家にやってきてから111個、実際に咲き始めてからちょうど150個になる。この先どれほどの花が咲くのだろう。俳句歳時記によると、朝顔は夏の季語ではなく秋の季語だ。 「朝顔市」をは…

1579 大暑を乗り切ろう 国民的文芸に親しむ

「大暑」の季節である。熱気が体全体にまとわりつくほど蒸し暑い。一雨ほしいと思っていたら、滴が降ってきた。そんな一日、ある句会に参加した。「現代の俳人で歴史に残るのはこの人しかいない」と、句会の主宰者が評価する金子兜太は「俳句は、日本人にと…

1573 「鷹乃学」のころ 猛暑を乗り越えて

鉢植えのインドソケイが咲いた。別名、プルメニアともいう。中米、西インド諸島が原産といわれる亜熱帯・熱帯の花である。香りがよくハワイのレイにも使われるから、日本人にもなじみの花といえる。このところ猛暑が続いていて人間にはつらい日々だが、植物…

1572 夢一筋の天の川 ウグイスが飛来した朝

7月に入って暑い日が続いている。庭では近くの調整池の森から飛んできたウグイスが鳴いている。きょうは七夕だ。天の川をはさんで夜空に輝く七夕の由来になった星(こと座のベガとわし座のアルタイ)を見上げる人たちもいるだろう。俳句愛好者は、夏目漱石…

1571 きのふの誠けふの嘘 アジサイの季節に

紫陽花やきのふの誠けふの嘘 正岡子規 アジサイの季節である。最近は種類も多いが、この花で思い浮かぶのは色が変化することだ。子規はそのことを意識して人の付き合い方についての比喩的な句をつくったのだろう。安倍首相の獣医学部をめぐる言動は子規の句…

1570 植物の三徳 清澄のユリ園を訪ねて

植物には三徳があると言ったのは、植物学者の牧野富太郎である。人間の生活に植物がいかに重要な役割を果たすかを示した言葉である。それは後述するが、牧野は「もしも私が日蓮ほどの偉物であったなら、きっと私は、草木を本尊とする宗教を樹立して見せるこ…

1569 目に優しい花菖蒲 一茶を思う一日

むらさきも濃し白も濃し花菖蒲 京極杜藻 うつむくは一花もあらず花菖蒲 長谷川秋子 近所の自然公園にある湿地で花菖蒲が見事に咲いた。その花は前掲の俳句の通り色はあくまで濃く、どの花も下を向いてはいない。歳時記によると、原種は野花菖蒲で江戸時代初…

1566 新しい青色の発見 この色のバラは普及したのか

つい先日、米オレゴン州立大学で「YInMnブルー」という鮮やかな新しい青色を発見した、というニュースが流れた。テロが相次ぐ時代、平和の象徴ともいわれる青い色に、新しい色が加わったことは喜ばしいことだと思う。 報道によると、新しい青色はオレゴ…

1565 5月の風に 春から夏へのバトンタッチ

今年の立夏は5日だった。ゴールデンウィークはほぼいい天気の日が続いた。それが終わると、天気はぐずついている。沖縄は間もなく梅雨に入るという。春から夏への移行の季節になった。旬の食べ物はタケノコである。故郷の竹林のことを思い出した。 この季節…

1559 こだまするホトトギスの初音 ウグイス・キジとの競演

朝、いつもより早く6時前に調整池を回る遊歩道を歩いていたら、ホトトギス(時鳥)とウグイス、キジが次々に鳴いているのが聞こえた。まさに野鳥のさえずりの協演だ。3種類の鳥が同時に鳴くなら三重奏(トリオ)という表現もできる。しかし、鳥たちは律義…

1553 4月に思うこと 桜から感じる生命力

4月になっても、千葉市のわが家周辺では桜はまだ一部咲きである。東京は2日が満開だったことが信じられないくらいだ。ことしも既に4分の1が過ぎたが、このところ新聞、テレビのニュースを見て考えることが多かった。 国内では森友問題だ。8億円も値下げ…

1545 市民が支える小さな山荘 愛の鐘響く新庄・杢蔵山

作家の深田久弥(1903~1971)は、長い年月をかけて日本の名峰、百座を登頂した。その実体験を基に名作『日本百名山』を書いた。その後記(新潮文庫)で「日本人ほど山を崇び山に親しんだ国民は、世界に類がない。国を肇めた昔から山に縁があり、ど…

1541 列島に限りなく降る雪 天から送られた手紙

「汽車の八方に通じて居る國としては、日本のやうに雪の多く降る國も珍しい」 民俗学者、柳田國男は『雪國の春』の中で、こんなことを書いている。 現在日本列島は大雪が続いている。まさに柳田國男の言う通りである。日本を訪れ、広島に入ったオーストラリ…

1536 考えながら送る黄金時間 冬霧の朝に

朝の散歩道にある調整池から霧が出ていた。冬の霧である。俳句では、霧は秋の季語になる。だからこの季節には「塔一つ灯りて遠し冬の霧 蘭草慶子」の句のように、「冬の霧」を使う。次第に明るさが増す霧の道を歩きながら、この1年を振り返った。 その年の…

1528 自然公園の晩秋風景 狙いはカワセミとカメラ老人

かざす手のうら透き通るもみぢかな 大江 丸 立冬(11月6日)はとうに過ぎている。暦の上では冬なのだが、晩秋というのが実感である。木々の葉が赤や黄色に色づき、落ちる寸前の美しさを誇っているようだ。この季節、高野辰之作詞、岡野貞一作曲の「紅葉」…

1512 彼岸花とアカザのこと 気象変動と食べ物

ことしの日本列島は、台風による大雨で各地に大きな被害が出ている。北海道では農作物への影響も少なくない。温暖化による気象変動が激しい季節だが、秋の彼岸も近い。間もなく彼岸花(別名、曼珠沙華)も開花するだろう。たまたまこの花のことを調べていたら…

1496 難しい植物の名前 夕菅とヘメロカリス

「われらが花を見るのは、植物学者以外は、この花の真目的を耽美するのではなくて、多くは、ただその表面に現れている美を賞観して楽しんでいるにすぎない。花に言わすれば、誠に迷惑至極と歎つ(かこつ)であろう。花のために、一掬の涙があってもよいでは…

1489 孤独感と戦う森の生活 ソーローと大和君

「わたしは、ある人が森のなかで道に迷い、とある木の根もとで飢えと疲れとために死にかかったが、肉体的の困憊のため病的になった想像力が彼の周囲にあらわした怪奇な幻像――それを彼は現実であると信じたのだ――によって孤独感をまぬがれた、という話を聞い…

1487 嫌われる鳥でも ヒヨドリが玄関脇に営巣

野鳥の中で、ヒヨドリは全体が灰色と姿も美しさとは程遠く、鳴き声もピーヨ、ピーヨとやかましい。冬、庭のガーデンテーブルにミカンを置くとメジロがやってくるが、ヒヨドリがついてきてメジロを追い払って、食べ尽くしてしまう。そんなヒヨドリを好きだと…

1482 花が香り立つ季節 バラは五月晴れが似合う

いまごろは七十二候でいえば「末候」=竹笋生ず(たけのこしょうず)に当たる。「たけのこが、ひょっこり出てくるころ」という意味だそうだ。だが、温暖化からか、たけのこの旬は過ぎている。この季節、あちこちで咲いているバラの香りがかぐわしい。 最相葉…

1476 桐の花が咲く季節 漂うトチノキに似た芳香

散歩道の斜面にある桐の花(俳句の季語は夏)が満開だ。いつもの年よりも早く花が咲いている。ことしの八十八夜(立春から88日目)は5月1日、立夏は5月5日だ。紫の筒状の花を見て、季節は春から夏へとバトンタッチをしていることを実感する。 桐の木の…

1458 俳句は謎めいた水晶球・おかしみの文芸 ある句会にて

「俳句は硬直した読みしかできない標語ではなく、謎めいた水晶球のごときもの、すなわち詩でなければならない」。作家で俳人の倉坂鬼一郎は『元気が出る俳句』(幻冬舎新書)の中で、理想の俳句についてこんなふうに書いている。 正岡子規を愛する人たちが集…

1457 「或る晴れた日に」「でもぼくらは永久にもどれない」

何気なく本棚から『立原道造詩集』(ハルキ文庫)を取り出し、パラパラと頁をめくっていると、「或る晴れた日に」という詩があった。外は雨がぱらついている。寒い冬に逆戻りしたような天気だ。きょうは3月11日。5年前の大災害を思い出しながら、詩を読…

1455 「ミモザの日」支える300人の公国 グリーグの贈る言葉

春を告げる花といわれるミモザの花が満開だ。きょう3月8日は「国際女性デー」である。イタリアでは「女性の日」あるいは「ミモザの日」と呼ばれている。男性から女性にミモザを贈る行事があり、この日ローマの街は黄色い花であふれるという。 この花を生産…

1455 「ミモザの日」支える300人の公国 グリーグの贈る言葉

春を告げる花といわれるミモザの花が満開だ。きょう3月8日は「国際女性デー」である。イタリアでは「女性の日」あるいは「ミモザの日」と呼ばれている。男性から女性にミモザを贈る行事があり、この日ローマの街は黄色い花であふれるという。 この花を生産…