小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1572 夢一筋の天の川 ウグイスが飛来した朝

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 7月に入って暑い日が続いている。庭では近くの調整池の森から飛んできたウグイスが鳴いている。きょうは七夕だ。天の川をはさんで夜空に輝く七夕の由来になった星(こと座のベガとわし座のアルタイ)を見上げる人たちもいるだろう。俳句愛好者は、夏目漱石の「別るるや夢一筋の天の川」という美しい句を思い浮かべるかもしれない  

 歳時記によると、七夕は旧暦7月7日の行事(そのために秋の季語)だったが、現在は新暦の7月7日や月遅れの8月7日の行事になっている。中国で牽牛・織女の伝説から行われるようになった「乞巧奠(きこうでん)」の行事(織女星にあやかってはた織りや裁縫が上達するようにと、7月7日にお祈りをする風習)が伝わり、日本の「棚機つ女(たなばたつめ・(はたを織る女性のこと)信仰が習合し、日本独自の姿になったといわれている。  

 笹竹に願い事を書いた短冊や折り紙でつくった飾りを吊るすこの行事は、子どもがいる家庭では珍しくない。ただ、高齢化社会になって子どもの姿が少なくなった地域も多く、私の家を含めて一般家庭から七夕飾りは消えつつあるようだ。  

 友人の話を紹介する。友人は先日、用事があって長女の家に行った際、小学1年生の孫娘のために七夕飾りをつくった。何十年ぶりかであり、懐かしい思いに浸ったという。学校から帰ってきた友人の孫娘は、友人たちが帰ったあと、一人で飾りをつくり、願い事を書いたという。夜になって、どんな願い事を書いたのか友人が電話で聞いた。すると、こんな答えが返ってきた。「家族一緒に暮らすことができますように、と書いたよ」  

 父親は7月に入って本社から沖縄の支店に転勤になった。諸事情で当面は単身赴任の予定だ。父親を駅まで送った帰りの車の中で、友人の孫娘は父との別れを悲しみ、号泣したという。その思いが、このような、一途な願い事になったのだろう。  

 漱石の句は、病気見舞いに来てくれた友人にあてたものといわれる。「君と別れたあと夢の中に一筋の天の川が現れた。年に一度の逢瀬を待ちわびる彦星のように君との再会を望んでいる」との思いでつくったのだろうと私は解釈した。漱石自身は、どんな思いでこの句を詠んだかよく覚えていないそうだが、友人が見舞いに来てくれたことのうれしさ、再会を待つ気持ちが伝わってくる。  

 九州で大雨被害が出ている。福岡県朝倉市大分県日田市を中心に、家屋が流され、多くの人が避難生活を続けている。お見舞い申し上げます。1974(昭和49年)4月26日、山形県最上郡大蔵村の松山と呼ばれる標高181メートルの山が崩れ、麓の民家を押しつぶし、住民17人が生き埋めになって死亡、13人が負傷するという惨事があった。この現場を見たことを思い出す。家々を飲み込んだ凄まじい現場は、いまも忘れることができない。  

 写真はことしも散歩コースに咲いたメロカリス?

1496 難しい植物の名前 夕菅とヘメロカリス