先日、素晴らしい夕焼けを見た。夕焼けは、太陽が沈む前に西の空が燃えるような紅色になる自然現象である。四季折々に見られるのだが、俳句では夏の季語になるそうだ。
夕焼けといえば、あの童謡を思い浮かべる人が多いかもしれない。あれは、やはり夏の歌なのだろうか。
中村雨紅作詞、草川信作曲の「夕焼小焼」である。大正時代(作詞、大正8年=1917、作曲大正12年=1923)の童謡だから、もう90年以上も歌い継がれてきたことになる。
1 夕焼け小焼けで 日が暮れて 山のお寺の 鐘が鳴る お手手つないで みな帰ろう 烏(からす)といっしょに 帰りましょう
2 子供が帰った あとからは 円(まる)い大きな お月さま 小鳥が夢を 見るころは 空にはきらきら 金の星
夕焼けは、ノルウェーの画家、エドヴァルド・ムンクの代表作「叫び」にも描かれている。1893年(明治26)の作で、夕暮れの散歩の時の体験を基にしているといわれる。ムンクの体験は1年前のもので、1892年1月22日の日記には以下のように書かれている。
《夕暮れ時、私は2人の友人と共に歩いていた。すると、突然空が血のような赤に染まり、私は立ちすくみ、疲れ果ててフェンスに寄りかかった。それは血と炎の舌が青黒いフィヨルドと街に覆い被さるようだった。友は歩き続けたが、私はそこに立ち尽くしたまま不安に震え、戦っていた。そして、自然を貫く果てしなく、終わることのない叫びを聞いた》
童謡の方は、郷愁を呼ぶ「里の風景」の世界である。子どもたちは暖かい夕食を囲むため家に帰っていく。一方、北欧の1月は夕暮れも早い。ムンクにとって長い夜を過ごすことは、辛かったに違いない。
「暗くなるまで夕焼を見てゐたり」(仁平勝)の句のように、人それぞれに、夕焼けについては思い出があるだろう。夕焼けは何かを感じさせる力を持っているのだと思う。
(先日、この写真を撮影していて転倒した。右足の4本ある大腿四頭筋の1本が断裂、入院して手術することになった。この日の夕焼けは私にとって、忘れることができない思い出になってしまった。こんな理由でしばらくの間、このブログの新しい記事掲載は休みます。皆様もけが、病気には気をつけましょう)