急に暖かくなったと思ったら、けさウグイスの初音を聞いたた。朝6時過ぎ、調整池を周回する遊歩道を歩いた。調整池周辺は濃い霧に包まれていた。その霧を突き破るように、うぐいすの鳴き声が耳に飛び込んできた。日記を見ると、早い年だと2月20日ごろ、遅い年では5月3日に聞いたと書いてある。ことしの初音の時期は、例年通りなのだろう。
それにしても、霧の風景はなかなか幻想的だ。少し時間が過ぎると、霧の向こうから太陽が顔を出した。その景色を見ながら東日本大震災があった2011年の9月、ノルウェーで経験した霧の朝を思い出した。ノルウェーで2番目に長いハダンゲル・フィヨルド(全長179キロ)を臨むウルヴィックのホテルに泊まった翌朝のことである。ホテルの周辺を散歩した。前日、ホテルの前には透明感のあるフィヨルドがあった。だが、濃い霧がフィヨルドを包み込んでいて、あたりは幻想の世界になっていた。
私はしばらく護岸にたたずんだ。すると、次第に霧が晴れてきて、フィヨルドが見えてきた。透明感が広がるフィヨルに、小さ舟が浮かんでいる。鮮やかな朱色の舟に人影はない。まるで夢を見ているようだった。美しい風景に私はかなりの時間見とれていた。
この後、首都オスロに行き、国立美術館でエドヴァルド・ムンクの油絵「叫び」を見る機会があった。この絵にフィヨルドが描かれているのは周知の通りだが、大震災から半年しか経ていないため、原発事故の被災者を想起して身震いしたことを覚えている。
調整池の霧は、散歩を終えるころから急速に消え始めた。ウグイスは鳴き続けている。それに呼応するようにキジも鳴き、美しい雄キジの姿が見えた。鳥たちは春がきたことを敏感に察知し、ここまでやってきたのだろう。うぐいすは「春告鳥」という異名がある。確かにこの鳥が鳴くと、春の到来を感じる。ただ、東北北部や北海道でこの鳥が鳴くのはまだかなり先のことである。
写真 1、2ノルウェーのフィヨルド 3、4、5調整池の霧の風景