小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1566 新しい青色の発見 この色のバラは普及したのか

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 つい先日、米オレゴン州立大学で「YInMnブルー」という鮮やかな新しい青色を発見した、というニュースが流れた。テロが相次ぐ時代、平和の象徴ともいわれる青い色に、新しい色が加わったことは喜ばしいことだと思う。  

 報道によると、新しい青色はオレゴン州立大学のマス・サブラマニアン(Mas Subramanian)教授の研究室で発見された。サブラマニアン教授は材質科学の専門家で、この研究室では、電子工学に活用するための新しい材料製造に関する実験中、酸化イットリウムと酸化インジウム、少量の酸化マンガンを加熱して混合物を炉から取り出したところ、鮮やかな青色に変わっていたという。別の研究から偶然生まれた新しい青色色素の発見は、フランス人のルイ・ジャック・テナールが1802年にコバルトブルーを発見して以来というから、歴史に残るはずだ。  

 青色は海や空を連想させ、さらに平和や安らぎを感じさせ、人々に人気がある色だそうだ。そんな中で、数多くの品種があるバラだけは「青色の花」は長い間「高根の花」だった。日本の「バラの父」といわれるバラの育種家・鈴木省三と青いバラ開発をテーマにした最相葉月のノンフィクション『青いバラ』(小学館)が出版されたのは2001年5月のことで、この段階で青いバラは誕生していなかった。この本のあとがきで最相は「今、改めて読者に問いかけたい。青いバラができたとして、それは本当に美しいのだろうかと――」と書いた。  

 結局、青い色素を持った花をつけさせるには、遺伝子組み換えの技術が使われた。サントリーフラワーズとオーストラリアのベンチャー企業が青色の色素を持ったバラを開発したと発表したのは2004年6月で、切り花が発売になったのは2009年11月だった。  では、青い花びらは本当に美しく、心の安らぎを与えてくれるのだろうか。バラ園で最相の問いかけを確認したいと思うのだが、私は青いバラを見かけたことはない。鈴木省三のコーナーがある千葉県佐倉市の「草ぶえの丘バラ園」でも、それらしき花はなかった。青いバラはまだそれほど普及していないのだろう。  

 私の散歩コースである調整池周辺では、野いばらが群生している。5月の青い空の下、白い花がじゅうたんのように見える。それは見事な風景である。遺伝子組み換えとは無関係に、自然は美しい風景を演出させる力を持っている。

 薔薇を剪(き)る鋏刀(はさみ)の音や五月晴れ 正岡子規

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写真 1、2は草ぶえの丘バラ園で。1は「ふれ太鼓」という品種 3、わが家の庭に咲いた「ほのか」 4、調整池周辺の野いばら

1482 花が香り立つ季節 バラは五月晴れが似合う

1237 悲しみのために花となる 殿堂入りバラ園にて

446 コーヒーオベーション バラの季節に 122 バラの街 福山城が目の前に 1238 一面が白い幻想の世界 ノイバラ咲く調整池