小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1476 桐の花が咲く季節 漂うトチノキに似た芳香

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 散歩道の斜面にある桐の花(俳句の季語は夏)が満開だ。いつもの年よりも早く花が咲いている。ことしの八十八夜(立春から88日目)は5月1日、立夏は5月5日だ。紫の筒状の花を見て、季節は春から夏へとバトンタッチをしていることを実感する。

 桐の木の下を通ると、かすかな芳香がする。桜餅や柏餅に似た香り、あるいはマロニエの花の香りにも似ているらしい。そういえば、散歩道にあるトチノキもいま白い花が咲き始めている。4月の終わりは、花々の芳香の季節でもあるのだ。  

 桐の花の向こうには小さな森が見え、青葉が茂っている。小学校で習った「茶摘」作詞・作曲や未詳)を歌いたくなった。

「夏も近づく八十八夜 野にも山にも若葉が茂る 『あれに見えるは茶摘じゃないか あかねだすきに菅の笠』」という歌だ。『日本のうた300、やすらぎの世界』(講談社α文庫)によれば、明治45(1012)年に「尋常小学唱歌(3)」に発表された歌で、歌詞は民謡の「茶もみ唄」や「京都の宇治田原の「茶摘み歌」などをもとに書かれたようだ。のどかな歌である。  

 八十八夜にはいろいろいわれがある。例えば日本人の主食である米という字は八十八を組み合わせたもので、かつて米づくりは八十八の手間がかかるといわれ、この数字は末広がりで縁起がいいため八十八夜は豊作祈願の行事や夏の準備を始める吉日になっていたという。現代の米づくりは機械化が進み、八十八夜に豊作祈願をする地域も少なくなっているかもしれない。それでも八十八夜と聞くと、だれもがいい季節なのだと思うのではないか。  

 この季節は「野にも山にも若葉が茂る」という表現が似合うように、雨上がりの中で緑が目に優しい。森からはウグイスとキジが競うように鳴いているのが聞こえる。森に面する調整池ではウシガエルが「ブオー」という騒々しい声を響かせている。ハナミズキオオデマリの白い花は散り始め、交代するようにツツジが咲き、バラのつぼみがふくらんでいる。さあ書を捨てよ、町へ行こう!

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