小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

ジャーナリズム

1855 修羅場に出る人間の本性 喫茶店の会話から

最近、新聞を読んでいて米国の政治家・物理学者ベンジャミン・フランクリンの言葉を思い浮かべることが多い。今朝もそうだった。この言葉を「実践している」(皮肉です)に違いない政治家や官僚のことが朝刊に出ていた。私だけでなく普通に生きている人にと…

1849 福島の昆虫や野鳥に異変か「慢」の時代への警鐘

福島に住むジャーナリストの大先輩から届いた賀状に気になることが書かれていた。昨年からトンボが飛んでいない、コオロギの鳴き声も聞こえない、セミの声は弱々しい、ホタルの光も印象が薄い……。昆虫だけでなくスズメやツバメなどの野鳥の数も減ったように…

1842 地球は悲劇と不幸を満載した星 権力悪と戦った長沼節夫さん逝く

私は30歳のころ、東京の新宿署を拠点に警察を担当する「4方面クラブ」に所属していた。いわゆるサツ回り記者である。地方の支社支局を経ているとはいえ、駆け出し記者だった。ほかの社も、私と同様に地方を経験して社会部に配置された記者が多かった。そ…

1838 事実の記録に徹する 日航ジャンボ機事故を追跡取材した記者

世の中で起きている様々な事象は「事実」と「真実」がある。手元の広辞苑には「事実」は「実際に起こった事柄」とあり、「真実」は「表現されたものの内容にうそ偽りがないこと。また、本当のこと。偽りのないものと認識された事柄。特に、物事の奥深くにひ…

1831 日本メディアとイングランドチームに喝 ラグビーW杯余聞

日本開催で盛り上がったラグビーのワールドカップ(W杯)。2日に横浜国際総合競技場で行われた決勝で南アフリカがイングランドを32-12で下し、3大会ぶり3度目の優勝を飾った。その表彰式でイングランドチームが取った行動に批判が集まっている。海…

1824 国籍と政治性排除のはずが ノーベル賞お祝い報道に?

今年のノーベル化学賞に、スマートフォンや電気自動車に使われるリチウムイオン電池を開発した吉野彰さん(71)ら3人に贈られることが決まった。何よりのことである。吉野さんの受賞で日本のノーベル賞受賞は27人目になるという。しかし、アレフレッド…

1821 多くは虚言なりか 闇深き原発マネーの還流

吉田兼好の『徒然草』第73段に「世に語り伝ふること、まことにあいなきにや、多くはみな虚言(そらごと)なり」という言葉ある。国文学者の武田友宏は角川ソフィヤ文庫の『徒然草』で、この段を「『うそ』の分析」と題し解説を加えている。関西電力高浜原…

1816 正義の実践とは 東電旧幹部の無罪判決に思う

机の後ろの本棚に『ことばの贈物』(岩波文庫)という薄い本がある。新聞記事やテレビのニュースを見ながら、時々この本を取り出して頁をめくる。そのニュースに当てはまる言葉ないかどうかを考えるからだ。福島第一原発事故をめぐる東電旧経営陣3人に無罪…

1809「おりた記者」から作家になった井上靖 適材適所のおかしさ

このブログで時々言葉について書いてきた。今回は「常套(じょうとう)語」である。「套」は内閣告示の常用漢字表にないことから、報道各社の用語集(たとえば共同通信記者ハンドブック)では、これを「決まり文句」に言い換えることになっている。しかし、…

1804 政治の身勝手さ感じる8月 民意との乖離のあいさつ

広島、長崎の原爆の日と終戦の日を送って、74年前の出来事をそれぞれに思い出した人が多いだろう。共通するのは、戦争は2度と繰り返してはならないということだと思う。原爆犠牲者の慰霊式典(広島は平和記念式典=広島市原爆死没者慰霊式並びに平和祈念…

1798 チャーチルとジョンソン 英国首相の未来

ウィンストン・チャーチルといえば、英国の元首相で20世紀を代表する政治家の1人といっていいだろう。政治家でありながら、1953年には「第二次大戦回顧録」を中心とする著作活動でノーベル文学賞を受賞している文人でもあった。欧州連合(EU)から…

1794 新聞と誤報について ハンセン病家族訴訟・政府が控訴断念

朝の新聞を見ていたら、「ハンセン病家族訴訟控訴へ」という記事が一面トップに出ていた。朝日新聞だ。ところが、朝のNHKや民放のニュース、共同通信の記事は「控訴断念の方針固める」と正反対になっている。どちらかが誤報なのだろうと思っていたら、安…

1792 新聞記者とは 映画と本から考える

かつて新聞記者は若者の憧れの職業の一つだった。だが、最近そうした話は聞かない。背景にはインターネットの発達や若者の活字離れなどがあり、新聞自体が難しい時代に直面していることを示している結果なのだろう。そんな時、『新聞記者』という題名に惹か…

1781「政治とは距離を置く」 仏地方紙の気骨を羨む

フランスのマクロン大統領が複数の地方紙のインタビューに応じた際、大統領府が記事を掲載する前に見せるよう求めていたことが明らかになった。記事の事前検閲といえる。反発した一部の地方紙はインタビューに加わらなかったという。「政治とは距離を置く」…

1774 4月28日は何の日か 沖縄問題素通りの日米首脳会談

10連休2日目の4月28日は、サンフランシスコ平和条約(対日講和条約)が発効した日だ。第2次世界大戦後、米国を中心とする連合国に占領されていた日本が各国との間でサンフランシスコで平和条約を調印したのは1951年9月8日で、この条約は翌52…

1762 無頼の人がまた消えた 頑固記者の時代は遠く

私がこの人に初めて会ったのは、ホテルオークラと米国大使館側の裏玄関からエレベーターに乗った時だった。共同通信社はかつて虎ノ門にあった(現在は汐留)。7月。この人は白系統のサマースーツ姿で、まぶしいばかりだった。東京の人は気障だなと思った。…

1761 浜辺の風景が変わっても 3・11から8年

あの日から8年が過ぎた。3・11東日本大震災である。8年前の記憶は人それぞれにしても、現代に生きる日本人にとって忘れがたい大災害だった。大災害に襲われた福島、宮城、岩手の3県だけでなく茨城、千葉の沿岸部の被災地で「これまでの経験から、避難しなく…

1750 厳寒の朝の話題 ジャーナリズムの原点

今朝の最低気温は氷点下1度で、この冬の最低を記録した。寒い地方の人から見れば、千葉はその程度なのといわれるかもしれないが、やはり体にこたえる。毎朝、近所の広場で続いている6時半からのラジオ体操の参加者は、真夏だと約40人いる。それなのに今…

1749 本土作家が描いた苦闘する沖縄の姿 真藤順丈『宝島』を読む

沖縄には「ナンクルナイサ」(どうにかなる、何とかなるから大丈夫)という言葉がある。だが、この本を読んで、言葉の響きは軽くてもその意味は重いのではないかと考えた。それほどに本土に住む私でも胸が苦しくなるほど、沖縄は米軍と日本政府に苦しめられ…

1743 琉球王朝の初春儀式を見る 続・坂の街首里にて(3)

新年を首里で迎えた。すぐ近くの首里城では約450年続いた琉球王朝時代に行われていた正月の儀式が公開された。初もうでは首里城周辺の3つの寺を回った。私の干支・酉年にちなむ寺で引いたおみくじは大吉だった。 さて、今年の世相はどうなるのだろう。沖…

1737「12・14は屈辱の日」 名護市の土砂強行投入、民意は?

沖縄に関する動きの中で、幾度となく「沖縄県民の気持ちに寄り添う」という言葉が使われた。6月23日の沖縄全戦没者追悼式と10月12日の玉城デニー沖縄知事との会談で安倍首相が、さらに10月9日の翁長知事県民葬で首相の言葉を代読した菅官房長官も…

1736 犯人は過酷な人生? 3億円事件から50年

東京・府中で3億円事件が発生したのは今から50年前の1968年12月10日だった。「強盗罪」なら公訴時効は10年だが、この事件は「窃盗罪」に該当したため7年後の1975年12月10日に時効となり、警視庁の捜査本部も解散した。時効成立後43…

1735 77年前の12月の朝 NBCがAPの至急報

今から77年前の1941(昭和16)年12月8日未明(ハワイ時間7日朝)、旧日本軍は米国のハワイ真珠湾を奇襲攻撃した。この朝ラジオで大本営発表を聞いた多くの日本国民は狂喜し、大国を相手にした戦争に勝てると信じた。一方、攻撃された米国では、…

1730 10年で1000万部減の新聞 使命を忘れたら衰退の一途

日本の新聞の発行部数は約4213万部(2017年・日本新聞協会)で、この10年で1000万部減ってしまった。驚くべき数字である。毎年100万部ずつ減少しているわけだ。この状態だと2018年の現在は4100万部台で、4000万部を割るのも時…

1727 日韓草の根交流半ばの死 ある記者の思い出

日韓関係が危うい。韓国大法院の元徴用工に対する賠償判決、そして日韓両政府の合意で設立された慰安婦問題に対応する「和解・癒し財団」の韓国政府による解散表明は、嫌韓日本人を増加させている。こんな現状を見るにつけ、私は今年夏にこの世を去った一人…

1717 AIが記者になる日 会見場の異様な人間マシン

テレビで記者会見のニュースや中継を見ながら、違和感を持つことが続いている。会見で質問をする側の記者たちが相手の話をパソコンに記録しようと、一心にキーボードを打っている。あれじゃあ相手が言ったことを記録するだけで、ろくな質問ができないだろう…

1713 寛容よりも道義 異論のススメへの異論

朝日新聞に佐伯啓思という京大名誉教授が「異論のススメ」という評論を載せている。2017年11月、朝日の当時の木村伊量社長が東電福島第一原発事故をめぐる「吉田調書」の記事や慰安婦報道の取り消しなど、一連の事態の責任を取って辞任した後に「あの…

1712 読書の秋 乱読・つんどく

急に涼しくなり読書の秋を迎えた。このところフィクション、ノンフィクションの区別なく興味があれば読んでいる。以下は9月から最近までに読んだ本(再読も含む)の寸評。 ▽前川喜平ほか『教育のなかのマイノリティを語る』(明石書店) 前川氏は元文科事務…

1709 ニュースに見る現代社会 貴乃花・新潮45・伊方原発訴訟

朝刊を開いて、載っているニュースについて考えることが日課になっている人は少なくないだろう。私もその一人である。けさは3つのニュースが目についた。大相撲の貴乃花親方の退職届、雑誌「新潮45」の休刊、そして四国電力伊方原発の運転認める広島高裁…

1702 繰り返す自然災害 想定外からブラックアウトへ

「予(われ)、ものの心を知れりしより、四十(よそじ)あまりの春秋(しゅんじう・しゅんしう)をおくれる間に、世の不思議を見ること、ややたびたびなりぬ(「私は物事の分別がつくようになったころから、40余年の歳月を送ってきた。その間に常識ではあ…