小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

ジャーナリズム

2012 どこを向く新聞社 孤軍奮闘・信濃毎日の社説

新聞各社は東京五輪・パラリンピックについて世論調査を実施し、開催中止や再延期の声が強いことを伝えている。しかし、新聞社自体がコロナ禍での開催についてどのような姿勢なのか、よく分からない。そんな中で長野県の地方紙、信濃毎日新聞(信毎)が「政…

2009 歴史に刻まれるミャンマー民衆への弾圧 ゴヤの『1808年5月3日』想起

クーデターによって政権を奪ったミャンマーの軍事政権が、これに反対する市民に容赦なく銃を向け、虐殺を繰り返している。その光景はスペインの画家、フランシスコ・デ・ゴヤ(1746~1828)の『1808年5月3日』(あるいは『1808年5月3日…

2008 世界が問われる力試し『岸恵子自伝』から

「世界を覆うコロナ・ウイルスが世の中をどう変えるのか、人間の力試しが答えを出すのだろう」……これは、女優で作家、国際ジャーナリストの岸恵子さんが自伝『岸恵子自伝 卵を割らなければ、オムレツは食べられない』(岩波書店)の中で、コロナ禍に触れた一…

2003 ああ、不元気日本! 続くメーカーの身売りと譲渡

かつて「made in Japan」は、品質に優れた日本製品の代名詞だった。そんな言葉もいつの間にかほとんど聞かれなくなった。日本のメーカーの元気のなさばかりが目に付く昨今だ。音響メーカー「オンキヨー」は、主力のスピーカーやアンプなどの「ホームAV事業」…

2002 五輪が歓迎される時代の終焉 竹ヤリ精神で乗り切れるのか

BS放送で映画『グラディエーター』(ローマ帝国時代の「剣闘士」のこと)を見た。以前にも見たことがある、ローマのコロッセウム(円形劇場=闘技場)で闘う剣闘士を描いた大作だ。既にコロッセウムのことを書いたブログでも紹介しているのでここではその内…

2001 10年以上前にパンデミックを警告「こちらからウイルスを見つけに行け」と

10年以上も前に、新型コロナ感染症の出現を予言するような記事が書かれていた。当時、深く考えずに読み流した。感度が鈍かったのは、私だけではないようだ。《はたして人類を襲う『次のパンデミック』は豚インフルエンザなのか、それとも鳥インフルエンザ…

1999 あるジャーナリストの短い生涯『そして待つことが始まった 京都 横浜 カンボジア』を読む

20世紀は「戦争の世紀」といわれた。第1次に続く第2次世界大戦終結後も、世界の戦火は消えない。このうちアジアが戦場になったベトナム戦争、カンボジア紛争(内戦)では多くの記者たちが命を落とした。この中に共同通信社の石山幸基記者も入っていた。…

1997 新しい夜明けを待つ心 コロナ禍の現代に考える

10年ひと昔という。しかし、世の中の動きが早い現代から見ると、10年前はひと昔どころか、もっと遠い日のことのように思えてならない。こんなことを書くと、2011年3月11日の被災地の皆さん、特に東電福島第一原発事故で故郷を離れざるを得なかっ…

1991 盤根錯節に遇いて利器を知る 他山の石より自民の石

政治家の言動を見ていますと、本当に勉強になります。自分の常識が間違っているのではないかとさえ思うことがしばしばあります。先日、元法相の河井克行衆院議員が、公選法違反(買収)事件の裁判で、これまでの無罪の主張を一転させました。河井氏は起訴事…

1987 被災地で感じる胸の痛み(再々掲)

東日本大震災から10年になった。政府主催の「十周年追悼式」が11日、国立劇場(東京都千代田区)で開かれた。菅内閣は「復興の総仕上げの年」と称して、追悼式を今回で打ち切る方針だという。本当に総仕上げといえるほど復興は進んでいるといえるのだろう…

1985「不正のない国で暮らしたい」ミャンマー・デモ参加の女性に学ぶ

「自由で幸福で不正のない国で暮らしたい」。だれでもがこの言葉に異存はないはずだ。わが日本。自由はまあまあある。幸福はどうだろう。健康で文化的で普通の暮らしができ、家族や友人に恵まれていれば、まあ幸福か。自分が幸福かどうかは、人によって受け…

1970 散歩途中考えること 不可思議な世論調査

ここ1年私の散歩コースでもある遊歩道で平日、散歩やジョギングする人が少なくない。コロナ禍が影響していることは間違いないだろうと思われる。散歩は「(行く先・道順などを特に決めることなく)気分転換・健康維持や軽い探索などのつもりで戸外に出て歩…

1967 コロナ対策でアジア最大の失敗国になる恐れ カタカナ用語氾濫の中で

「日本はコロナ対策でアジア最大の失敗国になりつつある」「ウイズコロナという政策は愚策」――ある学者の政府のコロナ対策に関する評価だ。客観的な見方だと思う。しかし、こうした声が首相官邸、政府与党には届かないのだろうか。危機のときだからこそ、政…

1966 今の日本に必要なものは 半藤一利が残した言葉

今の日本に必要なのは何か? 12日に90歳で亡くなったノンフィクション作家の半藤一利は、『昭和史 戦後篇』(平凡社)で5つの項目を挙げている。コロナで後手、後手に回る政府の対応策を見ていると、そのほとんどが欠けているように思えてならない。そ…

1948 世界が疫癘に病みたり デフォーが伝えるペスト・パニック

ロンドンが疫癘(えきれい)に病みたり、 時に1665年、 鬼籍に入る者(注・死者のこと)の数(かず)10万、 されど、われ生きながらえてあり。 H.F. ダニエル・デフォー著/平井正穂訳『ペスト』(中公文庫)は、この短い詩で終わっている。 「疫癘」は…

1941 過ちに気づき始めた世界の人々 核兵器禁止条約発効へ

核兵器を全面禁止する核兵器禁止条約を批准した国・地域が発効に必要な50に達した。中米ホンジュラスが新たに批准したことで、90日後の来年1月22日に発効することになった。それでも岸防衛相は「核の保有国が加われないような条約で、有効性に疑問を…

1936 時代を反映する鉄道 京葉線30年の歩み

東京ディズニーランドに行くため、JR東京駅から京葉線で舞浜まで乗ったことがある人は多いはずだ。京葉線の東京~蘇我間43キロ(西船橋ルート11・3キロを含めると京葉線は54・3キロ)が全面開業したのは1990(平成2)年3月10日のことで、…

1934 ある新聞人の苦悩の戦後 沖縄再訪への思い抱きながら

沖縄・那覇に「戦没新聞人の碑」がある。沖縄以外ではあまり知られていないが、今から54年前の1966(昭和36)年9月30日に除幕された、太平洋戦争の沖縄戦で亡くなった14人の新聞関係者を慰霊する碑である。沖縄戦ではおびただしい民間人が犠牲…

1933 流れに逆らう勇気 政権は高支持率だが……

人がみな 同じ方向に向いて行く。 それを横から見てゐる心。 (石川啄木『悲しき玩具』より) 報道機関の世論調査で、30%台まで下がった安倍晋三内閣の支持率が、安倍氏の退陣表明(8月28日)直後に70%を超える驚異的回復を見せた。安倍政治の継承…

1926 学べき悔恨の歴史 秘密文書に見るユダヤ人問題

前回のブログで、ナチス・ドイツの強制収容所アウシュヴィッツにあったオーケストラのことを書きました。引き続きこれに関連したことを記したいと思います。太平洋戦争中、日本政府が人口・民族政策に関する研究を行い、秘密文書をまとめていたことはあまり…

1920 旭川を愛し続けた人 少し長い墓碑銘

せきれいの翔(かけ)りしあとの透明感 柴崎千鶴子 せきれいは秋の季語で、水辺でよく見かける小鳥である。8月も残りわずか。暑さが和らぐころとされる二十四節気の「処暑」が過ぎ、朝夕、吹く風が涼しく感じるようになった。晩夏である。遊歩道に立つと、…

1916 別れの辛さと哀しみ 遠い空へと旅立った友人たちへ

私らは別れるであらう 知ることもなしに 知られることもなく あの出会つた 雲のやうに 私らは忘れるであらう 水脈のやうに (立原道造詩集「またある夜に」より・ハルキ文庫) 梅雨が明けたら、猛烈な暑さが続いている。そんな日々、友人、知人の訃報が相次…

1915 20年後の新聞 紙の媒体は残るのか

「20年後も(新聞が)印刷されているとしたら、私には大変な驚きだ」。アメリカの代表的新聞であるニューヨーク・タイムズ(NYT)のマーク・トンプソン最高経営責任者(CEO)の発言を聞いて、驚く人、悲しむ人、当然だという人……さまざまな感想があ…

1889 信頼性を失った新聞の衰退 インテグリティを尊重せよ

新聞の契約更新にきた販売店の人に「コロナで折り込み広告も少なくなって大変でしょう」と聞いてみた。すると「うちはそんなにありませんが、コロナの感染拡大で新聞を取るのをやめる人がかなり出ています。折り込みの減少でやめた店(販売店)もありますよ…

1888 烈風に飛ばされる人命 コロナ禍は21世紀最大級のニュース?

20世紀最大のニュースは「第2次世界大戦」だ。世界で軍人・民間人総計5000万~8000万人が死亡した(8500万人説もある。日本は約310万人)といわれる。20世紀は戦争の世紀だった。このほかにも第1次世界大戦をはじめ朝鮮戦争、ベトナム…

1885 新聞離れ助長が心配 検事長と新聞記者の麻雀

新聞はかつて第4の権力といわれるほど影響力が大きかった。現在でも以前ほどではないが、新聞の力は侮れない。だが、インターネットの普及もあって若い世代の新聞離れが顕著であり、新聞業界が斜陽産業の道を歩んでいることは、誰しもが認めることだろう。…

1870 何といふ怖しい時代  山村暮鳥の「新聞紙の詩」から

群馬県出身の詩人で児童文学者、山村暮鳥(1884~1924)の作品に「新聞紙の詩」という詩がある。それは、新型コロナウイルスによる感染症が大流行をしている昨今の内外の現象を表現したような、何とも気になる内容なのだ。暮鳥の詩の中には「一日の…

1865 マロニエとクスノキの対話 困難な時代だからこそ

3月もきょうで終わり。木々も芽吹き始める季節である。私が体操広場と呼ぶ広場にあるマロニエ(トチノキ)も少しずつ葉を出しつつある。葉の出し方は個体差があり、新緑が美しい木もあれば、まだ全く芽吹きのない木もある。明日から4月、広場は急速に緑に…

1863 チャイコフスキーの魂の叫び 感染症と闘う時代に

日本は光の春なのですが、世界は不穏な時を迎えています。皆さんはどんな日々を送っているでしょうか。新型コロナウイルス感染症の世界的流行によって、多くの人たちは圧倒的に「不安」を抱いているといっていいかもしれません。私はチャイコフスキーの交響…

1858 何も悪いことをしていないのに……上野敏彦著『福島で酒をつくりたい』を読む

9年前の東日本大震災は多くの人々に大きな影響を与えた。特に原発事故の福島では、今なお避難先から住み慣れた故郷に戻ることができない人々が数多く存在する。山形県長井市で「磐城壽」という日本酒づくりに取り組む鈴木酒造店も原発事故によって福島を追…