小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1831 日本メディアとイングランドチームに喝 ラグビーW杯余聞

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 日本開催で盛り上がったラグビーのワールドカップ(W杯)。2日に横浜国際総合競技場で行われた決勝で南アフリカイングランドを32-12で下し、3大会ぶり3度目の優勝を飾った。その表彰式でイングランドチームが取った行動に批判が集まっている。海外メディアが報じたことで問題が大きくなったが、これに気が付かなかったのか、ロンドン発でカバーするという恥ずかしい結果を残した報道機関もあった。  

 テレビで決勝を観戦していた。表彰式が始まると、まず準優勝のイングランドの選手たちがビル・ボーモント・ワールドラグビー会長(元イングランドブリティッシュ・ライオンズ主将)から銀メダルを首に掛けてもらった。しかし、ロックのマロ・イトジェは首に掛けることを拒否して、手で受け取るのが映っていた。彼以外にも掛けられたメダルをすぐに首から外す選手もいた。テレビは優勝した南アチームを中心に映していたため正確な人数は不明だが、南アチームが金メダルをもらっている間に映し出された映像では、イングランドのかなりの選手はメダルを首から外していた。優勝するという姿勢で試合に臨んだものの、完敗してしまった悔しさの表れなのだろうが、見ていて不愉快だった。  

 ラグビーイングランド(英国)中部のラグビーという町にあるパブリックスクールラグビー校で生まれたといわれる。同校が紳士を養成する学校として発展した経緯もあり、ラグビーは紳士のスポーツというのが代名詞である。試合が終わると、激しく戦った両チームはノーサイド(試合が終わると、敵味方の区別がなくなる)として、互いの健闘を称える。しかし、今回、ラグビー発祥の国の代表として決勝まで勝ち上がったイングランドチームは、決して紳士ではなかった。  

 表彰式でのあの行為もそうだし、準決勝の相手、ニュージーランドチームが試合前に伝統のハカを演じた際もそうだった。イングランドチームはハカに対し、V字の陣形を組んだ。だが、数選手が規定に反してハーフウェーラインを越えたためワールドラグビーから罰金(額は日本円で約35万円程度らしい)を科されたのだ。昨今の英国を見ていると、紳士の国とは思えない行動を取る政治家もいるから、ラグビー選手にもそれが伝染してしまったのかもしれない。  

 この問題をめぐり、以下のような短い記事を見て驚いた。日本のニュースのはずが、なぜロンドン発なのだろうと訝った。 【ロンドン共同】ラグビーのワールドカップ(W杯)決勝で南アフリカに負けたイングランド代表選手らが2日、試合直後の表彰式でメダルを首に掛けるのを拒んだり、すぐに外したりした。ファンから「潔く負けを受け入れていない」などと批判の声も上がった。英メディアが伝えた。ロックのイトジェはメダルを首に掛けられるのを拒否。他のイングランド選手の多くもメダルをすぐに首から外しており、ツイッターでは「スポーツマンらしからぬ行動だ」と批判的な投稿が相次いだ。  

 共同通信の47NEWSに3日午前6:36にアップされた記事である。日本代表がベスト8まで残り、盛り上がった大会の決勝だったから、当然多くの記者が取材に駆り出されたはずだ。だが、記者たちは表彰式の取材まで手が回らなかったのだろうか。この記事以外に、日本で書いたと思われる関連の記事は見当たらないから一部のスポーツ紙を除き一般紙の朝刊に、イングランドチームのメダル拒否の記事は出ていない。共同通信はロンドン支局の記者が自国のニュースをカバーした形だが、何ともしまらない報道ぶりといえる。張本さん流にいえば、当然「喝」である。

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