小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

災害

1470 熊本地震と私たちの国の現実 地図を見て考える

熊本が大地震に見舞われ、苦境にある。被災者の方々にお見舞いを申し上げたい。いま私は日本地図を取り出し、後の方に出ている「熊本県全図」を見ている。県の全体図に細かい地名が載っている。旅をする前なら地図を見ることは楽しい。だが、被災地を地図で…

1469 つり橋と日本列島 明日への希望を

熊本で14日夜、最大震度7(激震、家屋の30%以上が倒れ、山崩れや地割れができる)という強い地震が発生し、多くの被害が出ている。気象庁が定めた震度階級のうち最も高い( 強い)震度であり、九州では初めてという。日本が地震国であることを再認識さ…

1465 未曾有の災害乗り超えて 『霊性の震災学』を読む

学問的には幽霊は研究外という。幽霊と聞くと、オカルトや霊性という言葉を思い浮かべる人も多いだろう。それは心が穏やかではない、背筋が凍る話である。しかし、東日本大震災後の被災地では幽霊現象が相次いだという。震災直後に回った宮城県でそのことが…

1460 なぜ日本は原発大国になったのか 『原子力政策研究会100時間の極秘音源』

『原子力政策研究会100時間の極秘音源―メルトダウンへの道―』(新潮文庫)という題名からは、やや難解な原子力に関する本であることを想像させる。 だが、そうではない。戦後の原子力開発=原発の導入、原発をめぐる安全神話の醸成という問題の真相に迫った、…

1454 大震災・原発事故を生き抜く 悪漢から逃れる薄幸の少女「バラカ」

桐野夏生の新刊『バラカ』(集英社)に描かれる日本は、悪い奴が跋扈している。大震災の前と後の日本社会。日本にきていた日系ブラジル人同士の両親から生まれ、「バラカ」と名付けられた女の子の数奇な運命を軸に物語は進行していく。そこに描かれる、悪い…

1453 3・11から5年 モーツァルトのレクイエム「涙の日」

「罪ある人 裁きを受けるために 塵より蘇える日 それは涙の日」 『レクイエム』(死者のためのミサ曲)の第7曲「ラクリモサ」の第8小節でモーツァルトの筆は途絶えた。それから間もない1791年12月5日未明、かつて神童といわれた音楽家は35歳とい…

1448 雪についての雑感 登校の子ら足遅く

暖冬が続いていると思ったが、うっすらと雪が積もった。この地域(千葉市の南部)では、2014年2月8日から9日の大雪以来、積雪はなかったから久しぶりのことである。家の前を、雪が大好きな子どもたちがはしゃいで登校している。 2年前の大雪の際のこ…

1436 モラルハザードとバス事故 恐怖のニュートラル走行

長野県軽井沢町で発生したスキーツアーバス事故で、バスのギアがニュートラル状態にあったというニュース流れている。ニュートラルとは、ギアがかみ合わずに動力が伝達されない状態のことで、下り坂でこの状態になるとエンジンブレーキは当然かからないから…

1430 大空に輝く初日に寄せて 届いた「古里はいま」の詞

大空のせましと匂う初日かな(田川鳳朗) 6時半前に起き、近くの公園のラジオ体操会場に行くと参加者は10人余と普段の3分の1程度しかいない。東の空には金星が西の空には半月と木星が輝いている。体操が終わって、散歩コースの調整池に向かう。7時。次…

1412 湖とりまく山の紅葉 日光にて

湖をとりまく山の紅葉かな 俳人の正岡子規が日光を訪れたのは明治25年10月30日のことだ。前日、宇都宮に入った子規はこの日、日光に足を伸ばし、華厳の滝や中禅寺湖を見て、翌31日に東照宮に参拝している。子規はこの旅で『日光の紅葉』という俳句入りの短い…

1400 大災害で救助された人間と犬 5万年前からの家族

今月10日、北関東を流れる鬼怒川の堤防が茨城県常総市で決壊した。濁流に襲われて街が消える状況を映したテレビ画面は2011年の東日本大震災を想起するものだった。屋根に取り残された年配の夫婦と思われる2人がそれぞれ犬を抱えて、自衛隊のヘリによ…

1400 大災害で救助された人間と犬 5万年前からの家族

今月10日、北関東を流れる鬼怒川の堤防が茨城県常総市で決壊した。濁流に襲われて街が消える状況を映したテレビ画面は2011年の東日本大震災を想起するものだった。屋根に取り残された年配の夫婦と思われる2人がそれぞれ犬を抱えて、自衛隊のヘリによ…

1385 大災害から復興したオランダの古都  フェルメール・「デルフトの眺望」

8月になった。部屋の絵カレンダーをめくると、今月は日本でも人気が高いヨハネス・フェルメール(1632~75)の風景画『デルフトの眺望』だった。フェルメールが自分の生まれ故郷、オランダ南ホラント州デルフトの朝の町並みを描いた作品だ。1660〜16…

1357 日本政府の遅い対応 ネパール地震に思う

ネパールでM7・8の大地震が発生し、多くの犠牲者が出ている。そのニュース映像を見ていて、あらためて自然の脅威を感じ、東日本大震災を思い出した人は少なくないだろう。 あの大震災から4年が過ぎている。 しかし、被災地の復興は道半ばであり、原発事故…

1347 東日本大震災・原発事故から4年 人の心に浮かぶもの

「福島の原発事故が日本という高度な技術水準を持つ国でもリスクがあり、事故は起きるのだということを如実に示した。私たちが現実に起こりうるとは思えないと考えていたリスクがあることが分かった」 「エネルギーの3分の1を原発が担っている。それが止まっ…

1333 三日月残る朝 阪神大震災から20年

このごろの6時過ぎの時間は、まだ夜が明け切っていない。東の空には三日月が残っていて、散歩道を照らしてくれている。道の両側の土の部分には霜柱が立っている。小寒から大寒へと続く厳冬期である。 1月17日は、阪神淡路大震災から20年目の節目の日である。…

1326 照明の陰影 LEDと現代

いま、照明はLEDの全盛時代になった。だが、いまから40年前の1974年当時、日本社会は室内照明に陰影を大事にする「ほの暗い時代」を迎えつつあった。いまでは考えられないことだが、そんな時代があったことを懐かしく思い出している。 手元に、「深代惇郎の天声人語」(朝…

1325 思い浮かべる漢字は「遠」 旅、選挙、大震災……

庭から出ると遊歩道がある。その植え込みの中から、一本だけ背が高くなった水仙の花が咲いた。自然の生命力が、悪条件を乗り越えて花を咲かせたようだ。 正岡子規は「水仙の僅に咲て年くれぬ」(明治30年)という俳句をつくっている。きょうは23日だから、こ…

1325 思い浮かべる漢字は「遠」 旅、選挙、大震災……

庭から出ると遊歩道がある。その植え込みの中から、一本だけ背が高くなった水仙の花が咲いた。自然の生命力が、悪条件を乗り越えて花を咲かせたようだ。正岡子規は「水仙の僅に咲て年くれぬ」(明治30年)という俳句をつくっている。きょうは23日だから、こ…

1324 津波で亡くなった息子供養の観音像 友人のブログから

東日本大震災で、息子2人を亡くした仙台市宮城野区の父親が自力で観音像を建てたという話を友人がブログで紹介している。 「舟要観音(しゅうようかんのん)」という2人の名前が由来という観音像には、「2人の息子さんや同地区の300人余の犠牲者に対す…

1324 津波で亡くなった息子供養の観音像 友人のブログから

東日本大震災で、息子2人を亡くした仙台市宮城野区の父親が自力で観音像を建てたという話を友人がブログで紹介している。「舟要観音(しゅうようかんのん)」という2人の名前が由来という観音像には、「2人の息子さんや同地区の300人余の犠牲者に対す…

1318 「がんばっぺ までいな村」 原発事故で全村避難の飯舘村が絵本に

東日本大震災から3年8カ月が過ぎた。東京電力福島第1原発事故で、避難した福島の人々の多くは依然として故郷に帰る見通しがつかないまま、むなしい日々を過ごしている。その中に全村避難となった飯舘村の人たちが含まれている。 日本のふるさとのような存在…

1318 「がんばっぺ までいな村」 原発事故で全村避難の飯舘村が絵本に

東日本大震災から3年8カ月が過ぎた。東京電力福島第1原発事故で、避難した福島の人々の多くは依然として故郷に帰る見通しがつかないまま、むなしい日々を過ごしている。その中に全村避難となった飯舘村の人たちが含まれている。日本のふるさとのような存在…

1308 報道写真家が入れない領域  混迷度増す現代社会

日本百名山の一つ、御嶽山が9月27日に噴火して戦後最悪の死者を出した。あれから間もなく3週間になるが、きょう16日で、行方不明者の捜索活動は打ち切られた。山はもう冬なのである。 御嶽の噴火では登山者によって多くの写真が撮影された。ほとんどが…

1303 福島から季節の便り 「くだものの宝石箱」の取り組み

福島の知人から旬の果物、梨(二十世紀)が届いた。早速いただいた。瑞々しくて、甘い。「2014年 梨園たより」というパンフレットが同封されていた。そのパンフからは、原発事故の影響で苦労する果樹園の姿がしのばれた。 「今年の2月14、15日にか…

1302 御嶽の噴火に思う 人智を超えた自然の脅威

噴火した御嶽は深田久弥の『日本百名山』の60番目に出てくる日本アルプスの中で「別格」の山である。NHKの報道によると、この噴火によって、登山中だった31人が心肺停止状態だという。けが人も多数出ており、火山国日本の自然の脅威を実感する。山で…

1279 hana物語(21) 白露の季節

はな、ありがとう。 はなが来てくれたおかげで 私たちの世界が広がって 豊かな毎日になったよ。 一緒にお散歩することで 花の香りや季節の変化を感じたり。 人間以外の動物がかわいいと 思えるようにもなった。 はなには感謝することばかりです。 また会おう…

1271 hana物語(13) 3・11のこと

2011年3月11日の東日本大震災は私の「個人史」の中で特筆すべき事象であり、同じ思いの人たちは少なくないはずだ。11年という短い生涯だったhanaにとっても、衝撃的な大地震だったに違いない。当時我が家で産後の静養中の長女が留守番をしてい…

1250 マレーシア航空機撃墜で「藪の中」を考える 現実の機微は……

「藪の中」という言葉がある。広辞苑には「関係者の言うことが食い違っていて、真相が分からないこと」とある。芥川龍之介の短編小説『藪の中』が、この語源といわれる。ウクライナで起きたマレーシア航空機撃墜事件でも、ウクライナ対親露派・ロシアの言い…

1239 故郷の原風景とは 盲目の詩人の静かな問いかけ

「コールサック」という詩誌に、金沢在住の詩人、うおずみ千尋さん(69)が「盲目の日に」という連載エッセイを載せている。最新号の78号には「故郷の風景―3月11日に寄せて―」と題して、うおずみさんが故郷の福島県いわき市で送った少女時代の思い出…