小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1931今年も咲いたアメリカデイゴ 台風禍からの復活

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 自然界の復元力、なんていうとやや大げさかもしれない。  

 近所の遊歩道脇に植えてあったアメリデイゴ(和名・海紅豆=カイコウズ)が昨年9月の台風15号で倒され、市から依頼された業者によって根元からきれいに切り取られた。毎年初夏から晩夏まで花を咲かせていたアメリデイゴ。今年はこの花を見る楽しみはなくなったと思っていた。しかしその予想は外れ、春になると「ひこばえ」が次々に出てきて例年通り赤い可憐な花が咲いた。  

 それは、やはり自然の復元力であり、花を見ながら、人間もこうありたいものだという言葉をつい口にしてしまった。

 デイゴは2つの種類がある。沖縄をテーマにしたTHE BOOMの『島唄』で「デイゴの花が咲き乱れ 風を呼び 嵐が来た」と歌われる方は、沖縄の花(県花)として知られるインド原産のマメ科の大高木だ。もう1つのアメリデイゴは、南米産でマメ科の落葉低木だという。  

 デイゴは沖縄が北限、アメリデイゴは関東が北限とされている。遊歩道の花はもちろん後者で、私がこの街に住み着いた時には植えられていたから30数年以上の歴史があるようだ。だが昨年、この地方を襲った台風にやられ、消え去る運命かと思った。それを覆すだけの生命力の強さがあったから、この夏も道行く人の目を楽しませてくれたのだ。  今年は新型コロナ感染症が世界の人々を苦しめている。  

 そんな中で病気やけがを克服しようとするスポーツ選手が目に付く。急性白血病に倒れた水泳の池江璃花子、大けがで地獄を見た大相撲の幕内照ノ富士十両千代の国、幕下宇良、ひじの手術から完全に立ち直った大リーグのダルビッシュ有……。この人たちの活躍を見ていると、自然界と同様、人間の強さを感じる。私といえば、3年前の9月に手術した右足の大腿四頭筋断裂は、手術痕がけがを思い出させるだけで後遺症はない。これも復元力か、などというと家族からばかにされそうなので、けがのことはもう話題にはしない。  

 こんなことを書いていたら、鎌倉の鶴岡八幡宮の大石段横にあった大銀杏を思い出した。推定樹齢は1000年、1955(昭和30)年に天然記念物に指定された銀杏は高さ約30メートル、幹周囲7メートルで八幡宮のシンボルだった。しかし、2010(平成22)年3月10日、雪まじりの強風のため根元から倒伏し、シンボルは失われたかに見えた。だがその根元から「ひこばえ」が芽吹き、今では選抜された木が数メートルまで成長したというから、これから長い時を掛けて大銀杏になる日がくるはずだ。

 

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