小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

2073 ビーナスベルトに酔う 自然のアートに包まれて

    

 毎朝、6時前に散歩に出ます。いつも最初に歩くのは調整池を回る遊歩道ですが、今朝歩いていて西の空を見上げますと、下の方が藍色でその上の部分がピンクに染まっていました。なかなか幻想的0で美しい空の色でした。日の出前のことです。これはビーナスベルトという現象だそうです。こうした豊かな自然に包まれて歩いていますと、これまで続いてきたコロナ禍の憂鬱を忘れさせてくれるのです。

 ビーナスベルトは、日の出前や日没後の空がピンク色の帯状に空が染まる現象で、青い空に薄いピンクの帯がかかるその様子は天女のドレスに巻いた美しいベルトのように見えるため、こんな名前が付いたそうです。ピンクの下側の藍色の部分は地球の影といいます。この現象は大気が澄んでいて、太陽の光が空に残っている、という環境のもと、早朝及び日没のころに太陽とは反対側の空に描かれるもので、自然のアートといえるでしょう。時間が過ぎるに従い、その色も少しずつ変化するようです。今朝、私の住む千葉市の日の出の時間は午前6時12分で、空が明るくなるにつれてこの現象は消えていきました。

 南極の昭和基地では、大気が澄んでいるためこの現象は結構多いようです。それに比べると、首都圏の一角にあるこの地域は大気が澄んでいるとはとても言えません。とはいえ、こうした現象を見ることができるのですから、わが街もそう捨てちゃものではないなと感じています。

 最近は温暖化や中国のPM2.5による大気汚染問題など、地球の自然環境悪化のニュースが少なくありません。スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリさんの嘆きを聞いていて、大人としての責任を感じています。そんな現状だからこそ、自然界のアート現象がたまらなくうれしいのです。

 百科事典を見ますと、日の出前のことを薄明(はくめい)ともいうそうです。気象用語では太陽の高さによって「天文薄明」「航海薄明」「通常薄明」(「市民あるいは常用薄明」とも)に分類されており、夕方は逆の順で日没になります。低緯度地方では1年を通じて薄明は短く、高緯度地方では長く、夏には白夜になるそうです。薄明の時間帯はビーナスベルトのような現象がみられるため「マジックアワー」と呼ばれているとか。そうだとすると、これから寒さが増しても朝の散歩は欠かせないと思っているのです。

「空は 満ちたる虚ろ。その色が なぜ こうも美しく 海に影を落とす?」と表現したのは詩人の吉野弘(「海」より)でした。今朝の空の色は確かに美しく、「満ちたる虚ろ」のように見えた気がします。

(この現象は、夕方東の空にも現れました)

    

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 写真 調整池から見た朝のビーナスベルト(4枚)。5枚目はその後の風景。そのあとの2枚は夕方のビーナスベルト。