2019-01-01から1年間の記事一覧
「実際の戦争は危険多くして損失夥し ベース、ボール程愉快にてみちたる戦争は他になかるべし」。正岡子規は元気だった学生時代のころ野球に熱中し、随筆「筆まかせ」に、こんなふうに記した。子規が愉快な戦争と書いた野球だが、日本語の野球用語には解説者…
散歩道で高齢の女性2人が話している。 「あら、ホタルブクロがそこに咲いているわよ」 「そうね。懐かしいわ。私の子どものころ、この花を『あめっぷりばな』、って言ってたのよ」 「そうなの。面白い名前ね。私の学校帰りの道の両脇にもあって、これが咲く…
「記者は足で稼ぐ」あるいは「足で書け」といわれます。現場に行き、当事者に話を聞き、自分の目で見たことを記事にするという、報道機関の基本です。高橋郁男さんが詩誌「コールサック」に『風信』という小詩集を連載していることは、以前このブログでも紹…
室生犀星の詩集『抒情小曲集』のなかの「小景異情」の「ふるさとは遠きにありて思ふもの そして悲しくうたふもの」(その2より)はよく知られている。同じ詩集の「合掌」にも実は心に染みるものがある。福島の里山を訪ねて、その思いを深くした。 みやこに…
「人は己を美しくして初めて、美に近づく権利が生まれる」 日本近代美術の先駆者、岡倉天心(本名、覚三、1863~1913)が、『茶の本』(岩波文庫)の中で、芸術表現について明かした一節の中にこんな言葉がある。天心は晩年、太平洋を臨む福島県境の…
ゴルフのように審判がいない競技もあるが、スポーツ界で審判は重要な役割を持っている。審判の判断に勝敗の行方が大きくかかわることが多く、「誤審」が話題になることも少なくない。人間の目は確かなようで間違いもあるため、最近はビデオ判定も珍しくない…
フランスのマクロン大統領が複数の地方紙のインタビューに応じた際、大統領府が記事を掲載する前に見せるよう求めていたことが明らかになった。記事の事前検閲といえる。反発した一部の地方紙はインタビューに加わらなかったという。「政治とは距離を置く」…
ドナルド・トランプ米大統領(72)が26日の大相撲夏場所千秋楽(東京・両国国技館)を観戦するという。土俵近くの升席に椅子を置いて座るというのだが、伝統を守るという名目で保守的な相撲協会も、米国のトップには異例の待遇といえる。トランプ氏の相…
自然を愛好する人にとって、忙しく楽しい季節である。山歩きが趣味の山形の友人からは珍しいタケノコ「ネマガリダケ(月山筍)」が送られてきて、彼の山歩き姿を思い浮かべながら、旬の味を堪能した。自然の活力を最も感じる季節、病と闘いながら旺盛な食欲…
「知床旅情」という歌を知っている人は多いだろう。作詞作曲した森繁久彌さんや加藤登紀子さんが歌い、私も好きな曲である。この歌の一番の詞の最後は「はるかクナシリに 白夜は明ける」となっている。「クナシリ」は北方領土(四島)のうちの国後島のことで…
言うまでもなく、人生は出会いと別れの繰り返しである。長い人生の旅を続けていると、邂逅の喜び、悲しみに鈍感になる。とはいえ、誰もが「別れ」は使いたくない言葉のはずだ。友人が書いた中編小説『俺だけを愛していると言ってくれ』(菅野ゆきえ著・文芸…
きょうは「こどもの日」で、端午の節句である。ラジオ体操で一緒になった人と柏餅のことを話していたら、「私の方では柏の葉ではなく、『ほてんど』の葉を使うので『ほてんど餅』というんですよ」と教えてくれた。中国地方出身というこの人は、帰り道この植…
30年と4カ月続いた平成という元号が4月30日で終わり、5月1日から令和になった。改元の経験はこれで2回になる。私が生まれた昭和は遠くなりつつある感が深い。昭和は戦争という負のイメージとともに、戦後の経済復興という力強い歩みの側面もあった…
10連休2日目の4月28日は、サンフランシスコ平和条約(対日講和条約)が発効した日だ。第2次世界大戦後、米国を中心とする連合国に占領されていた日本が各国との間でサンフランシスコで平和条約を調印したのは1951年9月8日で、この条約は翌52…
スリランカ(かつてのセイロン)最大の都市、コロンボで同時多発テロがあり、22日午後7時現在日本人を含む290人が死亡し、450人以上が負傷した。スリランカといえば、日本の戦後史に残る政治家がいた。鎌倉大仏殿高徳院境内に「人はただ愛によって…
パリの世界遺産、ノートルダム大聖堂(寺院)で火災が発生、尖塔が崩壊するなど、大きなダメージを受けた。フランス各界や海外からこれまでに1000億円を超える寄付の申し出があり、フランスのマクロン大統領は、5年で再建を目指すと語った。大聖堂がパリ…
私が住む首都圏は現在、新緑、若葉の季節である。街路樹のクスノキの緑が萌え、生け垣のベニカナメの赤い新芽がまぶしいこのごろだ。新緑、若葉の2つは俳句では「夏」の季語になる。しかし立夏はまだ先(5月6日)で、今は春爛漫というのが適切な時期にな…
2024年度から紙幣(1万円、5千円、千円)のデザインが変更になると政府が発表した。唯一、2千円は変わらない。普段、私はお札のデザインを気にしていないが、かつて1万円については「聖徳太子」という別称があったことを記憶している。表紙の聖徳太…
水上勉の社会派推理小説といわれる一連の作品を集中して再読した。作品名を順番に挙げると『霧と影』『巣の絵』『海の牙』『爪』『耳』『死の流域』『火の笛』『飢餓海峡』(いずれも朝日新聞社発行の「水上勉社会派傑作選」より)である。いずれも、戦後の…
かつては「桜前線が北上」という言葉が一般的だった。だが昨今、この言葉はあまり使われなくなった。異常気象といわれた世界の気象がいまや恒常化してしまい、東京と福岡の桜の開花日が同じになっている。自然界も異常を普通にしてしまう「トランプ現象」と…
新聞、テレビが大騒ぎをしていた新元号が「令和」と決まった。多くの人たちは西暦表記に慣れているので、元号が替わっても何の影響もないが、元号とは何なのだろう。「元号法」という法律もあるが、よく分からない。「令」も何となく違和感がある。 元号法は…
大相撲の貴景勝が大関に昇進することが決まった。平均身長184センチ、同体重164キロと大型化した大相撲の世界で、体重こそ170キロと平均を上回るものの、身長は175センチと決して大きくはない。スポーツは体の大小だけではないことを貴景勝の活…
「雉が増えすぎて困るから、野良猫がいた方がいいって言ってる人がいる」「それはおかしいよね」ラジオ体操仲間が、こんなことを話していた。その場所は私の散歩コースに当たり、なるほどこの数年、よく雉を見かける。それにしても「増えすぎる」とはどうい…
大リーグ・マリナーズのイチロー外野手(45)が東京ドームの開幕2戦目後、現役引退を表明した。13年目に入ったこのブログでイチローをこれまで6回取り上げている。それだけ、イチローは気になる存在だったといえる。人生には「特別な一瞬」があるが、…
ニュージーランド(NZ)南島最大の都市で「ガーデンシティ」と呼ばれるほど美しいクライストチャーチで、信じられない事件が起きた。2つのイスラム教モスク(礼拝所)でオーストラリア人の男が銃を乱射し、50人が死亡した。世界でも有数の安全な国といわれ…
私がこの人に初めて会ったのは、ホテルオークラと米国大使館側の裏玄関からエレベーターに乗った時だった。共同通信社はかつて虎ノ門にあった(現在は汐留)。7月。この人は白系統のサマースーツ姿で、まぶしいばかりだった。東京の人は気障だなと思った。…
あの日から8年が過ぎた。3・11東日本大震災である。8年前の記憶は人それぞれにしても、現代に生きる日本人にとって忘れがたい大災害だった。大災害に襲われた福島、宮城、岩手の3県だけでなく茨城、千葉の沿岸部の被災地で「これまでの経験から、避難しなく…
昨今、政治家の常套(じょうとう)語として使われるのは「真摯」だ。以前から国会で使われている常套語の代表ともいえる「検討」という言葉の影が薄くなったほどである。本来「まじめでひたむきなこと」という意味の真摯が、いい加減な言葉として使われてい…
シンガポールから東京にやってきた19歳の留学生が「初めて四季の美しさに目覚めた」ということを書いた新聞の投書を読んだ。「日本は四季がはっきりしていて、自然が美しい」といわれる。しかし、そうした環境に身を置くと、ついそれが普通と思ってしまい…
先日、友人たちとの会合で懐かしい地名を聞いた。「肘折」(ひじおり)という知る人ぞ知る地域だ。山形県最上郡大蔵村にあり、温泉とこけしで知られている。日本でも有数の豪雪地帯で多いときは4メートルを超すというが、今日現在の積雪量は約2・3メート…