小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1766 体は小さくても  貴景勝の可能性

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  大相撲の貴景勝大関に昇進することが決まった。平均身長184センチ、同体重164キロと大型化した大相撲の世界で、体重こそ170キロと平均を上回るものの、身長は175センチと決して大きくはない。スポーツは体の大小だけではないことを貴景勝の活躍が示している。

「その体で十両は無理といわれた。押し相撲で幕内は無理、三役は無理、大関は無理と言われた。そう言われても頑張れるし、美学じゃないがそれしか生き残る道はないと思っている」。テレビのインタビューを見ていたら貴景勝はこう言い、「次は上を目指す」と大関は通過点に過ぎないと口にした。大関伝達の使者に対しては「武士道精神を重んじ、感謝の気持ちと思いやりを忘れず、相撲道に精進してまいります」という口上を返した。彼の話を聞いていると、考え方がしっかりしている。22歳の若者を見直す思いでテレビを見た。  

 体が小さいといえば、大リーグのヒューストン・アストロズにホゼ・アルトゥーベ(ベネズエラ)という2塁手がいる。公表されている身長は5フィート6インチ(167・5cm)だ。実際はこれよりも小さい165cmという報道もある。いずれにしろ、現役メジャーリーグで最も身長が低い(体重は約75キロ)選手なのだ。しかし、この小さな体でこれまでに首位打者3回、盗塁王2回 MVP1回(アメリカンリーグ)を獲得し、「小さな巨人」と呼ばれている。  

 大柄が当然な相撲や野球の世界で、小さいといわれる自分の体を生かして活躍する2人を見ていて、力が湧く子どもたちも多いのではないかと思われる。人間は親から受け継いだDNAがある。いくら頑張っても体が大きくならない人も少なくない。貴景勝やアルトゥーベもその範疇に入る。でも、そうしたハンディを乗り越えたのが2人だった。  

 この2人から、どんな教訓を得るのか。それは人それぞれだが、私は人間の能力は無限であると思うのだ。それを引き出し、伸ばすには様々な要素が背景にあるようだ。それは育った環境だけでなく、本人の努力が必要だ。それによって、だれでもその世界で稀有な存在になる可能性があるのだ。ここまで書いてきて「山椒は小粒でもぴりりと辛い」「独活の大木」この相反する2つのことわざを思い出してしまった。