小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1763 世界はどこへ行くのか NZクライストチャーチの凶行

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 ニュージーランド(NZ)南島最大の都市で「ガーデンシティ」と呼ばれるほど美しいクライストチャーチで、信じられない事件が起きた。2つのイスラム教モスク(礼拝所)でオーストラリア人の男が銃を乱射し、50人が死亡した。世界でも有数の安全な国といわれるNZでさえ、こうしたテロが起きる時代。世界はおかしな方向へと突き進んでいると思わざるを得ない。  

 クライストチャーチといえば、東日本大震災(2011年3月11日)の直前の2月22日、この街はM6・1の地震に見舞われた。この地震によって街の象徴、大聖堂の尖塔が倒壊するなどして多くの人が崩壊した建物の下敷きになり、死者185人が出たことは記憶に新しい。死者のうち28人は日本からの留学生だった。  

 テレビニュースで、事件の発生場所近くの公園が映し出され、どこかで見たことがあると思った。そうだ、この街の中心部にあるハグレイ公園ではないか。面積は165ヘクタールで東京日比谷公園の10倍もある広大な公園だ。難を逃れ、この公園に避難した人もいたようだ。10数年前、この街を訪れ、公園を歩いたことを思い出した。緑が多く、水が澄んだ川には遊覧用の小舟が浮かび、この街に住む人たちをうらやましく思った。  

 事件は白人至上主義に陥った28歳の若者の犯行だった。時代が進んでも人種差別は永遠に消えない。米国の白人による黒人差別の歴史は生々しいし、ヒトラー率いるナチスドイツはおびただしいユダヤ人を虐殺した。日本人もまた、アジアの他の国の人たちを見下した時代があった。21世紀に入っても世界から戦火が消えず、貧富の差が大きい時代、非白人の移民・難民が続出している。ヨーロッパを旅し、それを見聞きした青年は、同じオセアニアのNZでむごたらしい事件を起こした。  

 足元を見つめてみる。現代の日本。格差社会といわれ、学校ではいじめが横行し、自ら命を絶つ子どもたちが何と多いことか。その根底にあるのは差別意識といっていい。人は生まれる時も死ぬ時も1人なのだが、生まれ育った環境によってその人生が左右されてしまうことが少なくない。難民といわれる人たちは、その典型だ。旅行好きにはNZは憧れの国といえる。しかし、ここもテロという悪魔の手によって汚染されてしまったのが悔しく、むなしい。そして、米国に代表される銃社会はおかしい。

 写真 沖縄で「幸せの青い鳥」と呼ばれるイソヒヨドリ