小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1764 日米で特別な存在に イチローの引退

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 大リーグ・マリナーズイチロー外野手(45)が東京ドームの開幕2戦目後、現役引退を表明した。13年目に入ったこのブログでイチローをこれまで6回取り上げている。それだけ、イチローは気になる存在だったといえる。人生には「特別な一瞬」があるが、21日夜の、東京ドームはイチローにとってまさにその時間だったといえる。  

 大リーグ、マリナーズとアスレチックスの試合は地上波の日本テレビが途中まで中継した。その後はBS(日本テレビ)放送のサブチャンネル(映像がかつてのアナログ放送のように粗い)で放送され、8回裏、一度ライトの守備に就いたイチローが交代すると、マリナーズの選手全員が守備位置を離れ、3塁側のベンチ前に戻ってイチローを出迎え、抱擁する場面が演出された。延長戦までもつれ込んだ試合が終わってからも観客は帰らず、しばらくしてイチローが再登場、ファンに何度も手を挙げて別れを告げた。

「人生の特別な一瞬というのは、本当は、ごくありふれた、なにげない、あるときの、ある一瞬の光景にすぎないだろう。(中略)ほとんど、なにがなく、あたりまえのように、そうと意識されないままに過ぎていったのに、ある一瞬の光景だけが、そこだけ切りぬかれたかのように、ずっと後になってから、人生の特別な一瞬として、ありありとした記憶となってもどってくる」(詩人、長田弘詩集『人生の特別な一瞬』晶文社・より)  

 日米4367安打(NPB1278、MLB3089)という不世出の記録を作り出したイチローにとって、思い出に残る場面は数多いだろう。それでも本人も語ったように、東京ドームの観客との最後の触れ合いは、イチローにとってやはり特別な一瞬だったに違いない。それは、長田が書くような、ありふれた光景ではない。普通の人間には考えられない文字通りの特別な一瞬だった。  

 3月は別れの季節でもある。3月21日、春分の日イチローの別れの姿は多くの人の目に焼き付いたことだろう。これまで野球界から多くの選手が卒業した。平成という時代の代表選手として野球の面白さを強烈にアピールしたイチローは、好き嫌いは別にして特別の存在だった。  

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