小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

俳句

1566 新しい青色の発見 この色のバラは普及したのか

つい先日、米オレゴン州立大学で「YInMnブルー」という鮮やかな新しい青色を発見した、というニュースが流れた。テロが相次ぐ時代、平和の象徴ともいわれる青い色に、新しい色が加わったことは喜ばしいことだと思う。 報道によると、新しい青色はオレゴ…

1565 5月の風に 春から夏へのバトンタッチ

今年の立夏は5日だった。ゴールデンウィークはほぼいい天気の日が続いた。それが終わると、天気はぐずついている。沖縄は間もなく梅雨に入るという。春から夏への移行の季節になった。旬の食べ物はタケノコである。故郷の竹林のことを思い出した。 この季節…

1559 こだまするホトトギスの初音 ウグイス・キジとの競演

朝、いつもより早く6時前に調整池を回る遊歩道を歩いていたら、ホトトギス(時鳥)とウグイス、キジが次々に鳴いているのが聞こえた。まさに野鳥のさえずりの協演だ。3種類の鳥が同時に鳴くなら三重奏(トリオ)という表現もできる。しかし、鳥たちは律義…

1550 巡ってきた6年目の春 共感呼ぶある愛の詩

朝、散歩をしていたら、調整池の森からウグイスの鳴き声が聞こえてきた。自然界は確実に春へと歩みを続けている。だが、3月は心が弾まない。それは私だけではないだろう。言うまでもなく、6年前の東日本大震災がその原因である。 「三月は鼻に微風を送る山…

1539 寒風が吹いても 強き言葉で

3が日休んでいた近所の公園のラジオ体操が再開になった。この季節の6時半はまだ完全に夜が明け切らず、薄暗い。周囲の街路灯が点いたままだ。ラジオに合わせて体を動かし始める。冷えが少しずつ消えて行く。手足を伸ばしながら世の中はどう変わっていくの…

1536 考えながら送る黄金時間 冬霧の朝に

朝の散歩道にある調整池から霧が出ていた。冬の霧である。俳句では、霧は秋の季語になる。だからこの季節には「塔一つ灯りて遠し冬の霧 蘭草慶子」の句のように、「冬の霧」を使う。次第に明るさが増す霧の道を歩きながら、この1年を振り返った。 その年の…

1529 初雪にしてこんなに積もるとは 冬の歌を聴く

まだ11月は1週間あるというのに、初雪が降り、数センチは積もった。わが家周辺は一面銀世界の様相を呈し、折角咲き始めた皇帝ダリアの花はしぼみ雪の重みで枝が折れそうだ。11月に雪が降り、しかも積もるなんて、驚くばかりである。 初雪にして一尺とな…

1528 自然公園の晩秋風景 狙いはカワセミとカメラ老人

かざす手のうら透き通るもみぢかな 大江 丸 立冬(11月6日)はとうに過ぎている。暦の上では冬なのだが、晩秋というのが実感である。木々の葉が赤や黄色に色づき、落ちる寸前の美しさを誇っているようだ。この季節、高野辰之作詞、岡野貞一作曲の「紅葉」…

1525 芭蕉は何を思うのか 唇寒し秋の風

物いへば唇寒し秋の風 人の悪口を言った後に、なんとなく自己嫌悪に襲われ、後味の悪い思いをすることのたとえに使われる、松尾芭蕉の句(芭蕉庵小文庫)である。ちなみに芭蕉の座右の銘は「人の短をいふ事なかれ 己が長をとく事なかれ」(中村俊定校注『芭…

1513 秋の日の送り方 子規を見習おう

きょうは「糸瓜忌」(へちまき)だった。俳人正岡子規がこの世を去ったのは114年前の1902年(明治35)9月19日のことである。絶筆の3句で糸瓜を詠んでいることから、いつしかこのように呼ばれるようになったのだという。このところ急に涼しくな…

1512 彼岸花とアカザのこと 気象変動と食べ物

ことしの日本列島は、台風による大雨で各地に大きな被害が出ている。北海道では農作物への影響も少なくない。温暖化による気象変動が激しい季節だが、秋の彼岸も近い。間もなく彼岸花(別名、曼珠沙華)も開花するだろう。たまたまこの花のことを調べていたら…

1511 雲流れゆく9月 やってくるへちま忌

朝も秋ゆうべも秋の暑さかな 「もう秋のはずなのに、朝も夕方も暑くてたまらない」という意味の句だ。8月が終わり、9月になったが、残暑は厳しい。だが、空を見上げると、秋の気配が伝わってくるように、薄い雲が流れている。間もなく子規のへちま忌(9月…

1508 この世は美しく甘美な人の命 お盆に思う

日が暮れて草のにほひの盆の寺 今井杏太郎 お盆である。昨日夕、家族で墓参りをした。寿陵(生前墓)であるわが家の墓にはお骨は入っていない。 私は東北出身で生家に墓はある。だが、将来のことを考えると、住まいの近くに墓があった方がいいだろうと数年前…

1499 古代ハス咲く白水阿弥陀堂  平泉ゆかりの国宝建築物

全国に阿弥陀堂は数多い。阿弥陀如来を本尊とする大小のお堂は身近なものになっている。美しい阿弥陀堂としてよく知られている福島県いわき市内郷の「白水(しらみず)阿弥陀堂」を見る機会があった。真言宗智山派の願成寺にあり、建築物としては福島県で唯…

1490 でんでん虫の季節 白居易の詩に思う

梅雨は憂鬱(ゆううつ)な季節だ。じめじめしていて気持ちもカラッとしない。うっとうしいニュースも少なくない。朝、散歩をしていると、道の真ん中にカタツムリが2匹いた。道を横切ろうとしているようだ。カタツムリも懸命に生きようとしているのだろう。 …

1487 嫌われる鳥でも ヒヨドリが玄関脇に営巣

野鳥の中で、ヒヨドリは全体が灰色と姿も美しさとは程遠く、鳴き声もピーヨ、ピーヨとやかましい。冬、庭のガーデンテーブルにミカンを置くとメジロがやってくるが、ヒヨドリがついてきてメジロを追い払って、食べ尽くしてしまう。そんなヒヨドリを好きだと…

1482 花が香り立つ季節 バラは五月晴れが似合う

いまごろは七十二候でいえば「末候」=竹笋生ず(たけのこしょうず)に当たる。「たけのこが、ひょっこり出てくるころ」という意味だそうだ。だが、温暖化からか、たけのこの旬は過ぎている。この季節、あちこちで咲いているバラの香りがかぐわしい。 最相葉…

1477 養老渓谷で感じる地球の驚異 地磁気逆転の地層「チバニアン」

千葉の養老渓谷に出掛けたことがある人は多いだろう。自然が美しく、温泉もある。そこにもう一つの隠れた名所があることを最近知った。地質学的に貴重な場所で、地質学の専門用語でいうと「地球磁場逆転期の地層」と呼ぶ。養老渓谷から流れ出ている養老川沿…

1474 「スティグマ」助長の責任は ハンセン病患者の隔離法廷

最高裁は、かつてハンセン病患者の刑事裁判などを隔離された療養施設などに設置した特別法廷で開いていたことに対し報告書を公表し謝罪した。「社会の偏見や差別の助長につながった。患者の人格と尊厳を傷つけたことを深く反省し、おわびする」という内容で…

1469 つり橋と日本列島 明日への希望を

熊本で14日夜、最大震度7(激震、家屋の30%以上が倒れ、山崩れや地割れができる)という強い地震が発生し、多くの被害が出ている。気象庁が定めた震度階級のうち最も高い( 強い)震度であり、九州では初めてという。日本が地震国であることを再認識さ…

1463 旅で感じるもの ミャンマーはアジアの楽園になれるのか

放浪の旅に明け暮れた自由律の俳人、種田山頭火は、「道は前にある、まっすぐに行かう(行こう)」が信念だった。そして、「句を磨くことは人を磨くことであり、人のかがやきは句のかがやきとなる。人を離れて道はなく、道を離れて人はない」(『山頭火句集…

1458 俳句は謎めいた水晶球・おかしみの文芸 ある句会にて

「俳句は硬直した読みしかできない標語ではなく、謎めいた水晶球のごときもの、すなわち詩でなければならない」。作家で俳人の倉坂鬼一郎は『元気が出る俳句』(幻冬舎新書)の中で、理想の俳句についてこんなふうに書いている。 正岡子規を愛する人たちが集…

1457 「或る晴れた日に」「でもぼくらは永久にもどれない」

何気なく本棚から『立原道造詩集』(ハルキ文庫)を取り出し、パラパラと頁をめくっていると、「或る晴れた日に」という詩があった。外は雨がぱらついている。寒い冬に逆戻りしたような天気だ。 きょうは3月11日。5年前の大災害を思い出しながら、詩を読…

1455 「ミモザの日」支える300人の公国 グリーグの贈る言葉

春を告げる花といわれるミモザの花が満開だ。きょう3月8日は「国際女性デー」である。イタリアでは「女性の日」あるいは「ミモザの日」と呼ばれている。男性から女性にミモザを贈る行事があり、この日ローマの街は黄色い花であふれるという。 この花を生産…

1445 うぐいすの初音を聞く朝 ホーホケキョは雄鳥

ラジオを聞きながら散歩をしていたら、うぐいすの便りをやっていた。きょうは九州の佐賀、四国の高知、さらに関東の神奈川で初音を聞いたというのである。私の住む千葉市はまだまだかなと思って聞いていると、イヤホンを付けた耳に懐かしい響きが飛び込んで…

1445 うぐいすの初音を聞く朝 ホーホケキョは雄鳥

ラジオを聞きながら散歩をしていたら、うぐいすの便りをやっていた。きょうは九州の佐賀、四国の高知、さらに関東の神奈川で初音を聞いたというのである。私の住む千葉市はまだまだかなと思って聞いていると、イヤホンを付けた耳に懐かしい響きが飛び込んで…

1441 最後の手紙は「僕ハモーダメニナツテシマツタ」 子規と漱石の友情

覚せい剤事件で警視庁に逮捕された元プロ野球選手、清原和博の高校野球時代の同級生、元巨人投手の桑田真澄が清原の逮捕について語った言葉が報道された。友を思う気持ちと悔恨の情が含まれた話だ。桑田の言葉は「友情とは何か」を考えさせるもので、明治時…

1439 2月の風景 枯木立ににぶい日光

二月はやはだかの木々に日をそそぐ(長谷川素逝) きょうから2月である。寒い地域では、霜柱と氷柱が珍しくない季節だ。だが、4日は立春だから、日の出も次第に早くなり、光の季節である春の足音が近づいている。長谷川素逝の句(早いものでもう2月だ。葉…

1431 冬・翡翠との出会い 『よだかの星』を読む

近所の公園でカワセミを見た。俳句歳時記を調べると、「雀より大きいカワセミ科の鳥で全体が青緑色、いわゆる翡翠の玉に似てきわめて美しい。翡翠は異称で、雄を翡、雌を翠という。嘴は黒くて鋭く長い。夏、渓流や池沼に沿った杭や岩・樹枝の上から魚を狙い…

1430 大空に輝く初日に寄せて 届いた「古里はいま」の詞

大空のせましと匂う初日かな(田川鳳朗) 6時半前に起き、近くの公園のラジオ体操会場に行くと参加者は10人余と普段の3分の1程度しかいない。東の空には金星が西の空には半月と木星が輝いている。体操が終わって、散歩コースの調整池に向かう。7時。次…