小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1539 寒風が吹いても 強き言葉で

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 3が日休んでいた近所の公園のラジオ体操が再開になった。この季節の6時半はまだ完全に夜が明け切らず、薄暗い。周囲の街路灯が点いたままだ。ラジオに合わせて体を動かし始める。冷えが少しずつ消えて行く。手足を伸ばしながら世の中はどう変わっていくのだろうかと、考えた。  

 昨日の朝、調整池周囲の遊歩道を散歩していると、遊歩道脇にあるトイレの入り口近くで毛布が盛り上がっているのが見えた。普段は何もないトイレなのにおかしい、ひょっとしたら死体かもしれないと思い、持っていたウォーキング用のポールで毛布の上からそうっと突いてみた。すると、ピクリと毛布の下の物が動いた。ホームレスが寝ていたのだ。  

 気温は3、4度。毛布を掛けていても相当寒いだろう。それにしても、こんな郊外にホームレスがいることが驚きだった。数年前の比較的あたたかい季節には見かけた。しかし、真冬は初めてだ。  2008年の暮れ、家を失った人たちのために、日比谷公園NPOによる炊き出しとテント村(年越し派遣村)の活動があった。ホームレスの問題はその後あまりメディアには出ていないが、格差社会が益々進行しているから、深刻度は増しているのではないか。

「寒風に少女はつよき言葉持つ 右城暮石(高知県出身の俳人」  倉坂鬼一郎は『元気が出る俳句』(幻冬舎新書)で「吹きすさぶ風の音にも負けず、少女は『つよき言葉』を発します。その懸命な声や表情から元気が伝わってくる句ですが、少女がどんな言葉を発したのか、伝えられることはありません。どこかが謎のままに残る俳句らしい構造の句です」と解説している。

 寒風の中で一枚の毛布にくるまり夜を過ごす人がいる半面、この句のように、寒風に負けずに躍動する若い生命があるのが人の世なのだと思う。 「弘法は何と書きしぞ筆始(ふではじめ) 正岡子規」  書きぞめならぬブログの書き始めである。ことしはどんな1年になるのだろう。皆様、ことしもよろしくお願いします。 遊歩

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 写真  1、東京ドイツ村のライトアップと富士山  2、調整池から見た初日の出  3、2日夜。月と金星が大接近  4、東京ドイツ村のライトアップ風景