小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1840 続「語るに落ちる」人権意識欠如 「桜を見る会」名簿廃棄の首相答弁

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 昨年6月、このブログで「語るに落ちる」という言葉(ことわざ)を使い、政治家の言動について書いたことがある。残念ながら、その後もこのことわざ通りの動きが政治の世界では続いている。連日、ニュースで取り上げられている「首相と桜を見る会」に関する安倍首相・菅官房長官の言い訳(質問に対する答弁というより、この言葉の方が適切だ)もこの範疇に入る。その極めつけは障害者雇用を弁解の材料にしたことで、弱者を利用した最悪の答弁といえる。  

 12月2日に開かれた参院本会議。野党議員(共産・の宮本徹議員)が資料要求した5月9日に、内閣府が名簿を廃棄したとの経緯(実態は慌ててシュレッダーに掛けたのではないか、後付けに悪知恵を働かせたのだろうと、誰もが思うはずだ)についての質問に対し、首相は「シュレッダーの空き状況や、担当である障害者雇用の短時間勤務職員の勤務時間等との調整を行った」と答弁し、「野党議員からの資料要求とは無関係」としていた。官房長官も4日の記者会見で首相答弁について「名簿廃棄は『予約から作業まで時間がかかり過ぎだ』と国会で疑問視されたので、作業を予定していた方が障害者雇用の職員で無理なく余裕を持って作業できる時間を確保する必要があったことを説明したのだ」と補足した。  

 これでは「障害者雇用の枠で採用した職員のせいで廃棄作業が遅れた」と、責任を障害者に押し付けているとしか思えない。「桜を見る会」招待者名簿の廃棄作業は共産党の宮本徹議員から資料要求を受けた1時間後に開始したと内閣府は説明し、首相は「この予定は4月22日に決まっていた」と答弁している。まさに「語るに落ちる」である。

 なぜ、招待者名簿を破棄したと言い張るのか。それは歴然としている。マルチ商法で多くの被害者を出したジャパンライフ山口隆祥元会長が2015年に招待され、それが首相の推薦枠だったという疑惑があるからだ。「招待者名簿は個人情報なので、回答は控える」とは、まるで他人事のように聞こえる。それでいて廃棄作業の当事者は障害者雇用の職員と言うのだから、ここでも「語るに落ちる」の人権意識である。  

 首相の答弁に対し、筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者である舩後靖彦参院議員(れいわ新選組)は「障害者雇用のために廃棄に時間がかかった理由のように語られるのは不適切であり、残念に思う」とのコメントを発表した。この中で「担当職員の属性は資料廃棄の根本問題とは関係ない。非常勤職員の弱い立場を利用したとも受け止められる内容と感じる」と、怒りの姿勢を示したが、当然だ。船後議員だけでなく「最悪の言い訳で涙が出るほど腹立たしい」など、多くの批判が出ていることに首相や官房長官はどう答えるのだろう。

 そういえば1年前、障害者雇用の義務がある国の行政機関の多くで雇用した障害者数を水増しするというでたらめが発覚して問題になった。安倍政権の「1億総活躍社会」は、どこかに行ってしまった感が深い。(この関連ニュースは毎日新聞の報道で知った。ほかの社の記者は感度が鈍いとしか言いようがない)

 写真 近所の公園のメタセコイア。  

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