小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

季節

1553 4月に思うこと 桜から感じる生命力

4月になっても、千葉市のわが家周辺では桜はまだ一部咲きである。東京は2日が満開だったことが信じられないくらいだ。ことしも既に4分の1が過ぎたが、このところ新聞、テレビのニュースを見て考えることが多かった。 国内では森友問題だ。8億円も値下げ…

1545 市民が支える小さな山荘 愛の鐘響く新庄・杢蔵山

作家の深田久弥(1903~1971)は、長い年月をかけて日本の名峰、百座を登頂した。その実体験を基に名作『日本百名山』を書いた。その後記(新潮文庫)で「日本人ほど山を崇び山に親しんだ国民は、世界に類がない。国を肇めた昔から山に縁があり、ど…

1541 列島に限りなく降る雪 天から送られた手紙

「汽車の八方に通じて居る國としては、日本のやうに雪の多く降る國も珍しい」 民俗学者、柳田國男は『雪國の春』の中で、こんなことを書いている。 現在日本列島は大雪が続いている。まさに柳田國男の言う通りである。日本を訪れ、広島に入ったオーストラリ…

1539 寒風が吹いても 強き言葉で

3が日休んでいた近所の公園のラジオ体操が再開になった。この季節の6時半はまだ完全に夜が明け切らず、薄暗い。周囲の街路灯が点いたままだ。ラジオに合わせて体を動かし始める。冷えが少しずつ消えて行く。手足を伸ばしながら世の中はどう変わっていくの…

1536 考えながら送る黄金時間 冬霧の朝に

朝の散歩道にある調整池から霧が出ていた。冬の霧である。俳句では、霧は秋の季語になる。だからこの季節には「塔一つ灯りて遠し冬の霧 蘭草慶子」の句のように、「冬の霧」を使う。次第に明るさが増す霧の道を歩きながら、この1年を振り返った。 その年の…

1529 初雪にしてこんなに積もるとは 冬の歌を聴く

まだ11月は1週間あるというのに、初雪が降り、数センチは積もった。わが家周辺は一面銀世界の様相を呈し、折角咲き始めた皇帝ダリアの花はしぼみ雪の重みで枝が折れそうだ。11月に雪が降り、しかも積もるなんて、驚くばかりである。 初雪にして一尺とな…

1528 自然公園の晩秋風景 狙いはカワセミとカメラ老人

かざす手のうら透き通るもみぢかな 大江 丸 立冬(11月6日)はとうに過ぎている。暦の上では冬なのだが、晩秋というのが実感である。木々の葉が赤や黄色に色づき、落ちる寸前の美しさを誇っているようだ。この季節、高野辰之作詞、岡野貞一作曲の「紅葉」…

1513 秋の日の送り方 子規を見習おう

きょうは「糸瓜忌」(へちまき)だった。俳人正岡子規がこの世を去ったのは114年前の1902年(明治35)9月19日のことである。絶筆の3句で糸瓜を詠んでいることから、いつしかこのように呼ばれるようになったのだという。このところ急に涼しくな…

1512 彼岸花とアカザのこと 気象変動と食べ物

ことしの日本列島は、台風による大雨で各地に大きな被害が出ている。北海道では農作物への影響も少なくない。温暖化による気象変動が激しい季節だが、秋の彼岸も近い。間もなく彼岸花(別名、曼珠沙華)も開花するだろう。たまたまこの花のことを調べていたら…

1508 この世は美しく甘美な人の命 お盆に思う

日が暮れて草のにほひの盆の寺 今井杏太郎 お盆である。昨日夕、家族で墓参りをした。寿陵(生前墓)であるわが家の墓にはお骨は入っていない。 私は東北出身で生家に墓はある。だが、将来のことを考えると、住まいの近くに墓があった方がいいだろうと数年前…

1496 難しい植物の名前 夕菅とヘメロカリス

「われらが花を見るのは、植物学者以外は、この花の真目的を耽美するのではなくて、多くは、ただその表面に現れている美を賞観して楽しんでいるにすぎない。花に言わすれば、誠に迷惑至極と歎つ(かこつ)であろう。花のために、一掬の涙があってもよいでは…

1490 でんでん虫の季節 白居易の詩に思う

梅雨は憂鬱(ゆううつ)な季節だ。じめじめしていて気持ちもカラッとしない。うっとうしいニュースも少なくない。朝、散歩をしていると、道の真ん中にカタツムリが2匹いた。道を横切ろうとしているようだ。カタツムリも懸命に生きようとしているのだろう。 …

1482 花が香り立つ季節 バラは五月晴れが似合う

いまごろは七十二候でいえば「末候」=竹笋生ず(たけのこしょうず)に当たる。「たけのこが、ひょっこり出てくるころ」という意味だそうだ。だが、温暖化からか、たけのこの旬は過ぎている。この季節、あちこちで咲いているバラの香りがかぐわしい。 最相葉…

1479 街路樹の下を歩きながら 文章は簡単ならざるべからず

大型連休が終わった。熊本の被災地では、依然避難所暮らしを余儀なくされている人が少なくない。一方で、被災地以外では多くの人がどこかに出掛け緑の季節を楽しんだのだろう。それがこの季節の習わしだ。以前は私も同じ行動をとっていた。だが、最近は違う…

1476 桐の花が咲く季節 漂うトチノキに似た芳香

散歩道の斜面にある桐の花(俳句の季語は夏)が満開だ。いつもの年よりも早く花が咲いている。ことしの八十八夜(立春から88日目)は5月1日、立夏は5月5日だ。紫の筒状の花を見て、季節は春から夏へとバトンタッチをしていることを実感する。 桐の木の…

1466 犬が眠る場所 あれから3回目の桜

わが家の飼い犬、ゴールデンレトリーバーのhanaが死んだのは2013年7月30日だった。その遺骨は庭の金木犀の根近くに埋めてある。家族で居間からよく見える場所として選んだのだが、いまになって思うと一冊の本の内容が深層心理に働いたのかもしれな…

1448 雪についての雑感 登校の子ら足遅く

暖冬が続いていると思ったが、うっすらと雪が積もった。この地域(千葉市の南部)では、2014年2月8日から9日の大雪以来、積雪はなかったから久しぶりのことである。家の前を、雪が大好きな子どもたちがはしゃいで登校している。 2年前の大雪の際のこ…

1445 うぐいすの初音を聞く朝 ホーホケキョは雄鳥

ラジオを聞きながら散歩をしていたら、うぐいすの便りをやっていた。きょうは九州の佐賀、四国の高知、さらに関東の神奈川で初音を聞いたというのである。私の住む千葉市はまだまだかなと思って聞いていると、イヤホンを付けた耳に懐かしい響きが飛び込んで…

1445 うぐいすの初音を聞く朝 ホーホケキョは雄鳥

ラジオを聞きながら散歩をしていたら、うぐいすの便りをやっていた。きょうは九州の佐賀、四国の高知、さらに関東の神奈川で初音を聞いたというのである。私の住む千葉市はまだまだかなと思って聞いていると、イヤホンを付けた耳に懐かしい響きが飛び込んで…

1443 朝霧が天空の城を演出 2月の風景

「天空の城」という言葉がある。由来は不明だが、小高い山にある城跡が発生した雲海に包まれて空に浮かんでいるかのように見える現象で、兵庫県の竹田城(朝来市)や岡山県の備中松山城(高梁市)などがよく知られている。 2月の中旬、寒さが和らいだ今朝、…

1439 2月の風景 枯木立ににぶい日光

二月はやはだかの木々に日をそそぐ(長谷川素逝) きょうから2月である。寒い地域では、霜柱と氷柱が珍しくない季節だ。だが、4日は立春だから、日の出も次第に早くなり、光の季節である春の足音が近づいている。長谷川素逝の句(早いものでもう2月だ。葉…

1435 スポーツとけが 大相撲・遠藤の休場を考える

現在の大相撲で人気一番は、東前頭11枚目の遠藤聖大(25)だろう。アマチュア横綱から角界に入り、一時は東前頭3枚目と三役に近づく勢いだった。だが、けがが付きまとい、今場所(初場所)は1勝しかできないまま、7日目から右足首のけがで休場した。…

1434 暖冬で咲いた「セイタカアワダチソウ」 自然の風景

暖冬のせいか、もうフキノトウが出たというニュースもあった。私の散歩コースでは活動期を終え、枯れたはずの「セイタカアワダチソウ」が勢いを取り戻し、再び花が咲き始めている。この北アメリカ原産の雑草は、本来は10月から11月に咲く秋の花だ。それ…

1434 暖冬で咲いた「セイタカアワダチソウ」 自然の風景

暖冬のせいか、もうフキノトウが出たというニュースもあった。私の散歩コースでは活動期を終え、枯れたはずの「セイタカアワダチソウ」が勢いを取り戻し、再び花が咲き始めている。この北アメリカ原産の雑草は、本来は10月から11月に咲く秋の花だ。それ…

1433 混沌とした時代への訴え 映画『人生の約束』

白銀の立山連峰の威容を見たのは、4年前の1月のことだった。日本海側の冬は晴れる日が少ない。だが、私が訪れた2012年1月下旬の数日は青い空が戻り、高岡の雨晴海岸の後方にそびえる剱岳が美しかった。その白銀の立山連峰を堪能させてくれるのが、映…

1431 冬・翡翠との出会い 『よだかの星』を読む

近所の公園でカワセミを見た。俳句歳時記を調べると、「雀より大きいカワセミ科の鳥で全体が青緑色、いわゆる翡翠の玉に似てきわめて美しい。翡翠は異称で、雄を翡、雌を翠という。嘴は黒くて鋭く長い。夏、渓流や池沼に沿った杭や岩・樹枝の上から魚を狙い…

1431 冬・翡翠との出会い 『よだかの星』を読む

近所の公園でカワセミを見た。俳句歳時記を調べると、「雀より大きいカワセミ科の鳥で全体が青緑色、いわゆる翡翠の玉に似てきわめて美しい。翡翠は異称で、雄を翡、雌を翠という。嘴は黒くて鋭く長い。夏、渓流や池沼に沿った杭や岩・樹枝の上から魚を狙い…

1430 大空に輝く初日に寄せて 届いた「古里はいま」の詞

「大空のせましと匂う初日かな」(田川鳳朗) 6時半前に起き、近くの公園のラジオ体操会場に行くと参加者は10人余と普段の3分の1程度しかいない。東の空には金星が西の空には半月と木星が輝いている。体操が終わって、散歩コースの調整池に向かう。7時…

1426 風景との対話 冬の空を見上げて

朝焼を見た。俳句歳時記(角川学芸出版)で調べてみると、夏の季語の天文の項にあって「日の出間際の東の空が赤く染まる現象で、夏に多い。俗に朝焼の日は天気が下り坂になるといわれる」という説明が付いている。それにしても、空気が乾いたこの季節(冬)…

1417 セザンヌの少年の絵 秋の日の特別な時間

家の前にある遊歩道には、けやきの木が街路樹として植えてある。そのけやきの葉がことしは特に色づいているように見える。いまが紅葉の盛りのようだ。最近訪れた那須高原でも美しい紅葉を見ることができた。それも数十年ぶりの友人との再会という嬉しい出来…