1448 雪についての雑感 登校の子ら足遅く
暖冬が続いていると思ったが、うっすらと雪が積もった。この地域(千葉市の南部)では、2014年2月8日から9日の大雪以来、積雪はなかったから久しぶりのことである。家の前を、雪が大好きな子どもたちがはしゃいで登校している。
2年前の大雪の際のこのブログでは「雪は天から送られた手紙である」という言葉を残した中谷宇吉郎(1900~62)のことを書いている。中谷は雪の研究とともに、学生時代に指導を受けた寺田寅彦(1878~1935)と同じく、随筆家としても名を残した。
『中谷宇吉郎随筆選集』(朝日新聞社)を取り出し、雪に関する随筆が多い第一巻の頁をめくってみた。その中の短文に「天災」というエッセーを見つけた。それは「天災は忘れたころにやって来る」という寺田寅彦の言葉を紹介し、当時発生した水害の被害が大きかった理由として「忘れたころに起きた」ことを挙げている。そして、大抵の人が忘れている大きい天災が他にないかという点が気になるとして地震に触れ、地震教育(備え)を徹底させるべきだと強調している。これは1938年(昭和13)に書かれたものだが、地震の怖さはいまも変わらない。
東日本大震災からあと2週間で5年である。そして、東京電力は昨日(24日)、福島第一原発事故当初、原子炉は極めて深刻な事態である「炉心溶融(メルトダウン)」だったにもかかわらず、前段階の「炉心損傷」と説明し続けたことが誤りだったと発表した。判断基準となるマニュアルがありながらそれに気付かなかったのだそうだ。
マニュアルに従えば事故3日後の3月14日には、メルトダウンと判断できたというのだから、管理体制がずさんそのもので、避難者をはじめ原発事故の被害者は救われない。 原発については、運転開始から40年を超えた関西電力高浜原発1、2号機が新規制基準に適合すると原子力規制委員会が認め、例外のはずの60年までの運転延長の道筋がついた、というニュースも流れた。
寺田寅彦は『天災と国防』(講談社学術文庫)の中で「文明が進めば進むほど天然の暴威による災害がその劇烈の度を増す」「文明が進むに従って人間は次第に自然を征服しようとする野心を生じた」と書いている。原発の運転期間延長は、自然を征服しようとする野心に思えてならない。
23日午後、北海道の新千歳空港で福岡空港行きの日航機のエンジンから煙が出て、乗員乗客165人が緊急脱出する事故があった。原因は大雪のためにエンジン内側の空気取り入れ口に氷が付着したため、不完全燃焼を起こした可能性が強いという。こうした事故の恐れを航空機メーカーは予測していたのだろうか。この事故は大げさにいうと、人類に対する自然界からの警告と受け止めることもできる。
春雪や登校の子ら足遅く