小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1431 冬・翡翠との出会い 『よだかの星』を読む

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 近所の公園でカワセミを見た。俳句歳時記を調べると、「雀より大きいカワセミ科の鳥で全体が青緑色、いわゆる翡翠の玉に似てきわめて美しい。翡翠は異称で、雄を翡、雌を翠という。嘴は黒くて鋭く長い。夏、渓流や池沼に沿った杭や岩・樹枝の上から魚を狙い、見つけると急降下して捕える。飛翔は直線的で、飛翔中にツィーという声で鳴く」(角川学芸出版)と出ており、夏の季語に入っている。

 だが、私が住む地域(千葉市)では、なぜか冬に見かけることが多い。 近所の公園には小さな池があり、ここから遊歩道沿いに小川が流れている。カワセミはこの池にかかる雑木の枝に止まり、時折池に降下して水の中に嘴を入れ、餌を取っていた。たまたま私のほかに人影はなく、一人で美しい野鳥観察の時間を持つことができた。

 宮沢賢治の童話「よだかの星」を読み返した。外見によるいじめや差別、自己犠牲などがテーマといわれ、醜い姿のヨタカの話である。

「顔は、ところどころ、味噌(みそ)をつけたようにまだらで、くちばしは、ひらたくて、耳までさけています。足は、まるでよぼよぼで、一間(いっけん)とも歩けません。ほかの鳥は、もう、よだかの顔を見ただけでも、いやになってしまうという工合(ぐあい)でした」

 ヨタカはカワセミやハチスズメ(ハチドリ)と近い関係にある。物語は、自分と似た名前を持つヨタカを嫌悪したタカから市蔵という名前に変えろと強要され、故郷を捨て空高く飛翔し、青い光になって燃え続ける―という悲しい結末が控えている。

 図鑑でヨタカを見ると、夜行性の野鳥で外見が醜いだけで生態はカワセミ、ハチドリと比べて、そんなに嫌われる鳥ではないはずだ。カラスと同様、外見によって損をしている鳥なのだ。 一方、カワセミはその姿が美しいが故に人気がある。

 カワセミ撮影のためにカメラを持った人が集まる公園もあると聞いた。市や町の鳥に指定している自治体も少なくない。カワセミは縄張り意識が強いため、繁殖期を除いては一羽で行動するという。私が見たのもつがいではなく下嘴が赤い雌一羽だけで、単独行動が当然のように自由に動き回っていた。

 枯れ枝に止まる翡翠何を待つ

写真 1-4 散歩で見かけた翡翠の雌 5 家族で散歩する鴨たち 6 満開のヤツデの花 7 暖冬で季節外れに咲いたツツジの花

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