小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

季節

1417 セザンヌの少年の絵 秋の日の特別な時間

家の前にある遊歩道には、けやきの木が街路樹として植えてある。そのけやきの葉がことしは特に色づいているように見える。いまが紅葉の盛りのようだ。最近訪れた那須高原でも美しい紅葉を見ることができた。それも数十年ぶりの友人との再会という嬉しい出来…

1416 夜長の季節の本の読み方 あなたは寝過ぎ派、寝不足派?

「書読まぬ男は夜長哉」。正岡子規の句である。秋の夜長、本を読まない男は寝過ぎ、読む男は寝不足になるというのである。テレビやスマホなど、いまの時代は本を読まなくとも夜更かしになる材料は事欠かず、寝不足派が圧倒的に多いのではないか。 ヘルマン・…

1405 見えそうな金木犀の香り 開花した秋の花

見えさうな金木犀の香なりけり(津川絵理子) 金木犀が開花した。例年よりかなり早い。辞典には「中国原産で、仲秋のころ葉腋に香りの高い小花を多数つける。橙色の花を開くのが金木犀、白いものは銀木犀という」と出ている。 わが家には金木犀が2本、銀木…

1396 子規の9月 トチノミ落ちて秋を知る

俳人の正岡子規が亡くなったのは1902年(明治35)9月19日で、白露の末候「玄鳥去る」(つばめさる)のころだ。当時は秋のたけなわだったかもしれないが、現代は残暑厳しいころである。ロンドンに留学中だった親友、夏目漱石に子規の訃報が届いたのはそれか…

1396 子規の9月 トチノミ落ちて秋を知る

俳人の正岡子規が亡くなったのは1902年(明治35)9月19日で、白露の末候「玄鳥去る」(つばめさる)のころだ。当時は秋のたけなわだったかもしれないが、現代は残暑厳しいころである。ロンドンに留学中だった親友、夏目漱石に子規の訃報が届いたのはそれか…

1394 ああ田沢湖よ 秋田を歩く

過日、晩夏の秋田を歩いた。角館も田沢湖も人影はまばらで、昨今話題の中国人観光客の姿も見かけなかった。秋田新幹線の田沢湖駅はふんだんに秋田杉を使った美しい建物だった。私がこれまで見た中では北海道の旭川駅とともに気に入った建物だ。 だが、駅前は…

1392 高校野球の「魔力」 私的決勝戦の印象

甲子園の夏の高校野球全国大会は、神奈川県代表の東海大相模が10-6で宮城県代表の仙台育英を倒して、45年ぶり2度目の優勝を飾った。仙台育英が一時6-6まで追い上げたが、9回表に東海大相模のエース、小笠原がホームランを打ち、さらにダメ押し点を上…

1384 7月の終わりに 炎暑の中で

私の部屋に1枚の絵ハガキがある。 ペルーの世界遺産、マチュピチュの遺跡を背景に動物のリャマが草を食んでいる風景である。よく見ると遺跡周辺には豆粒のように観光客の姿が写っているが、手前のリャマの周辺に人はいない。何とものんびりしていて、気に入…

1383 夏の風景 すみからすみまで光に埋る花たち

「夏のあかるさ すみからすみまで光に埋ってゐる そのなかに ひとつづつ彫られてゆく 小さい生きものの姿 うすい羽 誰が彫ってゐるかわからないが ひと鑿(のみ)づつそれがゆく」 室生犀星の「夏昼」(「星より来れる者」より)という詩である。散歩コース…

1383 夏の風景 すみからすみまで光に埋る花たち

「夏のあかるさ すみからすみまで光に埋ってゐる そのなかに ひとつづつ彫られてゆく 小さい生きものの姿 うすい羽 誰が彫ってゐるかわからないが ひと鑿(のみ)づつそれがゆく」 室生犀星の「夏昼」(「星より来れる者」より)という詩である。散歩コース…

1380 更地に咲くヒメヒオウギズイセン 厄介な帰化植物だが……

近所で独り暮らしの高齢者男性が亡くなった。親類の人たちは残された一軒家を解体処分し、跡地はブルドーザーで整地され、更地になった。不動産業者が売りに出したその土地に、朱赤色の花が群生し咲いている。 図鑑で調べてみたら、ヒメヒオウギズイセン(姫…

1380 更地に咲くヒメヒオウギズイセン 厄介な帰化植物だが……

近所で独り暮らしの高齢者男性が亡くなった。親類の人たちは残された一軒家を解体処分し、跡地はブルドーザーで整地され、更地になった。不動産業者が売りに出したその土地に、朱赤色の花が群生し咲いている。 図鑑で調べてみたら、ヒメヒオウギズイセン(姫…

1372 イザベラ・バードが見たアジサイ 『日本奥地紀行』より

梅雨の時期の花といえば、アジサイだ。この季節を好きという人はそう多くないだろう。だが、この花を見ていると少し気分は落ち着く。植物には南限や北限があるが、アジサイは日本のどこでもみることができる花である。イギリスの旅行作家、イザベラ・バード…

1369 どくだみの季節 意外においしい?梅雨の花

関東地方まで梅雨入りした。この季節の花といえば紫陽花が一番幅をきかせているようだが、木陰を歩いていると、どくだみの白い花(白く密集して見えるのは総苞で、苞の中心に黄色い花を穂状に付ける=角川・俳句歳時記)が一面に咲いているのを見かける。 薬…

1369 どくだみの季節 意外においしい?梅雨の花

関東地方まで梅雨入りした。この季節の花といえば紫陽花が一番幅をきかせているようだが、木陰を歩いていると、どくだみの白い花(白く密集して見えるのは総苞で、苞の中心に黄色い花を穂状に付ける=角川・俳句歳時記)が一面に咲いているのを見かける。薬…

1368 釣鐘草と精霊の踊り 私的音楽の聴き方

道端に蛍袋(ホタルブクロ)の花が咲いている。歳時記には釣鐘草、提灯花、風鈴草ともと出ており、同じキキョウ科なのだ。ホタルブクロの花は下を向き、釣鐘草の花は上を向いて咲くらしい。 釣鐘草といえば、小学校で習った『スコットランドの釣鐘草(つりが…

1364 東の空に「環天頂アーク」 格別な自然現象

自然現象は不可思議だ。そんなことを考えたのは今朝、東の空に虹のようなものを見かけたからだ。ラジオ体操の途中、東の空を見上げている人が数人いた。携帯のカメラを空に向けている人もいる。体操が終わったあと、私も空を見上げると、虹が出ていることに…

1361 5月は好きですか ノバラの芳香に包まれて

5月という月を嫌いな人はいるのだろうか。よほどの事情がある人を除けばかなり高い確率でこの季節は日本人にとって人気度は高いだろうと思う。「5月という月は、草花にせよ、鳥とか昆虫にせよ、生命力が躍動して大きく羽ばたく時期です」(新潮文庫『瑞穂…

1359 33年続いた笠間の陶炎祭 息づく自由な発想

日本の三大焼物は「萩焼」(萩市)、「楽焼」(京都府)、「 唐津焼」(佐賀県)といわれる。このほか焼物の町として栃木の益子や愛知の瀬戸、滋賀の信楽はよく知られている。これに加え、茨城県笠間も陶芸家が住む焼物の町としてクローズアップされている。…

1358 下がるほど美事(見事)な藤の花 山に広がる紫の房

山藤の花が見事に咲いている。藤の花は蝶形をしていて房になって咲いているのが特徴で、ことしは例年よりもその美しさが際立っているようだ。花が下を向いているために「下がり藤」とも呼ばれ、家運が下がるという理由で敷地内に植えるのは不吉だという説も…

1358 下がるほど美事(見事)な藤の花 山に広がる紫の房

山藤の花が見事に咲いている。藤の花は蝶形をしていて房になって咲いているのが特徴で、ことしは例年よりもその美しさが際立っているようだ。花が下を向いているために「下がり藤」とも呼ばれ、家運が下がるという理由で敷地内に植えるのは不吉だという説も…

1356 福美ちゃんへ 《悲しみを経て》

街路樹の中で特に存在感があるのはけやきである。いまの季節はけやきの緑の葉が目に優しく、その緑に見守られるようにして子どもたちが陽光の中を歩いている。その姿を見て、ふと「福美ちゃん」のことを思った。私は福美ちゃんとは面識がない。だが、福美ち…

1355 鳴かないカメの話 生態系の変化を考える

「亀鳴く」という俳句の春の季語がある。これについて『俳句歳時記』(角川学芸出版)には「春になると亀の雄が雌を慕って鳴くというが、実際には亀が鳴くことはなく、情緒的な季語。藤原為家の題詠歌『川越のみちのながぢの夕闇に何ぞと聞けば亀ぞなくなる…

1354 百周年のハナミズキ 耐え続け日本の春の花に

ハナミズミがアメリカから日本に渡来してことしでちょうど100年になる。1912年(大正元年)、当時の東京市長だった尾崎行雄(のちの咢堂、憲政の神様、1858~1954)が日米友好のために約3000本のソメイヨシノを贈り、ワシントンのポトマ…

1354 百周年のハナミズキ 耐え続け日本の春の花に

ハナミズミがアメリカから日本に渡来してことしでちょうど100年になる。1912年(大正元年)、当時の東京市長だった尾崎行雄(のちの咢堂、憲政の神様、1858~1954)が日米友好のために約3000本のソメイヨシノを贈り、ワシントンのポトマ…

1352 春に聴くクラシック チャイコフスキーの弦楽セレナード

そう多くないクラシックCDの中で、なぜかチャイコフスキーの「弦楽のためのセレナード ハ長調、作品48」を3枚(古い順から①ネヴィル・マリナー指揮、アカデミー室内管弦楽団②ジャン・フランソワ・パイヤール指揮、パイヤール室内管弦楽団③小澤征爾指揮、サ…

1350 「散った桜散る桜散らぬ桜哉」 上野公園を歩く

花びらが散りはじめ、「葉桜」になりつつある上野公園を歩いた。報道の通り、雨にもかかわらず公園には中国人をはじめとする外国人の姿が目についた。いつから外国人がこの公園の桜に興味を持つようになったのかは知らない。 しかし、花を愛でる気持ちは人種…

1350 「散った桜散る桜散らぬ桜哉」 上野公園を歩く

花びらが散りはじめ、「葉桜」になりつつある上野公園を歩いた。報道の通り、雨にもかかわらず公園には中国人をはじめとする外国人の姿が目についた。いつから外国人がこの公園の桜に興味を持つようになったのかは知らない。しかし、花を愛でる気持ちは人種…

1349 桜絶景 花散る道を歩く

桜は日本を代表する花である。現在、列島は桜前線が北上中だ。今月末には青森まで達するだろう。なぜ、日本人は桜を愛するのだろう。一時期、桜は暗いイメージでとらえられた。 しかし、平安時代から現代までを通じて、基本的に人は桜の下に集まり、楽しく酒…

1349 桜絶景 花散る道を歩く

桜は日本を代表する花である。現在、列島は桜前線が北上中だ。今月末には青森まで達するだろう。なぜ、日本人は桜を愛するのだろう。一時期、桜は暗いイメージでとらえられた。 しかし、平安時代から現代までを通じて、基本的に人は桜の下に集まり、楽しく酒…